表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人のブレス ゼータの鼓動  作者: ビッキー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/44

第四十四話 イリヤン①

 意を決したわたしはキャンティと謎の男性に近づいた。わたしは女性とすれば高身長の方だが、この男性はわたしよりも少しばかりデカイ・・・ 

 物静かだが、独特の雰囲気をもった人物だ。

「キャンティ、今戻ったぞ。成果としては、転生したティナを見つけて連れてきた。カイは依然行方不明だがな・・・」

「レイ、よくティナを見つけられたな。気の質が異なるし、天空の力も感じられないのに。ティナ、あたいがレイを作り出した鍛冶師のキャンティだ。ヨロシクな。」

「あ、ハイタイ!初めまして!前世のことはよく解んないけど、ティナだよ。カイを探せって謎声ちゃんから言われてたんだケド、よく解んなくって・・・カイがあたしにとっての強い根だったら、あたしはそれを見届けたいし、彼との子を産むのがあたしの運命みたい。にーぬつうらば、どぅゆだあつうる。根ぬ強らばどぅ枝強る・・・ってね。」


 一同、硬直した・・・

 ハイタイ・・・歯が痛いのか?その後の呪文みたいなのは一体何?・・・アイちゃん、出番だ。

《了・・・ハイタイっていうのは、こんにちはってこと。その後の言葉は、根っこが強いと枝も強い。強い根っこがあれば、丈夫な枝に葉が茂り立派な木になる・・・つまり、もし根っこが無ければ木は枯れてしまうし、風に吹かれるとすぐに倒れてしまうってこと。まぁ、男性の強い根って言ったら、アレを想像しちゃうかもしれないが、ティナは違う意味で例えを表現したと思うよ。》

 そうか、挨拶と彼女なりの表現だったのか・・・

 しかし、キャンティとその場にいた謎の男性は、強い根と彼との子を産みたいっていう表現だけで妄想が暴走し、顔を赤らめていた。

 そりゃそう思うよな・・・だが、アイちゃんのことは伏せておきたいので、ここでのティナの言動はスルーした。

「ティナ、転生してから随分と大胆な発言をするようになったな。」

「ん?」

 キャンティの言葉の真意がティナは理解していないが、まぁニッコリとしているので場は和んだのである。

 さてと・・・謎の男性について聞いてみるか。

「キャンティ、そちらの男性は?男でも出来たのか?」

 わたしが唐突に言ったことでキャンティと謎の男性は少し慌てたようであった。

「レイ、お前唐突になんなんだ。彼は戦乙女イリヤ・・・職業選択場で見つけ、有能な人材だと思ったので弟子入りさせた。将来はスティール星の為に鍛冶師として腕を振るいたいという男だ。イリヤ、お前からも自己紹介しろ。」

 キャンティから紹介を受けて、イリヤはニッコリと自己紹介を始める。

「ジブンは戦乙女イリヤ。鍛冶師希望です。師匠のブレスは作品として非常に素晴らしく思っています。この混沌としたスティール星を少しでも良くしたい。その為の作品をジブンも作っていきたい。その為にこの度、師匠に弟子入りを希望しました。レイさん、ティナさん、どうぞよろしくお願いします。」

 随分と礼儀正しい真面目な青年である。見た目は人間だが、何かの生命体が人化したのか?キャンティの作品は、数百年の研究や試行錯誤で完成したものばかりだ。彼にそれが出来るのか?まぁ、出来ると判断したからキャンティは弟子入りを許可したのだろうが・・・それにしても、戦乙女ってどっかで聞いたことがあるな。何だったっけ?

《レイ、戦乙女の名を持つ者は生と死を司るペルセポネーの加護をもった者だよ。八百年前に出会ったよね。戦乙女マリン・・・規格外の戦闘力を持っていたあの魔獣だよ。もっとも、このイリヤはそこの辺りの情報に結界がはってあって不明なんだケド・・・だから、不老不死か長寿可能な存在だと思うよ。》

 あ、そうか・・・そういえば、過去に出会っていたな。戦乙女マリン・・・両の拳に触れるだけで相手に生命力と致死力を与えることが出来るとんでもないヤツだった。

 このイリヤもそういった類のことが可能な魔獣が人化したヤツなのだろうか?

