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二人のブレス ゼータの鼓動  作者: ビッキー


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第四十六話 マイナス①

 キャンディとの楽しい会話は続いたが、それはわたしたちの話のネタからのものであった。そろそろ、彼女自身の情報も聴きたいところだ。

「なぁ、キャンディ。お前の事も教えてくれよ。ティって、キャンティのことだろ?お前たち姉妹はそう呼んでいるのか?」

「あぁ、そうだ。アタイは妹のことは昔っからティって呼んでいるし、ティはアタイのことをディって呼んでいる。その方が、手短で言いやすいだろ?ティのヤツは努力家でな・・・剣と鍛冶師に関しては二刀流ながら、どちらもMR級の腕前。アタイの自慢の妹だよ。」

 彼女はニッコリと微笑みながら、妹のことを語る。先程まで凄まじい気を発しながら、圧倒的な戦力を開示していた者とは思えない。

「八百年前、メドゥーサは魔剣であって魔槍ではなかった。キャンティは、メドゥーサを破壊するのは不可能で封印するしかないって言っていたがどうなんだ?」

「メドゥーサは、太古に母上が禁断の呪法で作りし魔剣。今まで、メドゥーサを手に取った者は必ず命を落としてきたんだよ。それは、災いをもたらす剣として存在してきたから・・・災いは災いをもたらす。恨みは、更なる恨みを生み出す。因果応報の法則に沿っているよね。それを抜本から改革すべく立ち上がったのが、覚醒魔人ゼータなんだ。」

 わたしの問いに、キャンディは丁寧に応じてくれた。今まで詳細を知らなかったが、黒歴史の一幕を垣間見たのだ。そういや、メドゥーサを手にしたルーツやミユーも形はどうあれ命を落としていたな・・・例えバトルに勝利しても、その後は闇というわけか・・・


「ゼータ?初めて耳にする名だ・・・わたしが知っている覚醒魔人は、アルファ、イプシロン、ミユーの三強とその下のデルタくらいかな。」

「ゼータはな・・・魔界屈指の錬金術師であるが、その強さもレジェンド級なのだぞ。その巧みな錬金術で禁断の呪法を紐解き、魔剣から魔槍へと作り変えたのだ。お蔭でこの魔槍を使っても、アタイの命はセーフってわけ。」

 

 う~ん、錬金術師ゼータ・・・一度は会ってみたいものだ。でも、今までわたしたちの周りに名前すらあがってこなかったのは何故なんだろうか?

《ゼータはね・・・一ヶ所に留まっていないフリーランスの錬金術師なのよ。マスターと組めば、MR級を超越したランクの物が作れるとは思うケドね。ナカナカ出会えない、超絶レアな覚醒魔人・・・出会えたらラッキーだね。》

 流石はアイちゃん、やはり知っていたか・・・

 こりゃ、旅の目的の一つに加えなきゃならなくなったな。


「ところで、ティナ・・・その子をどうして抱っこしているんだ?」

 ティナは、先程助けた子猫を大事そうに抱っこしていた。まぁ、見た目はとても愛らしいし、女子ウケしそうな大きさだ。

「だってさ、この子このまま放置したら、可愛そうだよ。あたしが面倒みるからさ、このまま旅に連れて行こうよ。」

「ジブン、にゃんこは大好きなのですが、この子首輪がついていますから、誰かの飼い猫ではないでしょうか?飼い主を捜して、戻してあげるのが正しいかと思いますよ。」

 イリヤンは的確に判断し、ティナに助言をした。確かにその通りだし、半分子供みたいなティナには、子猫を育てることは難しいだろう。

 でも、この首輪・・・魔力が込められている。正確には、魔気を注ぎ込んで魔力として対流している。

《レイ、何者かが首輪でこの子をコントロールしているみたいよ。何らかの意図があるんだろうね。魔猫か・・・邪悪なものは一切感じないから、多分問題ないとは思うケド・・・》

 アイちゃんが予測演算から導き出してくれたが、魔猫って、使い魔的な感じなのだろうか?

