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二人のブレス ゼータの鼓動  作者: ビッキー


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第四十五話 マシマシ④

 一閃VS王気・・・

 ハイレベルな気の衝突は、まるで高回転した金属同士が激しく衝突するようであった。そう、高域の衝撃音の如く・・・

 衝撃音と同時に周囲には花火の如く、気のスパークしたものが拡散される。見た目はキレイであるが、実際は当たれば致命傷になりかねない危険な火花・・・

圧縮した無限竜魔気と神レベルの王気の破片が被弾したら、どうなるかは大体想像がつく。

 ティナが神撃二で重症になった時に初めて知ったことだが、神レベルの攻撃は、下界の者にとって致命傷になると・・・

 如何に不老不死であろうと、自然治癒はままならないのだ。

 一進一退の攻防が続く・・・

 まいったな・・・

 一閃に全てをかけたが、彼女も全力でガードしていて貫けない。このままではわたしの赤眼がもたないぞ。

《レイ、そうだね・・・でも、それは彼女も同じだよ。どうやら、王気はかなり身体に負荷をかけなきゃ使えないみたい。今の彼女に余裕はないよ。イヤ、既に身体はガタガタの一歩手前みたいだよ。》

 そっか、如何にオーラマスターといえども、神レベルの気を扱うのはそれだけリスクがあるってことなのか・・・

 逆に感謝だな。それだけのリスクを背負ってでも、わたしに対して全力で相手してくれているんだから・・・

 ヤバイ・・・赤眼がもたなくなってきた。今にもパリンと砕けそうだ。自らの身体だから、わたしが一番状況を把握出来ている。

 精神力VSオーラマスターとしての意地が、お互いを支えている。

 だが、いつまでもそんな極限状況が続くわけもなく、シーソーゲームは徐々に傾き始めたのだった。

 赤眼をもたせる為、わたしは無意識に出力をセーブした結果、均衡していたバランスが崩壊したのだ。

 拡散されていた火花もバランスが崩壊したことにより、よりランダムにより激しくスパークした・・・

「あんっ・・・」

 ティナの色っぽい小声が聴こえた・・・

 こう言った時、そんな小声は不適切じゃないか?とツッコミたかったが、それどころではなかったのだ。

 そう、彼女は目の前にフラフラと歩いてきた子猫を自らの身体を盾にして守ったのだ。飛散した火花から・・・

 王気を含んだ花火の直撃を受けた為、自己回復は望めない。

「クソッ!ティナが・・・」

 わたしは自らの赤眼をかばったことを悔いた。タラレバの話は好きではないのでしたくはない。常に目の前に起こる現象を選択し決断する、それの繰り返し・・・

 今回選択したことを悔いても仕方がない。ポジティブにどうすれば、よりベターの選択が出来るかを考える方が建設的である。


 アイちゃん・・・わたしには一つしか選択肢がないんだが、どうかな?

《だよね~。ワレの予測演算でも、この状況を打破する方法は一つしか無いと出ているよ。》

 わたしとアイちゃんの考えは一致した。アイちゃんの予測演算では全てが成功する確率、三十八パーセントということだ・・・まぁ、円周率の十倍も可能性があると考えれば気が楽である。

 わたしは、赤眼から放出する一閃のパワーを元に戻した。状況は先程と同様になり、均衡している感じだ。

 しかし実際の所、わたしの赤眼は限界を超え、壊れ始めている状態。一方の彼女の方は、ムリな王気をハイパワーで使い続けて身体がもたなくなる寸前だった。

 ここで、わたしが竜魔気のパワーを上げることは可能だった。恐らく、そこで勝負は決するであろう。

 だが、そうすれば直後に赤眼が暴発するとアイちゃんの演算が出ている。その暴発は、更なる被害を周辺にもたらすことは明白。現にこの周辺にあった大量のバラは、このバトルで飛散した火花で無残になって・・・いない?

 あれ?今気付いたが、キレイに咲き誇っていた周辺のバラが一つたりとも被害を被っていなかったのだ。てっきり、バラバラになったものかと思っていたが想定外だ。

 もしかして、ティナとイリヤンがバラたちを守ってくれたのか?イヤイヤ、そんなハイレベルなこと、二人には到底ムリな話である。

 じゃあ、一体ナゼ?・・・


 とりあえず、その件に関しては後で考えよう。

一、赤眼を壊さずにキャンディに勝つ!