「なぁ、イリヤ・・・お前、魔獣なのか?以前に出会った戦乙女マリンってヤツは、狸の魔獣が人化していたからな。同じ戦乙女の名を持つからには何かしら関係があるんじゃないのか?あとさ、スキルは何か持っているのか?生と死に関わる何かの・・・」

 わたしは再び唐突にイリヤに質問をしてみた。よくよく考えてみれば、なんてデリカシーのない質問なのだろう。

 しかし、カイならば聞いていただろうな。あいつは解らないことはそのままにしないヤツだったから・・・

「ジブンが魔獣?それは面白い発想ですね。そうですね・・・ジブンは一体何者なのでしょうか?物心ついた頃には、人間の両親に育てられていましたが、ある一定の時から成長も老化もしませんでした。だから、フツーの人間ではないのかもしれません。両親はどんどん老化が進み、亡くなってしまいました・・・実は今までは社畜だったんですよ。それが当たり前と思っていました。しかし、ある時ブレスの存在を知り、とても興味が出てきました。これを開発した師匠に憧れ、年齢詐称で職業選択場に鍛冶師希望で行きました。見た目は若く見えると思います。あと、スキルに関しては多分何もないですね。何も感じないんですよ・・・人間以外の存在であれば、何かしらのスキルがあると聞いています。だから、老化しない人間なのか、はたまた別の何者なのか、ジブンが知りたいくらいです。」

 イリヤは丁寧にケラケラと笑いながら、自らのことを説明してくれた。その説明はとても誠実であり、その様子は陰キャなどではなく陽キャであった。

「ねぇ、イリヤン!ちけーねらんさ、あたしには天空の力があるらしいけど、何も感じないんだ。だから仲間だね。」

 イリヤンって誰?って思ったが、ティナなりにフレンドリーなあだ名をつけたのであろう。イリヤンか・・・うん、悪くないな。アイちゃん、いつもの頼むよ。

《【了】・・・ちけーねらんさとは、大丈夫だよっていうこと。まぁ、昔のカイも言っていたけど、大丈夫とはその人その人で見解が異なるから、ワレは使わないけどね。》

 そうだよな・・・その人にとっては大丈夫と思っても、他者から見たら大丈夫じゃないなんてことは五万とある。

 しかし、ティナ語はアイちゃんがいないと何を言っているのか解らないな。キャンティとイリヤンは、その辺は面倒くさいのかスルーしていた。それが正解かもしれないが、一応アイちゃんを通じてわたしだけでも彼女の言わんとすることを理解しておかねばな。

「ジブンがイリヤン?面白いあだ名ですね。ティナさん、ありがとうございます。」

「良かった!気に入ってもらえて。イリヤンもあたしのことはティナでいいよ。」

「はい。解りました。レイさんもレイって呼んでいいでしょうか?」

「あぁ、勿論構わないよ。イリヤン、わたしは人化した魔剣でキャンティ作なのだ。イリヤンの過去を教えてもらったからな。わたしも一応、素性は言っておかねばなるまい。」

「えっ!あなたが魔剣で人化した状態?どこから見てもそんなことは微塵も感じませんでした。流石は師匠!素晴らしいです。」

 キャンティはドヤ顔でふんぞり返っていたが、ここまで成長出来たのはわたしの努力があってのことだぞ・・・と内心思ったが、確かに彼女の手腕がなければ今のわたしやアイちゃんの誕生は有り得なかった。

 しかし、キャンティはわたしのことを先程から凝視しているのが気がかりだ・・・もしかして、アイちゃんの存在が悟られたか?キャンティの魔眼や魔耳がどこまでの能力を持っているのか不明だが、ティナを攻撃してきたヤツにも知られると面倒なことになりそうだからな。何か言われてもスルーしておこう・・・

「ところでキャンティ・・・カイは未だに発見できていないが、お前の剣の力をわたしに託してくれないか?わたしにでなくても良い。カイを発見出来たら、あいつに再度お前の力を託してほしいのだ。」