 まぁ、うまいこと言ってティナには諦めてもらうしかないな・・・

「こんな所にいたのですの。探したんですの、ニャン。」

 え?誰?・・・

 突然背後から声がし、振り返ったらスラリとした少年?少女?がそこにはいた・・・

 どちらなのか、パッと見の性別は解らない。少年と言われても、少女と言われてもどちらでも違和感が無いルックスと体格。

「どうも、君の猫なの?この辺にいて、そこのティナが保護していたんだ。わたしはレイ。よろしくね。」

 握手を求めて右手を差し出すと、それに応じて手を出してくれた。

 接触と外見で判断して、手指の感じ、肩の骨格なんか女性っぽいんだよな・・・アイちゃん、どっちなのか演算頼むよ。

《接触演算の結果・・骨格、ホルモン組成から女性、染色体もXXで女性。間違いないよ。でも、彼女には欠落しているものがある・・・女性特有の胸、生殖器及び排出部、子宮の存在が確認できないよ。こんな不完全な女性、初めてみるね。》


 え?ウソでしょ?それらが無い女性なんて存在するの?男性が種付け、女性が畑・・・そして、女性が子供を妊娠し、出産するのが自然の摂理。

 子孫繁栄の為にもそうしていかなきゃ、人類は消滅してしまう。

 まぁ、わたしの様に特殊な存在の男女共存生命体もいるから、他にも特殊な生命体がいても何らおかしくはないが・・・

「こちらこそ、セスですの。おや、ニャン・・・あなたが他の人になつくなんて珍しいですの。なん百年ぶりですの。」

「この子、ニャンっていうんだ。さっき、ここで起こったバトルに巻き込まれそうだったから、保護したのよ。あたし、この子初めて会った気がしないんだ。」

「そうなんですの。ありがとうなの。セスは今チョッと忙しくてつい、目を離してしまいましたの。ご迷惑をかけてしまい、申し訳ないの。」

「忙しいって何が忙しかったのですか?ジブンなんか、火花がこちらに飛んでこないかドキドキしていたのに。」

 随分と礼儀正しい子だな。ティナとは真逆の性格だ。名前はセスか・・・

「だって、この一帯周辺に咲くこのキレイなバラをバラバラには出来ないですの。あなたたちのバトルで火花が拡散していたですの。だから、守っていたんですの。」

 ここでもバラがバラバラって使う者がいた。魔族特有の言い回しなのか?だが、ここはスルーしておくか・・・それよりも、驚きの事実が判明した。こっちの方が大事なのだ。


「セス、先に自己紹介をしとくね。右から順番にわたしがレイ、ティナ、イリヤン、キャンディだ・・・今、正直わたしは驚いている。勿論、キャンディも考えは同じと思う。先程のバトルで生じた無数の花火からバラを守り切ったというのか?ティナがニャンを守ったのは体を盾にしてのもの。彼女は重傷を負ってしまったんだ。君は一体どうやってバラを守ったっていうんだ?あの無数の花火から・・・」

「ニャンを守ってくれたんですの?それは、ありがとうですの。火花からバラを守る方法?それは、カンタンですの。あれは一種の気弾ですの。だから、マイナス気弾で消滅させただけですの。あ、ちなみにニャンの身体は特殊で、三種の攻撃に対してある一定のレベルを超えない限り、マイナスで対応出来るから、問題ないですの。」

 皆があっけに取られた瞬間であった・・・

 何なの?マイナス気弾って?それにニャンは三種の攻撃に対しての一定レベルの耐性があるって・・・

 三種の攻撃って、波、物、気だよな。多分・・・

「セス、わたしには何を言っているのか、チョッと理解出来ないんだが・・・マイナス気弾、三種の攻撃について、詳しく教えてくれないか?」

「はい、ですの。まずは三種の攻撃、波動攻撃の波、物理攻撃の物、気力攻撃の気がそれに該当するのは、何となく知られていると思うんですの。波は物には強いケド、気には弱い。物は気には強いケド、波には弱い。気は波には強いケド、物には弱い・・・そんな感じですの。」

「そんなじゃんけんみたいな優劣があったのか・・・それは知らなかった。じゃあ、さっきみたいな気の時は物で対応すればいいのか?」

「そうもいかないですの。攻撃はプラスだから、それにプラスをぶつけても衝突して、互いに少なからずダメージがいくんですの。特にさっきみたいなバトルでは、周囲のバラに危害が及んでしまいますの。」

 この子、意外と理論派なのか?まぁ、この世の出来事は大半が物理、科学、化学の産物だとは思ってはいるが・・・

「そこで、最適なのがマイナスですの。プラスの攻撃に対して、チャラにすべくマイナスエネルギーを合わせていくんですの。仮にプラス五の攻撃に対して、マイナス五を合わせたらゼロになって何事も起きませんの。だから、さっきのプラス気弾に対して、マイナス気弾で対応した・・・それだけですの。」

 一同、呆気にとられた。勿論、オーラマスターのキャンディも・・・

 言葉で言うのは簡単だが、実際は激ムズだ。

一、そもそも、マイナスエネルギーを生み出すことが困難。

二、プラスのエネルギー量を正確に感知しなければならない。

三、それ相応のスピードと正確なコントロールが必要。

 単純に考えただけでも、これだけの壁があるだろう。他にもマイナスを当てる角度などが必要なのかも?とも思ったが、考えるだけで未知の領域なので考えないことにした。

 