二、自己回復不能なティナを救う!

 今のミッションはこの二つ・・・で、わたしたちが導き出した選択は生命返還・・・

 そう、生命返還で自らの赤眼を回復しながら、遠方で横たわっているティナも生命返還で治癒する。言葉で言うのは容易いが、MR級の難易度である。あ、MRって言うのは、マジでレアの略っていうのはここだけの話である。

 ティナはわたしが魔糸を発し、魔糸を通じて外傷の回復にあたる。魔糸は相手の気を吸収することも出来るし、相手に気を与えることも出来るもの。言わば、注射器のようなものと考えれば解りやすい。

 

 昔、魔糸が使えるようにカイが特訓していたことをふと思い出す。魔糸とは放屁の如く使うべし・・・今考えたら、何か笑える名言だな。

 魔糸は今まで、あまり活用してこなかった。そんなに必要としていなかったということもあったが、活用方法のアイデアが希薄だったのだ。

 今回、キャンディが新たなる魔糸の使い方を体現してくれた。わたしも考え方を改めて、少しはマシな使い方を模索しなければな・・・名付けてマシマシ大改革を行うのだ。

 この時、アイちゃんは悟ったのだった。わたしは無意識に寒い言葉を使うヤツだということを・・・バラがバラバラ、魔糸をマシに使うでマシマシ・・・


 話は戻り・・・

 早速、作戦開始だ!

「なぁ、このまま引き分けにしないか?・・・正直、アタイはこのままじゃ身体がもたない。お前も恐らく赤眼がもたないんじゃないか?さっき、パワーをセーブした理由がそこにあると思うんだが・・・」

 彼女が額に脂汗をにじませながら、弱々しく提案してくる。彼女にもプライドがあったのだろう。それが、負けよりも引き分けにしたいという所に表れている。

「イヤ、その通りだ。わたしの赤眼も限界にきている。お前の提案に乗りたいのも山々だ・・・だが、それじゃお前に認めてもらえない。お前がパーティに必要なんだよ。ここに来たのも別にこの地を目指して来た訳じゃない。たまたまなんだ・・・このたまたまの機会は、必然だと思っている。何故ならば、わたしはお前の妹キャンティが作りし魔剣ゼブルなのだから!だから、お前に勝利し、パーティに入ってもらう。」

