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僕らの青はめんどくさい  作者: たくあん
不思議少女とオオカミくん
6/6

5.そんな夢の夢の夢の夢の夢

最初は琴音視点。

後に一颯視点になります。

なんてことない日常パート

 どれ……失礼しました。

 とても優秀なオオカミが仲間になりました!

 隣を見れば「俺は今不機嫌です」顔全体で表しながらもしっかりと歩幅を合わせて一緒に登校してくれている番犬が1匹。

 180をきっと超えているであろう高身長にお行儀良く伸びた背筋と、優しい印象を与える整った顔立ちは第一印象からあまり邪険にされることも少ないであろう陽のオーラが溢れ出ていた。(今現在の表情は目を背けて)


「良い朝ですね。一颯さん」


「……ね」


 結局、昨日の1幕により彼は私の手を取り協力することを誓ってくれました。その時に、お願いした事は3つ。

 まず1つ目は登下校中の私を護衛してもらうこと。

 そして2つ目は、私が転校生としてクラスに馴染むまで最大限サポートをすること。

 最後に3つ目は、お互いの秘密を秘密のままでいること。

 私が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に、少し非道ではありますが一颯さんはとっても利用価値があります。そう、あの夜に見てしまった一颯さんの本性は彼が順風満帆な学校生活を送る上で最大の弱点であり、私にとって最高の好機なのです。しっかり喧嘩も強くボディガードとしても使えて、更に学校でも人気者で共にいるだけで生徒が集まってくるような逸材、逃すてはありません。

 ただ予想外だったのは――。




「おーす、一颯」


「あ、おはよ! 今日は遅刻じゃないんだ」


「あはは、うるせー」



「おはようございます! いぶき先輩!」


「おはよう。朝から元気いっぱいだね」


「はい! あ、今日は日直なのでお先失礼します!」



「おはようございます! 先輩」


「あ、おっはー。一颯くん」


「この前はご馳走様でした」




 ――少し人気者がすぎるということです。

 声をかけられた瞬間に百面相のように表情を入れ替えて道行くほとんどの生徒と挨拶を交わしていくのを見て、彼の交友関係の広さに戦慄する。

 本性を知っている私からすればもはや恐怖を覚えてしまうほどですが、まぁ、利用できるところはしっかり美味しく利用させてもらいましょうか。

 彼が何故本性を隠してこうも人気者を気取っているのか、やはり承認欲求から来るもの……? それにしては随分と……。

 おっと、お互いにこれ以上の秘密の詮索は禁止でしたね。気になることがあるとどうも理解するまで気持ち収まら無くなるのは私の悪い癖です。

 彼の横でそんな思考をめぐらせていれば、私が新たに通うことの決まった学校が見えてきます。


「あ! ことちゃん! おっはよー!」


 げっ。


「お、おはようございます。雛菜さん」


 ピクピクと自分の頬が痙攣するのを感じながらも笑顔を崩さないように必死にこらえながら挨拶を返す。何故か校門で待っていた雛菜さんはこちらに抱きつかんばかりの勢いで向かってきた。


「おはよう。雛菜」


 あ、いまこっちにしか見えない角度で嘲笑うように見下してきました。やっぱりこのオオカミさんは性格悪いです。


「ことちゃん。昨日はすぐ学校出ちゃったから、今日は放課後に学校案内! 私がするね!」


「本当ですか? 丁寧にありがとうございます」


 がっちりと手を握られもはや逃げられないという状況でそんなことを言われてしまうものですから、観念してお礼の言葉を述べればそれは嬉しそうに雛菜さんは笑う。

 第一印象から彼女は随分と純新無垢な笑顔で笑う可愛らしいお人だなと思っていましたが、どうやら無垢さに関しては予想以上のようで一颯とはまた違った人気者になり得る性格をしていることが昨日の歓迎会で嫌という程わかった。一颯さんが頼れる王子様タイプなら、雛奈さんは天真爛漫なお姫様タイプ。クラスでも群を抜いた美貌に穢れを知らないピュアな物言いには誰もが彼女の行動を支持せざるおえない。そんなおてんば姫な彼女にどうもお気に入り認定されてしまった私ですが……、一体私の何が彼女をそこまで夢中にさせているのでしょうか。

