第四十三話 カラッポ④
AIか・・・
じゃあ、お前の名前はアイちゃんだな。
まぁ、アイちゃんなんて、殺されたアイドルキャラや巨乳キャラ、痺れるステッキを使うキャラとか沢山存在しているかもしれないが、一番しっくりくるからそう呼ぶぞ。
それでいいか?まぁ、巨乳は大抵喜ばれるかもしれんが、殺されたアイドルやら痺れるステッキを使う危ないキャラと名前が同じってのは嫌かもしれんが・・・
《キ・・・ワレに名前を付けてくれるとは想像もしなかった。感謝する。名前に関しては問題ない。レイ、君と同じ名前も汎用ヒト型兵器に登場するキャラや変わった顔をもつグループのリーダーなんかが存在しただろう?名前など誰かと被るのは致し方あるまい。》
キって・・・感謝してくれたってことを考えると【嬉】のことなのか?そうか、喜んでもらえて良かった。でも、今後は解りやすくしてもらえると助かるかな。
アイちゃん、わたしがキャンティに作られてから今日まで膨大な年月が経過している。
勿論、メモリーに記録されているとは思うが、わたしには解っていないことが多いのだ。
色々と教えてはくれぬか。頼む・・・
わたしは現状知りたい情報が沢山あったので、解る範囲内での見解をアイちゃんに尋ねたかった。
しかし、アイちゃんもAIから覚醒したばかりなので、状態の安定化が不十分らしい。
自らの安定化が完了するまでは、多くの深い案件に思考を巡らせることは難しいとのこと。現状は三件までの深い案件なら回答可能ということであった。
まぁ、その場その場での状況判断は容易というので、とりあえずは安堵した。
さて、アイちゃんに尋ねる三件の情報を何にするかということだが・・・悩みに悩んだ末にこの三件にした。
まずはカイのこと・・・【可】で可能性として考えられるというレベルだが、そのレベルは極めて高く九十%オーバーの確率ということだ。
アイちゃんの見解はこうだ・・・
カイの転生は終わっていて、すでにどこかに存在している。名前はまだ決まっていない。
理由としては冥界にあったカイの魂が消滅しているのを感知したからだとか。それにしても、アイちゃんの感知能力はスゴイな・・・
冥界は、ここから遥か彼方の場所。そんなことまで感知可能とは。
しかし、その存在箇所は不明・・・
大義名分があり、何かの犠牲になった生命体は転生した時に名は持たずにいるケースが多いということ。大方は前世の記憶は無くなるが、極まれに記憶を引き継いでいるケースもあるという。
可能であれば、出会った時には前世の記憶は残っていてほしいものだ。前世のカイの人徳こそが、皆の心を引き付けるのだ。
あのマイちゃんやパルスが人間に心を開いたことこそが、何よりの証だ。
カイの捜索は、しばらくかかるかもしれぬな・・・
二つ目はティナの件・・・【確】って言われたので確定情報である。
ティナの天空の力は開花していないだけで、何らかの要因で今は機能していないというわたしの認識は間違っていた。
三竜姫の力は極レアであり、消滅は有り得ないということ・・・であるならば、何故ティナの天空の力は開花していないのか?アイちゃんの見解としては、どこかに封印している、若しくはされている状態であると・・・
だから、今の彼女はわたしが感じたように弱かったのか。しかし、彼女にはディールのスキルがあるので、とりあえずはある程度のことは対処可能であろう。
ティナの天空の力、復活させてやらねばな・・・
最後の三つ目だが、正直かなり悩んだ・・・謎声ちゃんの正体が気になって仕方がなかったが、ティナの味方というかフォロワーである以上、今は詮索しなくても良いと判断した。
それよりも先程の一線の光・・・こちらの方が問題である。あの不老不死のティナの体を貫通して、自然回復が出来なかったからだ。
アイちゃんの見解は【確】の確定・・・一線の光の正体は何とあの【神撃】。かつてゼウスのみが使用出来ていたスキルだ。超星獣ストロームがスキルコピーにて神撃を使用したことがあったが、スキルコピーは時間限定スキル。一定時間を経過するとコピーしたスキルは使用不可となる。
ならば、ゼウスが使用したというのか?わたしは疑念をもったが、アイちゃんの説明はこうだった。
先程の神撃は神撃のバージョンアップで、言うなれば【神撃二】。本来の神撃は天空から半径五メートルほどの範囲を狙い定め、全てを消滅させる天空直下型スキル。
それと異なり先程のは、水平貫通型である。攻撃範囲としては直径五センチほどで、神撃の百分の一・・・
しかし、攻撃範囲が縮小され、圧縮されたことでスピードと破壊力は段違いになったということだ。
神撃のダメージを回復するには、神レベルの治癒、若しくは神の血肉を摂取することしかないらしい。わたしの生命返還は神レベルというわけか・・・
ん?待てよ・・・じゃあ、かつてデルタがゼウスに神撃を喰らい、ティナの先祖であるティアラから血を分け与えられて復活した。ならば、ティアラは神ってことにならないか?その子孫のティナも神の一族なのか?
