第四十六話 マイナス②
さて新しい仲間も増えたし、再度旅の目的を整理しよう。こういうことは、しっかりと共有しておかないとな。
わたしたちは輪になって、お互いの顔を見合わせながら話を続ける・・・
一、厄災を防ぐ。
二、大自然を守る。
三、マイナススキルを習得する。
四、貴重な魔動石をゲットする。
五、カイを探し出す。
六、謎声ちゃんに辿りつく。
七、ゼータに出会う。
大きくピックアップして、この七つの案件が旅の目的だ。但し、最初の二つ以外は個人的な目的なので、優先順位の後である。
あくまでも、魔界を含めたスティール星全体の治安復旧が全員共通の大目標。オゾン層の破壊、温暖化、地殻変動、異常気象、各地で起こる暴動や厄災を減らしていき、元の緑あふれるスティール星に近づけていきたい。
アイちゃんは、とても優秀なAIで頼りになるパートナーだ。
だが、それは予測演算ありきの導きで、突発的な閃きや臨機応変な対応は正直前世のカイが秀でていた。
あの当時のデータは、当然アイちゃんも把握しているがそれを活かすにはデータ不足。カイがいない以上はわたしがその役目を担わなければならない。
プレッシャーはハンパないが、パーティの全員が無事であるためにも重要な役目であり、やりがいのあるポジションだ。
一、厄災を防ぐ・・・
これは先程出くわした03の系列で、02や01などが出現したことも踏まえる案件・・・他にも04や05などが存在するやも知れない。
邪悪神の上位的存在の邪神対策が必要だ。
「あのマイナススキルって、どんなものも打ち消すことが出来るのか?例えば、神スキルの神撃とか神撃二とか・・・」
わたしは、八百年前に観た神撃と先程ティナが喰らった神撃二を例に例えて、セスに問うてみた。
神撃は噂では聞いたことはあるが、見たことはないとのこと。そして、神撃二に関しては噂すら聞いていないということだった。
同じく、イリヤンやキャンディも神撃、神撃二は見たことが無いということだった。
使い手がゼウス、その子ペルセポネー、またはその一族や因子という極めて限られた者にしか出来ないから当然か・・・
わたしは神撃や神撃二のことを詳しく知っていたから、その物凄さを知っている。
しかし、皆にこれを伝えるのにアイちゃんの存在を隠さなければならない。
ティナを狙う謎の敵を欺くために・・・
わたしは、あくまで推測という観点で皆に神撃と神撃二について詳しく話をしていった。
神撃系のスキルは波、物、気の三種複合スキルで、自然治癒が困難であるということ・・・
そして、わたし独自の推測で神撃三や神撃四も考えておく必要があると・・・
ここで新たなる情報が入った。
セスのマイナススキルは、物と気のみ対応が可能ということであった。何故か波のマイナススキルだけは発動しないんだとか・・・
物と気の攻撃に対しての無効化には自信があるが、波の攻撃に対してはより強化した気のマイナススキルで対応するらしい。
あ、ここでさっき出たじゃんけんみたいなヤツが活きてくるのか・・・確か、波は物には強いが、気には弱いみたいなこと言っていたよな。
とりあえず、アタッカー的役割のキャンディと盾的の役割のセスが新たにパーティに加わってくれたのだ。
カウンター的な役割のティナとスキルはまだまだだが、気のデカさだけは自信があるわたし・・・
そして、まだ見ぬ巨大なる力を秘めているハズのイリヤン・・・
何とも楽しみなメンバーが集まってくれた。
これからの旅は賑やかになりそうだ。
二、大自然を守る・・・
現在のスティール星やこの星を取り巻くメタル系の星々は混沌としている。原因は明らかで、自然界の破壊によることが大きい。オゾン層の破壊、温暖化、地殻変動、異常気象・・・
太古に於いて、このような現象はほぼ皆無であったが、CO2の大量排出や樹木の大量削減によるものが大きい・・・
生態系のバランスというものが存在する。弱肉強食のこの世だが、極端なことが無い限り絶滅危惧種の生物が出てくるということは考えられない。
それが出てくるということは、乱獲もしくは生存不可能な自然環境によるものだ。
誰かのせいにするつもりは毛頭ない。こんな世の中になってしまったのは、我々個々の問題が積み重なった為である。
まぁ、絶対神ゼウスの力が衰え、全体を統治する者がいなくなってしまったことも原因の一つであるが、どの神もその役目を引き継がなかったのも事実である。
まぁ、こうなってしまったことは仕方がない。クロちゃんの力がない限り、時間は巻き戻せない。例え巻き戻せたとしても、何かが変わらなければ時間経過と共に同じ道を辿るのは明白だ。