「は?お前が魔剣ゼブル?アタイの妹、ティが作ったって?チョッとサプライズでアタイを混乱させようって話・・・じゃないのか?」

「全ては、これが終わってからだ・・・生命返還!」

 わたしは一閃を放ちながら、無限竜魔気をフルに使うスキル生命返還を同時に行った。ティって、姉妹間で使う呼び方なのか?とは思ったが、そんなことは後回しだ。

 本来、一閃や生命返還は片方だけでも極度に消耗し、強固な精神力を要するスキル・・・

 それを二つ同時並行して行おうというのだ。ホントに問題ないのか?わたしの身体・・・

 まぁ、アイちゃんがサポートしてくれるっていうので、実はかなり安堵している。わたし単独では正直、かなり難しいからな。

 そして、生命返還の準備は整った。

 体内では赤眼に対して細胞の復元、体外では魔糸を使ってティナの外傷回復・・・

 時間にしてはそこまではかかっていないだろう。先に赤眼の復元が完了し、細胞の活性化を行いながら一閃のパワーを少しばかりアップさせた。

 ほんの少しで良かったのだ。わたしと彼女の気は五分五分だったのだから・・・

 今回、生命返還の発動は二度目ということもあり、身体が少々慣れたようだ。前回のように、意識がぶっ飛ぶようなことはなかった。アイちゃんのサポートもあったしな・・・。


 わたしと彼女の均衡が破れ、一閃が彼女の王気を貫いた。魔槍メドゥーサは吹き飛び、白煙をあげていた・・・わたしの勝利が確定した瞬間であった。

 そして、火花の直撃を受け横たわっていたティナの外傷も生命返還によって回復した。彼女の意識もしっかりしているようで安心した。

 よしっ!三十八パーセントの確率を勝ち取ってやったぞ。ミッションを達成した瞬間、わたしは膝から崩れ落ち、その場に倒れてしまった。

 激闘の相手、キャンディも身体に極端な負荷がかかった王気を長時間使用した為にその場に倒れ込む。

 離れていた場所にいたイリヤンは、ティナとわたしのどちらに手を貸そうかオロオロしていたらしい。

 もっとしっかりしてくれよ・・・男なら、より弱き者に手を貸すものだと後で教えてやったのだった。


 わたしとキャンディはその場で倒れたが、意識はしっかりしていた。お互いにこのバトルは心底満足し、相手に尊敬の念を持つのだった。

 お互いに手を差し出し、手と手が握り合う。彼女の気は魔気へと戻っていたが、何とも温かな優しい気が対流しているなと感じた。

 わたしの気はどう感じたんだろうか?無限竜魔気自体、異質な気だからな・・・

直接、身体に触れられたら、その本質は見えてくるだろう。彼女は、偉大なるオーラマスターなのだから・・・

 わたしたちは手を握りながら、笑い合った。

 そう、心から笑ったのだ・・・

 自らの相手の気を探れば、人となりが解るという、気の上位者ならではの自然的な能力。

 彼女はオーラマスター故に当然だが、わたしも気の扱いに関しては上位者の部類に入るようだ。

 昔、クロちゃんやゲンがそうだったように・・・


 しばらくして、ティナとイリヤンがそばに駆け寄って来た。ティナは無言でわたしを抱き上げ、泣きながらハグをする。

「レイ、大丈夫ですか?ジブン、オロオロするばかりでスミマセン・・・あの、キャンディさん、これが転がっていたのでお持ちしました。」

 イリヤンがそう言うと、その手には魔槍メドゥーサがあったのだ。

「あぁ、ありがとう・・・え?お前、これを手に取って大丈夫なのか?このメドゥーサは、特殊でな・・・何か圧倒的に強烈なものを持っていないとその者をメタル化してしまうのだ。それだけ、プライドの高いヤツなんだよ。」

「え~!とりあえずジブン、問題ないようです。でも良かった。メタル化されてしまったら、皆さんに迷惑をかける所でした。」

「わ~あたし、触らなくて良かったよ。レイ、ホントに大丈夫なの?あたしのケガも治してくれてありがとう。二人のバトル、激アツだったよ。心から震える感じだった。あたしも頑張らなくっちゃって思ったし。」

 え?メタル化って、まだその能力はあったのね・・・

 以前、魔剣だった時のメドゥーサには刺したらメタル化させる能力は有ったけど、持つ者を認識する能力もあったのか・・・

 ということは、まだ開花していないイリヤンの能力がスゴイって証になった瞬間だ。どんな能力かは知らんけど・・・

「まぁ、全員無事だったのだ。それだけで良かったではないか。」

「ところで、お前に聞きたいことがある。お前、ホントに魔剣が人化した者なのか?まぁ、ティなら作れないことはないとは思うが・・・」

 

 わたしは、今までの経緯をキャンディに話した・・・

 それは、八百年前のことから今日までのことを・・・

 彼女は複雑な表情をしていたが、真剣に受け止めてくれているのがよく解った。

「話はよく解った・・・じゃあ、お前は男にも女にもなれるのだな。便利だよな。男と恋愛したかったら女になれば良いし、その逆も然りとは・・・」

「まぁそうなんだが、今は恋愛とか全く考えていないし、そもそもわたしなんかが子作りなんて想像もつかないよ・・・ていうか、そもそも男のわたしに子種なんてあるのか?女のわたしに妊娠なんて可能なのか?魔剣でも子供を作れますなんてことが知れ渡ったら、大騒ぎになるぞ。」

「オイオイ、アタイは子作りなんてワード、一言も出していないぞ。もしかして、お前・・・欲求不満じゃないのか?」

 キャンディにツッコまれて、わたしは赤面しているのが自分でも解った。

そして、隣にいるティナとイリヤンが大笑いしたのは言うまでもない。


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