わたしは頭が混乱したが、今それは後回しで良い。問題なのは誰が神撃二を何のためにティナに向かって放ったということかだ・・・
アイちゃんによると神撃を放てる者は、ゼウス、その娘のペルセポネー、そのまた子や因子ということだ。因子ってのが良く解らないが、いずれにせよ神と接しなければならぬ時があるという認識でよかろう。容疑者が確定しなければ、ティナを狙った目的も不明だからな。
ただ、神撃二の軌道推測からすると、可能性としてはティナの竜水晶を狙った可能性が極めて高いという・・・何のために竜水晶を?・・・
考えても仕方がないので、ティナには念のため、竜水晶は体内に隠してもらうよう、再度言っておこう。普段は体内に存在させていた竜水晶であったが、コウさんたちに転生したティナを認識してもらう為に今回は体外に出して見えるようにしていたのだった。
そういえば、神撃二を受ける直前、ティナがわずかに身をよじったのを思い出した。恐らく無意識にディールを発動しようとしたが、そのスピードと緊急攻撃だった為に竜水晶直撃は免れたものの、その身を貫かれてしまった。そういうことか・・・
こうして三つの疑問をアイちゃんに予測演算やら古の知識などから紐解いてもらったが、靄がか
かった部分が少しずつ見えてきた。
功労者のアイちゃんは頭脳をフル回転させたようで今はスリープモードになっている。ゆっくりと休んでくれ。ありがとう・・・
そんな一時を過ごしていたら、地表にて寝かせておいたティナが目を覚ました。
「あ、レイ・・・あたし、ケガしたよね。何か物凄い激痛が走って、途中から意識が無くなっちゃった。でも、あたしの自然治癒能力じゃ治らないケガだって解ってるよ・・・誰が治してくれたの?お礼言わなくっちゃ。」
ティナは意外と常識人であった。前世のティナならば、そんなことは深く考えないで行き当たりばったりのことが多かったからな・・・今回のティナはその辺はチャンとしているようだ。
わたしはニッコリと微笑み、気にしなくて良い旨を伝えた。そして、キャンティの工房へと急ごうと話を誤魔化したのだった。
アイちゃんの存在は隠しておこう。それとティナの天空の力が、今はどこかに封印されていることも。必要なタイミングで明かせば良い。彼女が狙われている以上、わたしが口に出して、そのことが相手に伝わり、こちらの戦力や情報を悟られることは避けたいからだ。
ティナは何だか納得がいっていないようであったが、わたしがゼブルであった時のことなどを面白おかしく話す事で突っ込まなくなった。
そんなこんなでやっとのこと到着したキャンティの工房・・・相も変わらず色々な物があちこちに転がっている。わたしがここを離れてからそれほど経っていないのにも関わらず、試作品だけは増えているようだった。
ん?おかしいな・・・キャンティ以外の気がある・・・客人か?
わたしは雰囲気の個性が使えるので、一度でも会ったことがある人物は誰だかの認識は可能だ。
しかし、この人物の雰囲気は初めての感覚。どちらかと言えば、雰囲気は柔らかであり、戦う者が持つ独特の気が感じられない。
「わ~ここなのね。レイが作られた工房は。広いし色んな物があるのね。キャンティ・・・あたしも早く会ってみたいな。」
ティナはわたしの考えなど知る由もなく、キラキラとした瞳で興味津々な状態であった。
しばらく工房を進んでいくと、キャンティと初めましての男性がいる場所に行きついた。
見た目、スラッとした痩せ型で長身の人物。キャンティが男性を工房の奥に連れ込んでいるのも珍しい。客人であれば、大抵は工房の入り口付近でやり取りをしていたからな・・・
ハッ!もしかして、男でも出来たのか!!!