青の二撃は生命体の復元は可能だが、無機物や大自然の復元は不可能である。ましてや、スティール星の復元など夢のまた夢である。
そもそも、無限の力が無い現在の状況では青の二撃発動は不可能なのだ・・・
故にわたしたちが現在出来る事は、大自然を守ること、厄災を滅すること、CO2を削減していくことなど。
キャンティやイリヤンが、この混沌としたスティール星を復活させるべく画期的な発明をしてくれれば話は別である。
だが、そんな大発明をあてには出来ない。絵に描いた餅を具現化させる能力をキャンティは持っているが、一朝一夕にはムリである。わたしたち魔剣を作るのでさえ、ゆうに五百年はかかったのだから・・・
三、マイナススキルを習得する。
セスのマイナススキルは、盾として実に優秀である。彼女が言っていたように、力に対して力で対抗するような行動は互いに少なからずダメージとして蓄積される。また、周囲に対しても被害の景況は想定内だ。
ティナのディールは、身を守るカウンター的な要素のスキルで優秀だ。
しかし、先程考察したようなデメリットがつきまとう。それに、ディールで対応出来ないことも十分に考えられる。実際、神撃二は対応出来ずに直撃を受けてしまったのだから・・・
そこで、マイナススキルの登場だ。
攻撃というプラスの要因を、同エネルギーのマイナス因子でゼロにする・・・
言葉で言うのは簡単であるが、実際に使っていくのは非常に困難である。一応、アイちゃんには予測演算をしてもらって、わたしにも使えるかの検証を頼んでいるが時間がかかるという返答であった。
時間はかかっても良い。これが出来ると出来ないとでは、大きな差が生じるのだ。
今まではそんなスキルは頭の端にもなかったが、実際にそれを知り目撃した・・・
やはり、学びというのは大事である。何故ならば、スキルとはじゃんけんみたいなもの・・・
完全無欠のスキルなど考えられないというカイの考えは正しいのだろうからな・・・
そう考えると神撃系のスキルも最強ではあると思うが、穴もありそうだ。マイナススキルの予測演算が終わったら、次は神撃系のスキルの予測演算をやってもらおう・・・
四、貴重な魔動石をゲットする。
現在、わたしのブレスにはキャンティから受け取った謎の石が一つだけセットされている。
そもそも特殊結界が張ってあり、一体何の石なのかすら教えてもらっていない。
ブレス自体がキャンティ作なので、何かしら補助的な効果をもたらす石なのではないか?というアイちゃんの予測演算・・・
キャンティのスキル、剣の力をもつ魔動石はもらえていないが必要だと思ったから、これをわたしに与えてくれたのだろう。
彼女が作りし魔剣は五百年の年月をかけたもの・・・故に、愛情もひとしおだと本人から聞いたことがある。その愛を信じたい。
さて、これからわたしにとって必要な魔動石をゲットしていかなければならない。
現状は、特殊な気だけが膨大にある宝の持ち腐れ的なわたし・・・
アイちゃんに最強とは?・・・と問うた所の返答がこうだった。
①圧倒的なスキル持ち。
②決して根絶することの無い膨大な気。
③数十手先まで見越した判断力をもった卓越した頭脳。
④決して破壊させることのない超絶ボディ。
圧倒的なスキル・・・かつてミユーが使っていた魔撃、アルファのインパクトスキル、イプシロンの無限防御は確かに強大だ。
しかし、神撃や神撃二を目の当たりにすると、それらは霞んでみえる。要は穴が無さそうで有るのだ。
これから交えるであろう、01や02という未知の敵。恐らくは邪神であろう敵に対して、確実に有効的スキルとは言い難い。
無論、キャンティが危惧していた無限の力も同様だ・・・
過去に囚われていてはダメなのだ。時代は常に進化しているし、わたしが知らない事実がゴロゴロと転がっていることを認識しなければならない。
現にオーラマスターであるキャンディ、マイナススキル持ちのセスという存在とスキルの偉大さに感服したのだから・・・
竜魔トルネードのような、ゴリ押しの力技も時には必要だが、視点を変えていき、相手にあった戦い方が出来るスキルを探していこう。
膨大な気は既にわたし独自のものがあるので良いし、卓越した頭脳もアイちゃんがいるから万全だ。
問題は、最後の決して破壊されることのない超絶ボディだよ・・・
ゴリ押しの力技にしても、幾度となくこの問題で悩まされている。これは波、物、気の力が膨大な戦士なら誰しも考えたことがあるに違いない。
オーラマスターのキャンディでさえ、身体に負荷がかかりすぎる王気を持て余して全力を出し切れなかったからな。
神レベルの気は、神のボディでなければ使いこなすことが難しいのだろうか?
