第四十五話 マシマシ②
出来るのか?
わたしにも・・・
キャンディが気で出来る事はわたしにも出来るハズ・・・多分・・・
だって、わたしには彼女以上の無限竜魔気があるのだから・・・
スキルの仕組みとコツさえ掴めば、恐らくは可能だ。
アイちゃん、予測演算頼むな・・・
《もう、レイったら、この緊迫した中で他者のスキルを習得しようっていうの?ホント、欲張りなんだから・・・まぁ、その強欲さがあったから、ワレが覚醒したってのもあるんだけどね。いいよ、すぐにって訳にはいかないケド、彼女のスキルを演算してみるね。》
アイちゃんは、魔糸に魔気を付与した【プロテクション】と魔気で大気の揺れを感じるスキルを演算してくれている・・・
後者のスキル名は言ってなかったケド、カイは【サーチ】っていっていたから、もしわたしが習得出来たらその様に言おう。
わたしが呑気なことを閃き、アイちゃんに予測演算を頼んでいるその時、ヤツは再び姿を現した・・・
「少しは消耗してくれたかな?ボクもスピードを上げていくからね。」
03はそう告げると、飛行スピードが格段に上がっていった。魔気を消耗していったキャンディのスピードとほぼ互角か・・・
追随と回避が続く中、キャンディは何やらブツブツと呟く・・・
「さて、鬼ごっこもそろそろ終わりにしようよ。楽しみだな~君みたいに魔力数値がそこいらの魔族と比べものにならないくらい高い娘の身体って・・・ボク、ゾクゾクするよ。」
「あ~キモイんだケド、いい加減にしてくれない。アタイの身体はアタイのもの・・・出でよ!メドゥーサ!」
は?確かにメドゥーサって、あいつ言ったよな・・・
《メドゥーサ・・・八百年前に魔人ルーツが使い、魔王ファイをメタル化させた魔剣。その後、カイのブレス内で隔離していたが、覚醒魔人ミユーが窮地の際にこれを使用。この際、フュードブレード化し、魔剣メドゥーサと一体化。しかし、ミユーは超星獣ストロームに命を狩られる。その後のメドゥーサは行方不明となる・・・とまぁ、こんな感じだったよね。その魔剣をあの娘が使うっていうの?予測演算しても、精神生命体には物理攻撃、波動攻撃、魔気攻撃のどれも通用しないんだけど・・・》
アイちゃんが言う通りだが、ここでメドゥーサ登場とは・・・その存在すら、すっかり忘れていたからな。
まぁ、キャンディの登場以降は驚きのオンパレードだったから、今更何が出てきても驚かないがな・・・何なら、助っ人でカイが登場しても良いのだぞ。
そんな妄想的な希望を思わず考えてしまったが、それはないだろう。
そして、キャンディの手には一本の魔剣・・・じゃないの?え?あれは、どう見ても槍・・・
わたしは何がなんだか理解不能になっていた。魔剣が槍になるのか?キャンティが言っていたよな・・・メドゥーサは完全に破壊するのは不可能で封印するしかないって・・・ということは、剣を槍に作り変えるのは不可能だろう。
《ワレの予測演算によると、あれは魔槍だよ。逆算したら、やはりかつては魔剣であったあのメドゥーサに間違いない。魔剣を魔槍に変化させたのは・・・錬金術。それも魔族以上のハイスペックなヤツしか出来ない超高等技術で。あの魔槍、ファイの魔槍よりも上位ランクかもしれないよ。》
錬金術って、そんな使い手、今までに会ったことないぞ。わたしが会っていないだけで、存在する職業なのかもしれないが・・・でも、魔族以上のハイスペックって、一体どんなヤツがメドゥーサを作り変えたんだ?
しかも、ファイの魔層よりも上位ランク?ファイ専用魔槍ってキャンティは言っていたが、素晴らしい逸品だった。あれ以上とは・・・それがホントならスゴイな。
そして、キャンディは03と少し距離を取った。それに気付いたヤツは、その距離を詰めるどころか一気に接触を試みた。
「お前の解析は完了した。これで終わりだ。ディーノ!」
彼女の魔槍は紫色のオーラをまとい、明らかに先程までとは異なる何かを感じさせた。
ディーノって、何かディールに似てるな。まぁ、たまたまかもしないが・・・
《レイ、彼女の魔槍から出ている紫色のオーラ、03に何か酷似しているよ。詳しく予測演算していないケド、彼女は勝算があってあのオーラを出しているね。》
精神生命体に対しての勝算があるというのか?