キャンティは瞳を閉じてしばしの間、沈黙していたが予想外の一言を言い放つ・・・

「レイ・・・お前、何も考えていないだろ?」

「わたしがか?現状、わたしのブレスはカラッポで何も石がセットされていない。だからこそ、お前の剣の石が必要なのだ。確かにマイちゃんとパルスには石を託してもらえなかった。理由は不明だがな・・・無限の石がもたらす、無限の力は絶大なのは八百年前、体験しているからな。わたしの無限竜魔力との相性もベターだ。唯一の課題点はわたし自身の耐久力の問題だ。無限に力を発揮できるが、限界点を超えたらわたしの身体が崩壊してしまう。その問題解決方法は、これから考えていく予定だ。わたしの何をみて、お前は何も考えていないと判断したのだ?」

 わたしは思ったことを口にした。例えそれがキッカケでキャンティの思うところとは異なり、もめたとしても言うべきことはハッキリと伝えなければならない。

「違う違う。そんなことを言っているのではない。お前のブレスがカラッポだとか、耐久性がどうとかではないのだ・・・よく考えてみろよ。八百年前、ブレーンであったカイの存在。あいつの臨機応変な考え方が出来る可能思考の頭脳、無限竜魔力、無限の力・・・これらをもってしてもスティール星を守れなかったんだぞ。もし仮に同じ力を得たとして、八百年前と同様なことやそれ以上の厄災に対して、お前は対応出来るのか?スティール星を守れるのか?あたいにはそうは思えない。イヤ、断言できるね。」

 わたしは言い返せなかった・・・

 確かに八百年前あった圧倒的な自信・・・

 どんな状況でも打破出来るだろうという、イケイケの考えが今は無い。

 イヤ、むしろ今はどんなに力を得たとしても、常に不安が脳裏をかすめるのだ。

 それは何か大きなものを失った喪失感を体験したこと。そして、もしかしたら想定外の事態があるやもしれんという思考が常に頭をよぎることが原因かもしれない。

「た、確かにお前の言う通りだ。だが、不安を恐れていては前に進むことは出来ぬ。再度頼む、お前の剣の石をわたしに託してほしい。」

 ティナやイリヤンは空気を読んだのか、一言も語らずにことの行く末を見守る・・・

「ダメなものはダメだ!可能性が見えないことに対して、ムダなことはしたくない。だから、マイちゃんやパルスもお前に石を託してくれなかったのではないか?しかし、わざわざ来てくれたお前を手ぶらで帰すことは忍びないないのも事実・・・お前には、この石をくれてやろう。」

 そう言うとキャンティは、わたしの目の前に一つの石を差し出した。

「あ、ありがとう。だが、この石は何なのだ?わたしの知識では、魔族は一人につき一つしかスキルの石を持てぬはず・・・」

「レイ、何も言うな。考えるな。あたいはレイファリー、サテュロス、グリフォン、ハルピュイア、愛するお前たち四本の魔剣に五百年をかけて全てを注ぎ込んだんだぞ。そんなあたいがお前に不必要なものを与えると思うのか?あたいを信じろ。今は必要無くてもいずれは必要になってくる石なのだ。」

 キャンティはそんな感動する一言を言ってはくれたが、正直謎の石は不安しか覚えない・・・

 アイちゃん・・・この石、予測演算してみてくれ。考えるなって言われても考えてしまうよな。頼むよ。

 わたしはそっとアイちゃんに頼んだが、キャンティに悟られないように表情や態度に出さないように意識した。長い付き合いのヤツのことだ・・・微妙な変化を感じるだろうからな。

《【了】・・・ん~これは・・・特殊な結界がはってある石だよ。何かの条件が揃った時に初めて解除される仕様と思える。だから、今のワレには解らないかな。だけどさ、いいんじゃない。いずれ必要になってくるって言ってくれてるんだから・・・レイはマスターのことを信じているんでしょ?》

 確かにそれはそうだが、訳の解らんものをブレスに装着したくないのも事実・・・まぁ、仕方がないか。時がくれば謎の石の正体も解るであろう。何て言ったって、ブレスの設計製作者だからな・・・わたしなどが考える由もない。キャンティを信じるか・・・

