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二人のブレス ゼータの鼓動  作者: ビッキー


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第四十三話 カラッポ②

「ところでそちらの女の子は?わたしたちは滅多なことでは人前に現れないので、初めましてですよね?」

「あぁ、こっちはティナ。転生したんだよ。もっともカイは転生したと推測されるが、未だに発見出来ていないがな。」

 わたしの説明を聞いて、コウさんとマイちゃんは驚きの表情を見せた。

「まさか、この子がティナさんだったとは・・・転生したら気の質が違うのはもっともですが、天空の力を正直、微塵も感じませんでしたから解りませんでした。」

「そうなのだ。天空の力はまだ目覚めていないのか、あってもくすぶっているだけなのか・・・だから、今の彼女は弱い。しかし、何故か対応力に関しては突出したものを持っている。」

「そうですか・・・でも、ティナさんだけでも会えて良かった。わたしはコウ、こちらはマイです。前世のあなたとは友達でした。もっとも、そんな記憶は無いでしょうがね。」


 ティナはキョトンとした表情で話を聴いていた。彼女としてはそんな記憶は皆無なので、話についていけないのであろう。しかし、マイちゃんは未だに心を開いていないのか、終始無言である。

「コウさん、マイちゃん、実は色々と聞きたいことや頼みたいことがあって、今回やってきたのだ。」

「そうですか。わたしたちで答えられることであればご質問にはお答えします。もしかして、頼みとは光の石を託してほしいということでしょうか?残念ですが光の石は訳あって今、誰にも託すことは出来ません。」


 そうきたか・・・流石はコウさん。

 わたしが考えていたことを先読みで言われてしまうとは。

しかし、想定していたとはいえ、いきなり断られてしまったな・・・ここはどうにかせねば。引くに引けない理由がわたしにはあるのだ。

「最初に質問なのだが・・・ティナには、とある人物から謎の声が聴こえるらしいのだ。その声は名も名乗らずにアドバイスというか、指針らしきものを伝えているということだ。その声は透き通っていて、七~八歳位の少女の声だと・・・ズバリ、声の主はマイちゃん。念波でティナと話をしているんじゃいかとわたしは推測したのだが、違うだろうか?」


 コウさんは沈黙していた。わたしが質問を投げかけてからしばらくして、マイちゃんが初めて口を開く・・・

「それは、私ではないよ。確かに私の声は透き通っているのかもしれない。でも、ブレスという通信機器もない私に念波は出来ないよ。」

「そうですね。ティナさんは武闘家ではないんでしょ?ならば、ティナさんもブレスは所有していない。通信機器もない二人に念波は出来ないのではないでしょうか?まぁ、魔王クラスの人物やある特定の者は、念波を可能とするらしいですがね。」


 やはりそうか・・・そうだよな。会ってもいない転生したティナの心に介入出来るのって、デタラメな魔王クラス以上の存在や特定の者なのかもしれないな。

 そうすると、七~八歳位の声を出す魔王か・・・待てよ、別に魔王でなくても精霊王や冥王、神という線も無くはないよな。まぁ、謎声ちゃんの正体は今解らなくても、そのうちに判明するであろう。それよりも・・・


「解った。その件に関しては今急ぎで知りたいという訳でもなかったが、もしかしてと思って聞いたまでだ。だが、わたしの頼みはコウさんが先読みで話してくれた通り、光の石のことなのだ。どのような問題があって、光の石を託せないのか解らない。しかし、カイが復活した際には再度、彼に光の石を託してはもらえないだろうか?若しくは、わたしに光の石を託して欲しい。」

 