《そんなことはないと思うよ。一つのことにフォーカスし過ぎると、周りが見えなくなっちゃうもの・・・やり方は無限だよ。カイなら、そう考えていたよね。》
アイちゃんには、わたしが誕生してからのメモリーがそのまま活かされているので、前世のカイの記憶も共有されている。
そうだよな・・・
カイならいろいろと模索して、よりベターな結果を導き出してくれていた。パートナーであったわたしがその考えを活かしていくのは当然だろ。
圧倒的なスキルと超絶ボディ・・・この二つにフォーカスしつつ、新たなる魔動石を求めていこう。
後は、カイと謎声ちゃんの捜索か・・・
ティナが想定外にカイではなく、セスに魅力を感じ、さっきはべったりだったからな・・・
時代は変わっていくのかもしれない。男と女が惹かれ合うこと、同性同士が惹かれ合うこと、どちらも大切な時代に・・・
子供が出来る出来ないという観点は勿論大切であり、子孫繁栄は動物の本能である。
だが、それだけではあるまい・・・
惹かれ合う相手が、異性なのか同性なのか、当人通しが良ければそれで良いではないか。
大切なのは、心も体も幸せであること・・・
好きな相手と一緒にいたい・・・
相手の為に何かをしてあげたい・・・
その気持ちが大切で、結果社会全体が良い方向に向かっていく。そして、皆が幸せならば痛ましい事件は起きないハズ・・・
わたしはカイを再びパートナーとしてコンビを組みたい。それが例え魔剣ゼブルに戻って、カイに使われるとしても本望だ・・・
だから、個人的な旅の目的に入れておく。例えティナがカイに惹かれることがなく、破壊竜としての運命と決別したとしても・・・
あ、よくよく考えたら、カイを独占出来る展開になったな。わたしにとっては本望だが、ティナの気持ちがまたコロッと変わるかもしれない。まぁ、その時はその時だ・・・
謎声ちゃんに辿りつく・・・
こっちの案件は最悪、別に辿りつかなくてもイイか・・・
まぁ、ティナを加護しサポートしてくれたことには感謝をしているし、出会えたら礼は言いたい。時には彼女の導き手として、時にはバトルに於いて、わたしの中にいるアイちゃん的な存在だ。
ティナと最初に出会った頃は、謎声ちゃんの正体を探したいと思っていたが、今は状況が異なり優先順位の後になる。
それよりもゼータだよ!ゼータ!
幻の錬金術師ゼータ・・・
出会って話を色々と聞いてみたいし、こっそりとアイちゃんに予測演算してもらって、錬金術とレジェンド級の強さっていうのを知りたい。うまくいけば、わたし自身にも取り入れることが出来るかもしれんしな・・・
だが、個人的な目的よりもパーティ全体としての目的を優先すべきだろうな・・・利己的な目的よりも、利他的な目的の方が重要だからだ。
何て言っても、まずはスティール星を昔のような状態に戻すのだ。時間はかかっても仕方がない。わたしたちが直接したことではないにしても、これはスティール星に関わる生命体全ての責任なのだ。幸い、不老不死の仲間が増えたのだ。少しずつ一歩ずつ、復興していこう。
まぁ、イリヤンが不老不死かどうかは知らんけど・・・
ディールに関して、キャンディはもっと知っていることがあるような感じであった。更に情報を聴いても良かったが、パーティとして折角良い感じの雰囲気になっているのだ。ムダに問題提起する必要もあるまい・・・




