第四十八話 ニンカツ④
「ディ、久しいな・・・お、新顔だな。名は?」
「あぁ、ティ。お前も相変わらずのオーラを放っていて素晴らしい。こっちがセスでそっちの猫がニャンだ。」
オーラマスターのキャンディが気を褒めるからには、相当なものなのだろう。
ソードマスターとオーラマスター、物と気の頂点に君臨する魔人か・・・アイちゃん、波のマスターっているんかな?
《波のマスターはいるよ。グランドマスタ―って言って、グラマスとも言われている存在。でも、今は力を封印しているようね・・・ナゼかは知らんけど。》
そっか、やっぱ存在するんだ。まだまだ、わたしの知らない実力者がいるんだな。三人のマスターがバトルしたら、一体どうなるんだろ?魔界はおろか、スティール星なんか消滅しかねないんじゃないかな・・・
昔であれば、絶対神ゼウスが厄災を罰してくれていたが、今はそれが皆無・・・
ゼウスの力が、それだけ劣化していると推測される。子のペルセポネーが本来なら、後を引き継いで平和と治安維持に努めるべきなのだろうが、何らかの理由でそれはない。
だから、我らが厄災を一つずつ薙ぎ払っていっている訳だが、ティナというピースが一つ欠けてしまい、皆の意気は消沈している。早いところ、ティナの消息を確認し、復活させねばな・・・
「レイ、お前たちがここに来るのは解っていた。ティナが消えたのであろう?そして、リン、キール、ヴァン、ゲンの四人も同様に消えたと・・・」
「ナゼ、それを知っているんだ?魔耳を使ったのか?・・・まぁ、どうやったかはこの際どうでも良い。今、ファイにティナの気を探ってもらっているところだ。」
「師匠、ティナが・・・」
イリヤンは涙して悲しんでいる。ホントに純なヤツだ。ファイに任せておけば、何とかなるかもしれない。アイツはデタラメなヤツだが、意外と頼りになるのだ。
「まぁ、ティナたちのことはファイ様にお願いするとして、あたしたちは出来ることをしようじゃないか。レイ、お前は魔剣だが同レベルの手刀を出せるよな。あれは、もう使うな。」
「え?ナゼだ?折角、キャンディの力である心の力が使えるようになったのに・・・」
「だからだよ。お前のブレスには、あたいが託した石とディの石しかないんだろ?心の力を最大限に活用するには、お前じゃダメなんだ。」
「そうなのか?わたしの身体じゃ、十分に心の力を活かしきれないっていうのか。だったら、どうすれば・・・」
「お前の身体は波の力に最も適するように作ってある。勿論、ある程度のレベルであれば気や物の力も使えるであろう・・・だが、この先の邪神レベルとの戦いに於いて、正直ある程度では厳しいのだ。」
「ティ、そうは言ってもアタイの真の力に耐え得るのはこの魔槍のみ。これは、ゼータに錬金術で作ってもらった特別製。彼女は滅多なことじゃ、その腕を振るってくれない。これが魔剣メドゥーサだったから、特別にしてくれたってだけなんだよ。」
「だったら、レイ。お前も錬金術で己を作り変えてもらえば良い。気や物の圧倒的な力を使いこなせる魔剣にな・・・」
「そんなカンタンに言うケド、ゼータってどこにいるのかも解らないらしいし、今聞いたところ滅多なことでは錬金術を使ってくれないんじゃないか?」
「そうだな・・・でも、ファイ様なら覚醒魔人の居場所位解るんじゃないか?」
「イヤ、ファイは今クローズの力でティナの気を追ってくれている真っただ中だ・・・そんな状況では聞くに聴けないよ。」
一同、無言になった・・・
様々な知恵が出たものの、これという明確な道筋が見えてこない・・・
つまりは、どん詰まり状態。
「なんだなんだ、しんみりしちゃって・・・こういう時の為の魔眼だろ?ゼータの名前が解っているんだから、名前でサーチすれば良いじゃん。あたいが昔、メドゥーサを錬金術でやってもらった時もそうしたよ。でも、ゼータは幾重もの特殊結界を張っているからね・・・ナカナカ探し出せないよ。だから、サーチするのに時間は少々かかるんだ・・・まぁ、やってみるさ。」
キャンディのナイスなアイデアで、明るい兆しが見えてきた。わたし自身がパワーアップすることで邪神に対応出来るのならば、是非お願いしたいものだ。
《まずいな・・・これ以上はこいつらを放置出来ないぞ。》
突然、落雷の如く轟音と共に何かが落ちてきた・・・
わたしはその直前に、何者かによって激しく突き飛ばされるのであった。
周囲は粉塵が舞い散り、視界がままならない・・・
一時経過し、ようやっと視界が開けたと思ったら、黒焦げの塊が一つ転がっていた。それは、ニャン・・・
そして、この攻撃は神撃で間違いない。
「ニャン!ニャン!しっかりしてほしいの!」
号泣状態のセス。
オロオロするイリヤン。
周囲を警戒するキャンティとキャンディ・・・
そんな混沌とするなか、アイちゃんから真実を聞かされる。
《レイ、君を突き飛ばしたのはニャンだよ。ニャンは、君に当たるハズの神撃から身を挺して君を守ってくれたんだ。》
何ということだ・・・
今回狙われたのは、わたしだというのか・・・
そして、今まで触れる事すら許してくれなかったニャンがわたしを守ってくれたなんて・・・
許さん、許さんぞ!
わたしは怒りに我を忘れそうになったが、ニャンの回復が最優先案件であることで踏みとどまる。
《アイちゃん、生命返還で何とかなりそうか?》
《レイ、それじゃダメだよ。生命返還が完了するまでの時間を逆算してみたケド、ニャンの全てが消失するまでに間に合わない。》
《じゃあ、どうすりゃいいんだ・・・》
わたしは今までの知識を全て思い起こす・・・
あ!そう言えば昔、ティナの先祖のティアラがデルタを復活させたことがあったよな・・・
あの時は、デルタが神撃を喰らって黒焦げになったところ、ティアラの血を飲んで復活した。
ティアラの血には、生命返還と似たような効果があったのだろう。こんな時にティナがいてくれたら・・・
ティアラの子孫であるティナの血を与えれば、きっとニャンは復活するだろう。
しかし、今ティナはここにはいない・・・
何てこった・・・
《レイ、大丈夫だよ。今まで黙っていたケドさ、セスの血をニャンに与えれば問題解決する。時間が無いから、理由は後で説明するから急いでね。》
アイちゃんとのやり取りは、ここで終わった。
理由は知りたいけど、まずはニャンの復活が先だ。
「セス、チョッと痛いかもしれないケド、我慢してよね。わたしを信じて、身を委ねてほしい。そうすれば、ニャンはきっと復活するよ。」
涙目のセスはコクリと頷き、瞳を閉じる・・・
わたしはセスの左腕をそっと掴み、手刀で彼女の腕に小さな傷を負わせる。
彼女から赤い鮮血がにじんできたが、わたしは黙ってそれを口に含む・・・
「チョッと何するんだ?」
キャンディは口を挟んで止めようとしてきたが、キャンティがそれを右腕で静止させる。
「まぁ、黙ってあいつの好きにさせてやれ。」
キャンティはそう告げると、キャンディは黙って頷いた。
キャンティはわたしの生みの親であるからこそ、全幅の信頼をおいてくれている。ありがとう、キャンティ・・・