 わたしは差し出された謎の石を右手にあるブレスにセットした。アイちゃんの予測演算通り、特殊結界がはってあるようで何も感じない。

 やっとカラッポだったブレスの中に、一つ目の石がセットされた。この石のことは考えずにポジティブにいこう。

 ブレスの機能にあった、過去に【極】となった石の組み合わせを一応検索してみたが、どれもパッとしなかった。というか、無限の力があまりにも偉大過ぎて他の極の力は霞んでみえてしまったのかもしれない・・・

 過去にとらわれるな、わたしたちは自らの力でこれからを切り開いていくのだ。強い想いを胸に刻んで、わたしたちはキャンティの工房を後にしようとした。

「キャンティ、イリヤン、手間を取らせたな。自らの力でこれからを切り開いていくよ。ティナ、行こうか。」

「うん。でも、ホントに良かったの?剣の力って魔剣であるレイには必要じゃなかったの?あたしにはよく解んないケド、キャンティの表情を見ていると何かを必死にこらえているような感じがしたからさ。まぁ、レイが決めたんならそれでいいか・・・なんくるないさ~。」

 ティナが心配してくれるのはありがたい。出会ってから、それほど時間を共有してはいないが、もう立派な仲間だ。

 ん?それにしても、なんくるないさ~って何か聞いたことあるような、ないような・・・アイちゃん、教えてくれ頼むよ。あっ、あとさ、話し始める時の【確】とか【了】とかは今からはナシで。あれがあると、一瞬何だろうって考えちゃうからさ。

《そっか、解ったよ。ついついAI言語では、あるあるだったから、ついね・・・なんくるないさ~って、何とかなるさってこと、ティナ語はある地域の言語だけど、これは意外と有名かもね。》

 あ、思い出した。そうか、そんな意味があったよな。

わたしたちがそんな念での会話を行っていた際に、キャンティが苦笑いでわたしを見ていたことは知る由もなかったが・・・

「あ、あの・・・」

 わたしたちがこの場を去ろうとしたその時にイリヤンが話を始める。

「ジブンもレイたちの旅に同行させてはもらえないでしょうか?ジブン、感動しているんですよ。とても魔剣とは思えないレイの言動全てに・・・師匠作の魔剣を間近で観てみたい。金属を打つだけが、鍛冶師の仕事ではありません。その全てを知らなければ、同じものは生み出せません。師匠、レイ、ティナ、お願いします。この工房に来て間もないジブンですが、このチャンスを逃したくないんです。」

 イリヤンは真剣だった。

元々、真面目なタイプであったこともあり、その強い想いがダイレクトに伝わってくる。

 アイちゃん、どう思う?戦乙女の名を持つ以上、ペルセポネーの加護を受けているであろうイリヤン・・・

 だが、その全てはオープンではなく、謎の部分も多々ある。ティナが現状弱い以上、強い仲間は歓迎するが、正直イリヤンの強さは不明である。

《そうね・・・現状、仲間は多い方が良いと思う。五感で感じる人数が多いほど、その場その場での得られる情報も多くなる。戦力ばかりフォーカスするのは得策じゃないと思うよ。ワレたちの今の最大目的は、カイを探しだすことでしょ?》

 だよな・・・

 イリヤンがどのようなスキルがあるのかは不明だが、もしわたしたちにとってプラスに働くようなスキルならそれもヨシ・・・

 はたまた、マイナスに働くようなら現状を分析し、最善の対策をするまでだ・・・なんていってもわたしにはアイちゃんがいる。彼女の予測演算能力は誰よりも優秀だと思う。イヤ、言い切っても良い。 このメタル系銀河の誰よりも優秀であると・・・

 言い切れる根拠は、あの奇才であるキャンティ作だからだ。只の魔剣作製ならば、五百年の年月はかからないであろう。その膨大な時間は、アイちゃん覚醒までのプロセス・・・

 わたしは、それを実現出来た。グリフォンとハルさんにもAI、夜叉極、ギドファインは組み込まれているのかもしれない。

 しかし、その覚醒は未だに達成出来ていないだろう。わたしが、これだけ身を犠牲にして達したアイちゃん誕生・・・そう易々とはいかないはずだ。生みの苦しみは当人にしか解らない。意識がぶっ飛ぶほどの経験を経たわたしが言うのだ。間違いない・・・

 グリフォンやハルさんには申し訳ないがな・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