 マイちゃんは口を開かない。代わってコウさんがわたしに対応してくれた。

「レイさん、カイさんが復活しても今はムリなのですよ。代理人のレイさんに対しても、同様に応えることは出来ません。恐らくあなたのことです。このメタル系銀河の現状を改善する為に再度、無限の力を得ようとしているのではないでしょうか?オゾン層の破壊、温暖化、地殻変動、異常気象、それに伴っての各地で勃発している暴動・・・問題点を上げたらキリがありません。だから、あなたは自らを赤と青の瞳に形態を変えたのではないですか?赤の一撃と青の二撃の為に・・・」


 コウさん・・・なんて洞察力、考察力の鋭い人なんだ。頭が下がるが、光の石の件は納得がいかないのも事実。理由を聞かねば、やはり引けない。

「コウさん、流石だね。全くもってその通りだよ。わたしはこの異常環境になりつつある。いや、もうなっているといっても過言ではあるまい。このメタル系銀河の環境を改善したい。全ての生命体が安心して暮らせる平和を取り戻したいんだ。その為に光の力を発揮出来る光の石が必要だったのだが、どうあってもムリなのか?」

「えぇ、残念ながらその案件はお断りさせて頂きます。お役に立てず、申し訳ありません。理由は申し上げられませんが、どうかお引き取り下さい。」

 コウさんは頭を深々と下げ丁寧に対応してくれた。ここまでキッチリとお断りされては、こちらも考え方を割り切るしかあるまい。

「解ったよ。ありがとう。理由は是非知りたかったが、そうもいかないようだしな。でもさ、マイちゃんとコウさんはいつまでも友達だよな。もし、カイを発見出来たらここに連れてくるよ。また皆で魚を捕ったり、きのこパーティーをしような。」

