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あの大きな樹とともに  作者: 三笠 好弘


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第四章 聡子……その1

 君とは幾たび、手を繋いだんだろう。

初めて君と手を繋いだのは、小学校の入学式だった。

入学式では男の子と女の子がそれぞれ背の順で並び、隣り合った者同士が手を繋いで入場した。

僕たちは列の先頭で、担任の先生の後ろを手を繋いで少し照れながら歩いた。

あの時から僕たちは、何度も手を繋いだね。

繋いだ手にそれ以上の意味があるなんて、その時の僕は思いもしなかったんだ。

 小学校の月曜日は、いつもグラウンドでの全校集会で始まった。

学年とクラス別に男女が背の順で並び、校長先生や保健室の先生からの話を聞くために整列する。

「整列」の号令の後、列の先頭に立つものは「前に倣え」では、両肘を直角に曲げて両腰に当てて立ち、「右に倣え」では右腕の肘だけを直角に曲げ右腰に当て、その間隔を目安として隣の列とのラインを合わせる起点となる。

僕の隣で先頭の役割をしているのは、聡子(さとこ)という女の子だった。

聡子の背丈は僕とほとんど同じで、お母さんに結ってもらっているのか、真っ直ぐに伸びた長い髪をおさげやツインテールにしていることが多かった。

聡子の家は、茶の湯で使う一点物の抹茶碗を作っている窯元だった。

陶器を焼く工房は市外の山の中にあるらしく、平日にお父さんは家に居ないらしかった。

一人っ子だった聡子は、休みの日にお父さんに会えるのを物凄く楽しみにしていて、土曜日になると、明日の日曜日にはお父さんにどこそこに連れて行ってもらうんだ、と嬉しそうに話した。

少し気弱で、引っ込み思案のおとなしい性格だったが、僕も似たような性格だったからか気が合って仲良くなった。

 聡子には、理香という幼稚園から仲良しの友達がいた。

長身で手足も長く、スラっとした体躯で運動神経も抜群だった理香は、聡子とは反対に明るく陽気な女の子だった。

クラスで一番背の低い聡子と一番背の高い理香が一緒にいると、クラスの男子たちは自分たちの両親が並んでいるところイメージするのか、女同士なのにアベックや、女同士のくせに夫婦だ、などといって、変だ、変だ、とからかった。

聡子はクラスの男子たちにからかわれると、いつも泣いていた。

その横で理香はクラスの男子たちに食って掛かり、いつも聡子をかばっていた。

聡子は理香に依存している風ではあったが、その関係性は対等なものであった。

お互いがお互いにないものを求めたのか、いや、まだ子供だった二人は理屈ではなく、とにかく気が合ったのだろう。

僕はそんな聡子と理香を、少しうらやましく思いながら見ていた。

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