熱で卵は変わります
同じ漫画家の夢を持ち、TKGが好きという親友が俺にはいる。
その友が今、口にした言葉で俺は耳を疑う。
たまごサンド、スクランブルエッグ、オムレツ。
「火を通したものばかりだな。どうしたんだよ」
「生食は危険なのさ。海外では特にね」
友は海外に行ってすっかり変わってしまった。
挙句の果てには作品に対する思いも変わっている。
「Quality is 1st!」
「Variety is 1st!」
友の叫びに魂で答え、袂を分かつことにした。
☆ ★ ☆ ★ ☆
(時間が人を変えるのか。人は変わってしまうのか)
ゴロンと自分の部屋で横になり、天井を見つめ、物思いにふけている。
友が描いた漫画を思い出すと、むしゃくしゃした思いがこみあげてきた。
(TKGだろうそこは……なんでハードボイルドなんだよ)
愕然とした思いと友に俺の中である考えが閃く。
「そうだ!俺は!俺だけは!今のままでいよう!」
思いを口にすると、胸に闘志が満ちてきた。
「胸に灯った情熱で、きみに対する熱い思いで、卵の中身を変えてやる!」
俺は決意を胸にスーパーで買ってきた卵をつかむ。
「そう!これからは!」
卵をかざし、俺は思いのたけを叫ぶ。
「温泉卵の時代!」
適度な熱で変化に富んだ卵の味を届けよう。
そう俺は固く誓い、ペンを走らせて漫画を描いていく。