 キャンディとセス・・・

 一度に二人のとんでもないヤツに出会うとは、わたしはラッキーなのか?それともティナかイリヤンが出会いを引き寄せたのか?いずれにしても、二人ともパーティに是非加わってもらいたいものだ。


「セス・・・ハイ!」

ティナが、未知の領域でちんぷんかんぷんだったわたしたちの沈黙を打破するようにセスにニャンを返そうとしていた。ナイスタイミングで重苦しい場の雰囲気を和ませてくれたティナ・・・天然っぽい所が多々ある彼女だが、たまには役にたっている。

「ありがとうなの。ニャン、優しくしてもらって良かったですの。」

 ニャンを受け渡す際、ティナとセスの手が軽く触れあったのだ・・・

《レイ、ティナの心拍数がヤバいよ。血圧、体温。共に上昇中。何か特殊な反応で間違いないケド、予測演算する要素が少なすぎてこれ以上はわかんないよ・・・》

 一方のセスの方は、特に平常モードのようで問題ない感じだ。ティナだけ、特殊な反応をしているのか?一目ぼれ的なことなら、恋愛は自由だから特に口は出さないが・・・


「あ、あの・・・チョッと離れてほしいですの。顔も近いし、何か照れますの・・・」

 言われて気付いたが、ティナがべったりとセスにくっついていた。その様子があまりに自然体過ぎて、当人同士以外は顔が近いとかいうことは気にならなかったのだ。ティナは渋々セスから離れるのであった。

「ティナお前、セスのことが好きなのか?破壊竜はカイと結ばれる運命と思っていたが・・・アタイには恋愛はよくわかんないケドさ・・・」

「だって、さっきチョッと触れただけなのに、全身がビクンってなって、胸がキュンキュンしたんだよ。こんなの初めてなことで、もっと一緒にいたいって思ったんだ。だから、くっついて顔を近くで見たいなって・・・カイ?どこにいるのかもわかんないし、どんな人なのかもわかんない。そんな訳わかんない人と運命だからって理由だけで、結ばれなきゃならないの?って今、思ったの。謎声ちゃんには悪いケド、もういいかな?って・・・」

 確かにティナの言い分も解る。太古からの継承で破壊竜は代々、歴代のカイと結ばれている。それを覆そうっていうのか?じゃあ、カイを一緒に探そうっている共通の目的が無くなってしまう。わたしたちの旅も、ここで終わりになってしまうな・・・

「あ、でもレイとの旅は続けるよ。あたし、レイの成長していく姿がもっと観てみたい。だってさ、元々魔剣だったんだよ。魔剣が人化して、化け物みたいな気の量を持っている特異体。言い方悪くてゴメンね・・・だけど、そんな貴重な人から学ぶことも多くてさ、あたし自身もっと成長したいんだ。尊敬してるんだよ、とっても・・・」

 ティナは照れながら、わたしのことを褒めてくれていた。人から認められ、必要とされるっていうのは何とも心地良い。まさに感無量に尽きるな・・・

「ジブン、感動しました。ティナの素直な気持ちは素晴らしいです。人ってナカナカ自分の気持ちを表現できないし、組織に入れば人身御供になってしまう人もいます。周囲に流されずに、自らの意思を貫く姿、勉強になりました。」

 イリヤンは熱く力説していたが、彼もまた素直なヤツだなと感心する一面であった。

「えっと何はともあれ、ニャンを保護してくれたことには感謝しているの。バラが少なめなゾーンだったから、あまり意識をこっちにもっていなかったの・・・だから、お礼に何か一つだけティナの願いをきいてあげるの。ただ、記憶がない時期が多かったから、知らないことも多いの。セスが知っていて、出来ることなら言ってほしいの。」

 記憶が無い時期が多かったって・・・

 もしかして、使い魔的な存在のニャンが関係しているのか?誰かにコントロールされているみたいだって、アイちゃんが言っていたしな・・・

 謎多き人物セス・・・もっと彼女のことを知りたいな。

「じゃあ、あたしニャンが欲しい。」

 え?それは流石にムリだろ?って思ったが、思ったことをズバッと言うのはティナらしいな・・・

「それはムリなの・・・セスにはニャンがいないと困るの。ニャンの導きで、大自然に危害が及びそうな所に出向いて行ってるの。だから、違う願いにしてほしいの。」

「え~ムリなんだ。残念・・・じゃあ、あたしを魔王にして!魔王になれれば、魔界や魔族を掌握出来る。だから、ニャンみたいな子もあたしのものになるしね。」

 それもチョッとムリじゃないか?

