第五章 オジン……その2
二度目の高校で、僕は初めて高校二年生になった。
太郎は大学の野球部でもレギュラーとなり、僕は試合の応援に駆け付けた。
透は都市部の大学から長期休暇の度に帰ってきており、聡子とは遠距離だが仲良くやっているようだ。
理香は語学を磨くために、夏休みを利用してカナダへ短期留学しているらしい。
僕は学校に通いながら、屋根瓦の仕事にますます打ち込んでいった。
そして年が明けると、僕宛に一通の白いキレイな封書が届いた。
封書の中身は、透と聡子の結婚式の招待状だった。
二人の結婚にも驚いたが、もっと驚いたのが挙式はハワイだというのだ。
招待状には、透が手書きした便りが添えられていた。
今、聡子は妊娠していること、短大を卒業してからは透の家に入って出産に備えること、自分は大学を卒業するまで学業に専念すること、卒業後は家業の美術商の会社に勤める、ということが綴られていた。
透の実家の経済力なら学生結婚でも大丈夫そうだな、と読んでいると、二人の希望で披露宴では友人代表としてスピーチをお願いしたい、と書かれていた。
びっくりして挙式の日程を見ると、三月の下旬だった。
あまり先の日程だと妊婦が飛行機に乗るのはよくないらしく、聡子とお腹の子のことを考えて決めてあるらしい。
しかも旅費から宿泊費用まで、全額ご両家の負担と書いてあった。
飛行機のチケットやホテルの予約をするから、早めに返事が欲しいそうだ。
もちろん駆けつけて祝ってあげたいのは山々だったが、しかしハワイまで行ってスピーチ、というのには参った。
親方に相談すると、休んでもいいから行って来いと言う。
太郎にも招待状が届いたが、大学野球の春季リーグ戦の前だから欠席すると言った。
二人が落ち着いたら仲間内で祝ってやろうぜ、とも言っていた。
僕は考えた挙句、招待状の『欠席』に丸を付けて、お祝いの言葉を添えて返信した。
しばらくすると、困ったことが起こった。
招待状の返信を受け取った透からまた手紙が届き、現地への不参加は残念だけど、手紙か軽いメッセージをお願いできないか、と書いてあった。
「二人に手紙なんて、どんなことを書けばいいんだろう?」
結婚式って、たしか言っちゃいけない言葉とかあるんだよな……。
その日の授業が終わり、教室の自席で僕が透の手紙を手にしたまま深いため息をついていると、純が横からヒョイと手紙を取り上げた。
「ため息なんかついて、なに読んでんのさ」
僕は純に、返せよ、と言おうと思ったが、それどころではないなと、純に構わず頬杖をついてお祝いの手紙のことを考えていた。
「へぇぇ、いいねぇ、おめでたいじゃんか。手紙、書いてやるんだろ?」
「手紙ね、手紙……、手紙ってどんなこと書けばいいのかなって」
「どんなことって、思ってること書けばいいじゃない?」
「簡単に言うね……、それが出来れば、悩まないよ」
「メッセージでもいいって書いてあるじゃん、ビデオメッセージでも送ってやれば?」
「ビデオメッセージ?」
「あたしの友達がビデオカメラ持ってるから、撮ってもらうか?」
そういったあとに、純は何かを閃いた、という顔をしたかと思うとこちらを見て、いたずらっぽくニヤリと笑った。
「オジン、詩を書けよ、詩! あたしがメロディをつけてやるから、オジンがそれを歌え」
「えっ? 詩? 歌? 歌を歌うの?」
「そうだよ、あたしらのバンドが演奏してさ、オジンがその詩を歌う。それをビデオに撮って、披露宴で流してもらうんだよ!」
純はそれが決定事項で、僕にはもう拒否権はないんだと言った。
「決まりね、決まり! で、挙式はいつ? なんだよ、もう時間ないじゃんか。詩、早く書けよ!」
純は一人で納得して、鼻歌を歌いながら教室を出ていった。
僕は教室で一人、詩か、詩ねぇ、とまた考え込んでいた。