 1度は、一颯さんよりも彼女を利用することを考えましたが、あの予測の付きにくいおてんばを御せるかと言われれば口をとざさるおえなかったので諦めさせてもらいました。


「もうみんないる?」


「わかんない。私いつもおかあさんに裏門から送り迎えお願いしてるし」


 一颯さんの疑問に雛菜さんが返す。たしか、モデル活動でインターネットに顔が出ている雛菜さんをご両親が心配して登下校は車なのでしたっけ。……()()()()()()()()()


「さ、教室行こ! ことちゃん」


「ええ。……ん?」


「ん? どうしたの?」


 いま誰かに見られていたような?


「いえ、なんでもありません」


 気のせいでしょうか? それにしては随分と突き刺さるような不快感の強いものでしたが……。

 結局、その視線の招待も分からないまま私は雛菜さんに手を引かれて教室まで向かっていくのでした。











「はぁ〜」


「ほふひたほさ。いふき」


 どうしても堪えきれなかったため息に反応して太陽が口いっぱいに食べ物を含めながら聞いてくる。


「あぁ、いや、なんでもない。ちょっとなんか疲れてて」


「あ、ほうなの。なーんだ」


 曖昧で答えになってない回答ではあったが太陽はそれでも納得してくれたようで持っている箸をまたお弁当のおかずに向けて動かす

 現在はお昼の中間休み。対面に座って僕の机に広げた僕の倍はあるお弁当をリスのようにほうばりながら夢中で食べている。その横では、それ以上に大きなおかずのみの弁当と異常と言わざるおえない大きさのおにぎりを片手に桜兎が黙々と食べ物を胃に詰め込んでいた。

 ここにいない雛菜、裕樹と琴音は購買組で別行動。雛菜に嬉々とした表情で連れられていく琴音を見たのが最後だ。そういえば今日家出てから初の別行動だななんて考えながら僕は僕の弁当を食べ進める。


「そういえば2人は今日部活?」


 僕の疑問に桜兎がまっさきに首を縦に振る。

 太陽は? 視線を送れば口いっぱいに含んだ食べ物を頑張ってかみこんでいる。


「あ、ゆっくりでいいよ」


「…………ん、ゴクッ。今日は自主練! でも行こうかな」


「……選択肢があるの羨ましい」


 いつの間にか手にしていた特大おにぎりを消し去っていた桜兎が恨めしそうに喋る。その目はいつもより鋭利なのは気のせいだろうか?


「……え、ごめんなさい」


「怒ってない」


 睨まれた(?)太陽はしょんぼりと口を塞ぐ。桜兎はきっとそんな意図で言った訳では無いけど純粋すぎるがゆえにすれ違う部活組の2人。やっぱこの子達相性悪いのかななんて太陽にフォローを入れようとするが、その前に僕らに向かってくるグループに気づいた。


「よぉ、一颯。ちょっといいか?」


 僕に話しかけてきたのはクラスメイトであるサッカー部員の男たち、その後ろにこの前話しかけてきてくれた特徴的なヘアピンのあかりちゃんも見えた。


「ん? どうしたの?」


「いや、別になんてことは無いんだけどさぁ。その、……なんだ」


 煮え切らない態度で言葉を選んでいるサッカー部を部員はたしか陣野仁。2年生にして一軍メンパーでスタメン入りをしているとかでクラスでも結構たくさんの人の中心にいるイケイケな陽キャくんでこの前あかりちゃんの件で睨んできた1人だ。なんだ? イチャモンか?