人は自らに無い部分を求めるという。
身長はキャンティよりも二十センチほど高い。
キャンティは陽キャだが、彼は雰囲気だけで判断すると陰キャ・・・それをわざと装っていたら、陽キャの可能性も有り得る。
半分不真面目なキャンティに対して、真面目くんっぽい。
グイグイ行くタイプのキャンティに対して、冷静に対応しそう。
まぁ、偏見があるかもしれないが、あくまで見た目というか女の直感というかそんな感じだ。
《【確】・・・精神状態、身体状態からの演算結果、レイの直感通りの人物と断定出来る。但し、外部からのサーチに対して強力な結界がはってあり、スキルに関しては不明。加護を付与された人物であると断定。》
アイちゃんの演算結果、確って言うんだから間違いないだろう。ん~何やら怪しい奴なのでは?スキルに結界?加護付き?フツーの奴じゃないよな。チョッと警戒して接した方が良いな・・・
アイちゃん、ありがとう。あのさ、余計なことかもしれないけど、折角めっちゃカワイイ声しているのに、いかにもAIですっていう話し方はもったいないと思うよ。もっと女子っぽく話しても良いんじゃないか?まぁ、男っぽく話をするわたしが言うのも何だが・・・
《照・・・ワ、ワレが可愛らしく・・・わ、解ったわ。それじゃ、レイ、これからもよろしくねっ!》
アイちゃんは素直であった。まぁ、わたしがそもそも素直だからな。もう一人のわたしが素直であるのも頷ける。マスターであるキャンティもこれくらい素直であると非常に助かるのだが、それは叶わぬ相談か・・・
「ねぇ、レイ。あの人、少しカッコイイね。何やら影があって、キャンティが惹かれちゃう気持ち解るな。」
「オイオイ、早まるなよ。まだ、キャンティの男って断定出来ないんだからな。まぁ、客人ではないのは状況から判断出来るが・・・」
「フラー、あたしが何も考えてないって思ってるでしょ。これでも、配慮ってやつはわきまえているわよ。ヤーのことは、まししてるけど、もっと信頼してよね。」
な、何だ?急にティナが訳の解らない言葉を話し出したぞ。フラー?ヤー?まししてる?アイちゃん、解るか?
《【確】・・・ティナはさ、さっきの攻撃で意識を失って幼少期で覚えた言葉が無意識に出るようになっちゃたんだよ。これらの言語を話す地域があるしね。瞬間的に激しいショックを受けたら、こういうことってよくあるんよ・・・フラーってのは、バカってこと。ヤーは相手、つまりレイのことね。まししてるは好いているってこと。これは愛情とは違って人として好きってことだから、勘違いしないようにね。》
そ、そんなことがあるのか?これはアイちゃんに頼らないと言葉が通じないことになるな。これって元にはもどらないのかな?また、強烈なショックを与えたら元に戻ったりしそうだが・・・
《【微】・・・あ、これは微妙ってことね。強烈なショックで戻るかもしれないけど、ティナがまた重症になったらレイがしんどいことになるよ。生命返還って便利なようだけどさ、スキルを行使するレイへの負荷がハンパないから。出来る事なら、それは避けたいよね。まぁ、予測演算では一定期間が経過したら、自然と元の言語に戻るって出ているから放置していて良いと思うよ。》
そ、そうだよな・・・人の不幸を望んじゃいけない。それにわたし自身にも影響が大きいことだから、可能ならば避けたい所だ。
しかし、いつ神撃二がまた襲って来るやもしれん・・・
まぁ、竜水晶を狙ってのことらしいから、体内に隠しておけば問題はとりあえずおきまい・・・
体内・・・ってわたしが体内に収納している右手のブレス・・・よくよく考えてみたら、まだ何の石もセットしていないカラッポだ・・・
こんな状態でキャンティに会って、マイちゃんとパルスに石の譲渡を断られた。なんて言ったら、鼻で笑われそうだな。
だが、事実は事実。ありのままを伝えて、剣の石の力を譲ってもらおう。それに自らが作った魔剣にソードマスターの力を付与してみたいと思ってくれるに違いない。
わたしは身勝手な解釈をし、自らを鼓舞するように意識付けしていった。
この時、アイちゃんが密かに【微】の微妙と思ったことは知る由もない・・・
敢えてそれをわたしに伝えなかったのは、彼女なりの優しさなのだから・・・