 わたしはティナを再度お姫様抱っこして、その場を去った。

「ねぇ、こんなにあっさり引いて良かったの?光の力って、ゲットするのは確かに難しいのは解るけどさ、もう少し粘っても良かったんじゃないかな?」

 ティナはそう言ったが、確かに必須な力だからこそもっと粘っても良かったのかもしれない。

しかし、あの頭の切れるコウさんが断ってきたのだ。あんなに深々と頭を下げて・・・

 よっぽどの理由があるのだろう。コウさんの思考力よりも劣るわたしなどがこれ以上の詮索をする必要がない。そう決断付けたのだ。

 まぁ、目標設定がしっかりと出来ていれば、やり方は無限に存在する。一つのことに執着していては大きな問題に気付かないともいえよう。

 木を見て森を見ず・・・そういうことだよな、コウさん・・・


 無限の力を得ることは現状叶わなかったが、単体での音の力、剣の力は何がなんでも是非とも欲しい。

 音の力は超音波を生み出し、攻守において様々な状況を好転させることが可能だからだ。

 まぁ、現状のわたしは両手の手刀を用いて一部の超音波を発生させることは可能。

 しかし、最速で様々な音波や超音波を発生させることが可能な音の力には勝ることは出来ないからな。


 音の石を持つパルスの元へと向かったわたしであったが、光の石同様に申し出を却下されてしまった。

 却下の理由は、マイちゃんが認めないであれば自分も石の力を託すことは出来ないと・・・

 わたしはその言葉を耳にした時に思った・・・

《子供か!!!》と・・・

 誰かが認めなければ、自分も認めないなどと理由が子供じみている。パルス、お前自身の人を見る目は皆無なのかと言いたい。言いたいが言えない・・・

 あくまで、わたしは今回お願いする立場。無理矢理、音の力を得ても力は発動しないことは重々承知している。

 それがブレスというアイテムの特性であり、双方同意の元で初めて力の発動が可能なのだ。


 仕方がない。全くの想定外であったが、ここは冷静になっていこう・・・

 ティナはキョトンとして何も言葉を発しなかった。ブレスのことや魔動石のことに関してはほとんど無知であり、わたしと行動は共にしているだけだからだ。

 仕切り直しだ。まずはわたしの生みの親、キャンティの元へと戻り、剣の石をいただこう。

 現状、わたし自身での剣技はいくつかあるものの、ソードマスターであるキャンティの足元にも及ばない。


 無限竜魔気を駆使しての剣技はそれ相応のパワーを発揮出来る・・・

 剣の道は深く険しい。ウン千年という長きに渡り時間をキャンティと共有しているが、未だに奥義やアルティメット奥義をほとんど垣間見る事が出来ていない。

 剣技はパワーだけではないのだ。スピード、スキル、瞬時の判断力、それ以外でも言葉では表現不可能な様々なファクターが存在する。

 それらを体現できてこその奥義やアルティメット奥義・・・そう易々と体得不可能なのは理解出来る。

 一度目にすれば、わたしの中のAIがある程度の情報を収集し、近い状態での剣技を再現することが可能である。

 しかし、キャンティはそのことを知ってか否か剣技という剣技をほとんど見せてくれない。いや、わたしの作り手がキャンティなのだ。それを知っていて剣技を見せてくれていないというのが正解であろう。

 そこまでケチにならなくても、せめてわたしには情報開示してくれても良かろうに・・・


 そんなことをぼんやりと考えながらわたしとティナは魔界へと入り、キャンティの工房へと向かっていった。

 しばらく進んでいくと、どこからともなく一線の光の矢がわたしたちの付近を通過した。

 それは音もなく、瞬きの時間よりも短かった・・・

 何だったのだ?今の光は・・・

 わたしがそう思うや否やティナの呼吸が乱れるのを感じたのだった。

「あっ!!!」

 普段は明るく元気なティナであったが、吐血を行い苦悶の表情の彼女・・・

「ティナ!ティナ!おい、しっかりしろ!」

今の一線の光が彼女を貫いたというのか?

 只の光ではなかった。何かを秘めた光、わたしが直撃を受けた訳ではないので、具体的なことは何も解らないが・・・

「あ~あ、外しちゃったか。折角のチャンスだったのにな・・・またの機会にしよっと。」

遠方では、そんな独り言があったのをわたしたちは知る由もなかった・・・


 まぁ、これしきのケガ、ティナならすぐに自然治癒出来るから問題ないか・・・

 不老不死・・・わたしも不老不死だが、何とも便利な体質だ。治癒などは考えなくて良いのだからその点は楽なのだが、彼女の苦悶の表情がナカナカ癒えないのが気になる。

 通常であれば瀕死の状態でなければ、ものの十秒もあれば自然と完全治癒されるものだ。

 しかし、今の彼女は全くその気配が無い・・・イヤ、むしろ状態は悪化しているように思える。

「ティナ、お前のケガ、自然治癒出来ないのか?痛みは消えないのか?」

 わたしはティナに声をかけたが、返事は一向に無い。そして、彼女はそのまま意識を失っていった・・・

 わたしは危機感を覚え移動を停止し、ティナをそっと床に降ろした。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 次第に彼女の息遣いが荒くなり、傷口からの出血も止まらない。額には汗が大量に吹き出していて、状態は尋常でないと判断出来る。


 ナゼ自然治癒出来ないのか?

 そんなことを考えながら、わたしは彼女の手をギュッと握りしめる。

 何か対策は無いのか?こんな魔界の辺境の地で治癒が出来るような素材は入手出来まい。それを入手するにも移動する時間的余裕もないだろう・・・

 わたしは考えた・・・

 そういえば、以前聞いたことがある。ティナの先祖であるティアラが魔人デルタの瀕死の状態の時に 自らの血を飲ませ助けたことがあると・・・ 

 わたしの血を飲ませてみるか?わたしもティナとは異なる種の不老不死の身・・・ワンチャン助かる可能性がないともいえないが、無限竜魔力の影響がある血を他者に与えて拒絶反応が無いと断言は出来ない。例えるなら、通常の血が水でわたしの血は油なのだから・・・

 リスクがあることは今の状況で行わない方が賢明であろう。他に方法はないのか?考えろ、考えるんだ・・・


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