第四章 聡子……その11
四月になって、僕たちは全員、希望の高校へ通い出した。
皆それぞれに新しいスタートを切って、楽しい高校生活が始まったはずだったのに、僕は夏休みに始めたアルバイトを機に、高校へ通う意義を見出せなくなっていた。
二学期になって、学校を休みがちになり、十月には高校へまったく通わなくなっていた。
家にも帰らず、中華料理店でのアルバイト三昧だったある日、透と聡子がふたり揃って店にやってきた。
「最近、どうしたんだ? もうすぐ文化祭があるから、早く学校に出て来いよ」
そう言ってくれる透に、そのうちね、と気のない返事をした。
「みんな待ってるわよ」と言ってくれた聡子と透を見送りに店先まで出ると、透は突然、「あっそうだ、俺たち今、付き合ってるんだよ」と言った。
聡子を見ると、少し恥ずかしそうにして透を見た後、僕に向けてニコリと笑顔を見せた。
仲良く手を繋いで帰っていく二人の後姿を見て、聡子の右手が僕の左手に繋がっていないことに少しの違和感を覚えたような気もしたが、その感覚はすぐに消えた。
それからも、たびたび二人は揃って店に顔を見せにきてくれた。
年が明けて三学期になると二人は、大学受験の準備を始めたのだ、と言った。
透は家庭教師に週三回来てもらっているらしく、聡子は春休みから予備校に通うらしい。
二人は、一年の遅れなんて長い人生じゃ大したハンデにもならないよ、留年してでも高校へ戻っておいでよ、などと僕を心配して気遣ってくれた。
将来を見据え、着々と準備をしながらも友人を気遣える二人を見て、彼らは僕よりも早く大人に近づいていってるんだなと思った。
春になると二人の心配をよそに、僕は高校ではなく少年院にいた。
中学の同級生が抱え込んでしまった火種から起こった乱闘事件の首謀者として、春先に逮捕されたからだった。
僕は、次の年の春に少年院を仮退院して、家に帰ってきた。
もう不良のまねごとをすることはなくなった僕は、高校一年生の夏休みにアルバイトした屋根瓦の工務店で働きながら、次にある定時制高校の受験日に向けて準備をしていた。
同級生は大学受験、僕はまた高校を受験することを、周りの大人たちは応援してくれた。
太郎は地元の大学、透と理香は都市部の名門大学、聡子は地元の短大を受けるようだった。
高校受験の時と同じく、僕を含めた全員が希望する進路に進むことが出来た。