 そう身構えるように次の言葉を待つ僕だったが、次に続く言葉は意外なものだった。


「その……、転校生の上久佐さんのことなんだけど。あれ、雛菜ちゃんをどうにかしてくれねぇかな」


「あー、なるほどね」


 あまりにも貯めてから言うものだから少し緊張してただけに拍子抜けする。

 仁が言うには、転校生という注目の的であるはずの琴音を雛菜が独占しているせいで仲良くなりたくても出来ないクラスメイトが多いようで仁たちサッカー部員もそれに困っているようだ。


「確かに、今回はわがままがすぎる気がする」


「葵もそう思うだろ?」


「まぁ、でも雛菜だし」


 桜兎の指摘で仁が口ごもってしまう。

 流石の一軍スタメン仁くんも雛菜のわがままには口答えできないご様子。まぁ、確かにモデルであり、学校一の美人であり、ここら辺で一番の有名人な雛菜に対抗できる生徒の方が少ないってものか。

 でも琴音からクラスメイトと仲良くするよう手伝えと指示が出ているんだよな。まさか1番の弊害が雛菜になるとは……。


「仁達も雛菜と一緒に行動すればいいじゃん」


「いやぁ、そうは言っても……なぁ」


 何を迷うことが? とくもりない眼で言い切ってしまう太陽に仁たちが困ったように目を合わせる。

 ……太陽くん。他人にどう見えるかを1番気にしてしまう僕たちにはそれがとても理不尽な答えだということを理解してあげて欲しい。特に、別にいつも仲良しのグループでもないやつがいきなり「ねぇ、俺も仲良くなりたいから一緒に行動していい?」なんて言えるわけもない。彼らとしては、1人で行動している琴音に()()()()()声をかけるシチュエーションが理想なのだろう。だからこそ、雛菜はネックなのだ。


「まぁ、琴音ちゃん自身もクラスの交流を深めたいと言っていたし、時間がなんとかしてくれるとは思うけど……」



「あなたたち。なんでもこんなに人がいるかは知らないけれど、邪魔なんだけど」



 バッサリと切り捨てるように、僕の席の周りに集まっていたサッカー部員に向かって文句を1人の女子生徒が言い放った。

 「悪い」と小さく部員とさらに別の部員がゲッと思わず顔をしかめるのが見えた。

 声の主は肩まで伸びたロングとスラっと伸びた長い脚の曲線がクールさを魅せる堂々とした立ち姿と刃物のように鋭利な目元の女の子だった。随分と強気な性格のようでガタイの良い集まりである男どもを切り捨てるような物言いに驚く。


「あの娘、前も一緒のクラスだったのだけどね。比良坂香純さんっていうの」


 去っていく後ろ姿を眺めていると、いつの間にか僕の元までよっていたあかりが彼女の名前を教えてくれた。


「ただ比良坂さんね。前のクラスではちょっと目立つこで……」


「目立つ?」


「やばいぜあの女」


 仁が去年のことを思い出してるのか、嫌そうな顔で言葉を続ける。


「授業がつまらないとかで先生に授業中に食ってかかったり、こっちから声掛けてもあなたたちと過ごすのは時間の無駄とか目の前で抜かしたり。傲慢なんだよ。あいつ。そのくせ成績優秀だけは優秀だからお高く止まってんだ。前のクラスじゃ『孤毒姫』なんて呼ばれてたんだぜ」


 相当痛い思いをさせられたのか不満の声が漏れる漏れる。初めて見る生徒に興味を持ったが、相当の地雷のご様子。嫌われてるんだなぁなんて他人事でいると仁が話を戻した。


「とにかく! 雛菜ちゃんのこと何とかしろよ!」


「うん! やれるかぎり頑張るよ。あかりちゃん、さっき名前教えてくれてありがとうね」


「え、う、うん。助けになれたなら良かった。えへへ」


「ちっ! おい、行くぞ」


 その会話を最後にサッカー部たちが僕らの元を去っていく。仁くんはわかりやすいなーまったく。


「サイテー」


「え? 一颯が? なんでなんで?」


「……こっちの話」


 桜兎の悪口を聞こえなかったフリをして、僕は再度お弁当に集中する。

 正直、仁たちの頼みはどうでもいいのだが琴音の件となるとまた話は変わってくる。まったく、どうしたものか。

 隣の主の居ない席をちらりと見て、また僕は堪えきれずにため息を漏らしてしまう。

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