 それに魔王になったからといって、魔界や魔族を掌握出来るって思っていることがズレてるぞ。ファイを見ていれて解った。魔王って実はヒマなんだということが・・・

「そ、それもムリなの・・・魔王様はそれなりの実力と人格者でなければ、大魔王様から認知されないの。魔族のボスは大魔王様だから、その決定には逆らえないの。だから、セスなんかの推薦じゃあ叶わぬ夢なの。」

 大魔王って、相当偉いんだな・・・

 まだ会った事すらないが、一度は謁見したいものだ。どれほどの人物なのか興味がある。

 でも、あのファイが人格者だとは到底思えない・・・実力は圧倒的なものがあったので、それに関しては文句の付けどころがないが・・・

「なんだ~これもダメなのか・・・じゃあ、あたしにマイナススキルを授けてほしい!これなら、教えるだけだから出来るでしょ?マイナススキルがあれば、この混沌とした世の中の役に立つと思うのよ。セスがいなくても、植物や動物、人間を助けることが出来るじゃない?」

 ティナはドヤ顔で言い放った・・・

 確かにそれはそうだが、まずはそういったことに対する基礎が出来ていない彼女にいきなりは難しいのではないかと思う。

 それはティナではなく、わたしに教えてほしいと切に思ったが、今は話の展開を見届けよう。

 焦らなくても時間はあるし、キャンディのヤツも想いは同じだろうしな・・・

「アタイにもそれは教えてほしいよ!な、レイもそう思うだろ?アタイは、厄災を根絶するべく旅をしている。セスのスキルは素晴らしいよ。絶対に平和の為に役に立ててみせるから、何とか頼むよ。」

「キャンディ、それはとても素晴らしい行動ですの。ティナの気持ちも純粋でステキだと思いますの。出来ることなら、教えてあげたいですの・・・でも教えるといっても、そのやり方が解らないですの。セスはいつの間にか自然に出来るようになったから・・・言葉で伝えるのが、出来るようになったらいいケド。ゴメン・・困りましたの。」

 セスはその場で涙した・・・

 それは、純粋に出来ない事に対しての悔しさと申し訳なさとが複雑に絡み合って出た感情。

 それを見たティナは、温かい眼差しで彼女にこう伝える。

「いいよ、セス。だったら、最後のお願いを聞いてくれる?あなたとニャン、あたしたちと旅を一緒にして!そしたらさ、ニャンも一緒だし、大好きなセスとも一緒にいられる。そして、マイナススキルを教えることが出来るようになったら、その時は教えることが出来る。一石三鳥だよ。あたしって天才よね。」

 自分で自分のことを褒めるなよ・・・とは思ったが、確かに、これでティナの望みは全て叶うんだよな。わたしにとっても、もしかしたらマイナススキルを教えてもらえる時がくるのかもしれないという淡い希望がもてるし・・・

 そして、もう一つオマケを釣ることが出来るしな・・・

「あ、それならアタイもお前たちと一緒に旅をするぞ。マイナススキルを習得出来るチャンスがあるからな。なぁレイ、アタイも一緒に行ってもイイだろ?」

 キタ~!

見事にキャンディのヤツを釣ることが出来たぞ。正面から一緒に来てほしいって言っても彼女にとってメリットが無い以上、断られるのは目に観えていたしな・・・

「まぁセスが良ければ、わたしは構わないがどうかな?セス・・・」

 わたしは内心ニンマリしていたが、それを表に出さないようにしてセスに振る・・・策士って、こういう楽しみもあるんだろうなと気付く瞬間であった。

「解りましたの・・・ティナの望み、叶えてあげますの。セスとニャンはあなたたちと一緒に旅に行きますの・・・その代わり、一つだけ約束してほしいですの。ティナ、人前でべたべたくっつかないって約束してほしいですの。」

 ティナはそれを聞き、目をキラキラさせながら首を上下に何度も頷いた。何とも単純で解りやすいヤツだ。まるで子供だな・・・


《レイ、ティナとセスなんだケド・・・》

 アイちゃんは何か言おうとしていたが、途中で無言となった。まぁ、大したことじゃないから言うのを止めたのであろう。いつもアイちゃんは、重要なことをしっかりと言ってくれている。だから、今回敢えて追及はしなかったのだ。

 しかし、この案件をアイちゃんと共有しなかったことを後程後悔する羽目になるとは、この時夢にも思わなかったのである・・・

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