物理、波動、魔気の攻撃が無効の相手に?
そして、決着は意外にも早かった。
ヤツは用心してか、魔槍を避けて彼女に接しようとする。
ところが彼女の魔槍はそれに合わせて、まるでムチの如くキレイな曲線を描くのだった。
決して攻撃が当たらないと思われていた彼女の魔槍はヤツに直撃し、何やらジュッと肉が焼けるような音を発するのだった。焼肉なら誰しも喜ぶとは思うが、キモいヤツの焼肉ならぬ焼き邪神ではそうはいかない。
ふと、横を見るとティナとイリヤンが真剣な眼差しでバトルの行く末を見守っていた。二人とも無言ではあったが、それは明らかにレべチな展開なので致し方ない。
「じゃあな、キモい生命体さん。今度生まれ変わったら、少しはまともになりなよ。」
「こんなハズでは、こんなハズでは・・・有り得ん、有り得んぞ・・・」
彼女の魔槍はムチの如くヤツをグルグル巻き状態にし、黒煙を出しながらキレイにヤツを消滅させたのであった。
終わったのか?
邪神って、案外あっけない消滅の仕方するんだな・・・
実は本体はこっちでした・・・
みたいに復活する展開、ありがちだけど。これって、フラグになったらシャレにならないから、今のはナシで。
一人ボケ、一人ツッコミしていたが、アイちゃんは無言だった。わたしからの依頼である、キャンディの気についての演算途中なのだろう。
プロテクションとサーチについて頼んではいたが、きっとディーノも予測演算してくれるに違いない。アイちゃんは出来る子だからな・・・
「おい、そっちにいるお前たち。こっちに来い。もう、キモいヤツは消滅したから安心してよいぞ。」
やはり気付かれていたか・・・
わたしたちはキャンディに促されて、彼女の近くまで接近する。
「色々と聞きたいことがあるが、こちらから先に失礼する。わたしはレイ、こっちがティナ、そっちがイリヤンだ。たまたまお前たちのバトルに遭遇してしまったので、少し遠方から静観させてもらった。お前、オーラマスターって言っていたな。わたしも長いこと生きてはいるが、こんな気の使い方を見たのは初めてだ。スゴかったぞ。」
「ホントだよ。あたし、観ていてドキドキしちゃった。何か、槍がムチみたいに変化した時は流石にウソでしょ?って思っちゃったし。」
「ジブン、感動しました。あなたの名前と呼び名、師匠にそっくりだったのも驚きましたが。」
近くで彼女をじっくりと観てみたが、やはりキャンティと瓜二つだ。髪色だけ異なるが、男勝りの所まで似ているし、イリヤンも言っていたが呼び名までそっくりだしな。
「ほう、お前らナカナカ楽しそうな面子じゃないか。お前の師匠って誰なんだ?アタイに似ているって?もしかして、キャンティのことか?」
「ハイ、キャンティ師匠の弟子になって、あまり時は経っていないので恐縮ですが、やはりお知り合いなのですね。顔や声なんかもそっくりだったので、もしかして肉親の方なんですか?」
「あぁ、あいつはアタイの双子の妹だ。髪色以外は一緒だろ?もうかれこれ、千年以上は会っていないがあいつは元気か?相変わらず、鍛冶師とソードマスターの二刀流は健在だとは思うがな。」
そう言うと、キャンディは満面の笑みを見せてくれた。さっきまで、凄まじい気を発していたとは思えないほどキュートな一面だ。
それにしてもキャンティとキャンディが双子だったとは・・・
濁点が有るか無いかの違いで、名前を付ける時は結構テキトーだったんじゃないか?・・・
そんなことがふと頭をよぎったが、そんなことを言ったら彼女の怒りを買いそうだからスルーしておこう。彼女のオーラマスターの力は、ヤバイ領域だ。わたしの直感は結構当たるのだ。
「やっぱ、名付けの時はテキトーだったのかな?キャンティとキャンディって何も考えないで付けた感じがするよね・・・あ、ゴメンね。あたし、思ったことはズバって言っちゃうこと多いんだ。」
ティナ・・・お前、折角わたしがスルーしていた案件を掘り起こすなよ。そんなことを言ったら、彼女の怒りを買うぞ・・・
「ほぉ・・・お前、面白いことを言ってくれるな。確かにそうかもしれん。まぁ、名前などどうでも良い・・・お前、破壊竜だろ?天空の力は感じないが、竜水晶の存在は感じるぞ。天空の力はどうしたんだ?」
「何かね、あたしにもよくわかんないんだ・・・特殊なスキルらしいケド、それらしきものも感じないんだよ。でもね、ディールなら使えるよ。」
「は?ディール?ディールだと?・・・そうか、お前、ディールで加護してもらっているのか。愛されているんだな・・・まぁ、天空の力が無けりゃ、破壊竜は竜水晶だけじゃ力が十分に発揮できんしな。」
「キャンディ、ディールを知っているのか?教えてくれないか?ティナは突然、謎の声が聴こえるようになってからディールを使えるようになったんだ。謎の声の正体も不明だし、ディールがナゼ使えるようになったのか不明。何でもいいんだ。知っていることを教えてほしい。」
「破壊竜の天空の力は太古よりの力。波動を生み出し、天空を自在に操り、真空状態でも生存が可能。竜水晶はその力の核なんだケド、核はあってもスキルがないのが今の状態だね。電源である竜水晶と電球である天空の力が合わさって初めて活かされるって言えば解るかな?それに比べてディールは、地味なカウンタースキル。相手の攻撃に対して、波の力で返していく。電源である竜水晶があるから、ディールは使用可能になっていると思うよ。」
そうか、竜水晶ってそんなに大事な物なのか。
謎の敵がこの間、竜水晶を狙っていたのもその為なのか?
それにしても、今のティナにとってディールはベターなスキルだ。早く天空の力が使えるようになってほしいが、所在が不明なだけに今はどうしようもない。旅を続けていき、情報を集めないとな。
「そっちの長身の彼は・・・何か特殊能力がありそうだけど、まだ覚醒していないのか特殊結界に阻まれているのか解らんが、今は只の優男だな。まぁ、スキルに目覚めたら楽しみではある。こんな混沌とした世の中だ。楽しみは後にとっておきたくはないだろうが、焦っても仕方がない。日々の鍛錬はした方が良いぞ。努力は決して裏切らないからな。」
「ハイ!ジブン、足手まといにならないように努力していきます。でも、師匠にはお前は剣の才能が無いって言われちゃったんですよね。」
イリヤンは苦笑いしていたが、彼がどんなスキルを開花させるのかは興味がある。キャンディが言っていたように日々の鍛錬は大事なのでわたしに出来る事は協力していこう。
「最後にお前・・・色んな意味で特殊だな。お前がいたから、アタイはこっちに呼び寄せたんだ。じゃなかったら、さっきのヤツを葬ったあと、アタイは次の厄災に向かっていた。」
「次の厄災って・・・お前は、厄災を潰して回っているのか?だったら、さっきのヤツが03って言っていたから、もしかして01とか02とかが存在しているかもしれないぞ。」
「あぁ、アタイは厄災潰しの旅をしている。いるかもしれんな、キモいけど01やら02やらが・・・しかし、誰かがやらなけりゃならないんだ。妹と組めば、アタイたちは無双状態になれるとは思う・・・でも、あいつはアタイには昔っから協力してくれないんだよ。言い訳ばっかり言いやがってさ。」
こいつ、キャンティと違ってしっかりしてるな・・・
「お前、気が異質だな。通常の魔気とは異なるし、底知れない感じがする・・・アタイには解るんだよ。オーラマスターだからな、気に関しては熟知している。」
「流石だな・・・お前こそ、さっきの魔糸に魔気を付与したプロテクションや変化する魔槍、一切の攻撃が効かない相手を消し去るスキルは見事であった。」
「ほぉ・・・お前、魔糸が見えるのか?少しは見直したよ。魔糸は限られた者にしか観えないからな。」
キャンディは少し驚いた表情を見せる。
しかし、絶対的な自信家なのだろう。彼女自身のオーラは、やはり只者ではない。




