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令和の夏のマラソン練習 プロローグ

 その日、世良は早朝の5:30に起床した。アラーム自体は5:00に鳴っており、既に目は覚めている。

 そこから30分かけて意を決して布団から抜け出した形だ。


 外は既にセミが鳴いている。

 エアコンを掛けっぱなしにしている寝室からキッチンに出ると、ムワっと生暖かい空気が全身を覆った。世良は冷蔵庫からスポーツドリンクの2Lのペットボトルを取り出し、マグカップに半分ほど注いだ。それをチビチビ舐めながら軽く踵上げや腿上げを行い、腕時計を装着し、トイレに行って、残りのスポーツドリンクを飲みほした。


(行きたくないな・・・)

 そういう思考が働いたタイミングで考えるのをやめ、シューズを履き、外に出た。

 セミの声のボリュームと気温が二段階ぐらい上がる。

 世良はマンションを出るとすぐに考える間もなく腕時計のストップウオッチを起動して走り始めた。


 走り始めのスピードは早歩きぐらい。

 ゆっくり日陰を伝って走りながら、目的のランニングコースに向かう。


 コースと言っても、ただの裏路地だ。ここは建物の位置が絶妙で、日の出から7:00ぐらいまでほとんど日陰になる。

 距離にして100m程度だが、それぐらいあれば物理的にはランニングコースとして十分である。

 夏場の走り込みには絶好の場所だ。


 しかし、問題が一つあり、それはつまらないこと。

 ここで5km走ろうとすると25往復必要になる。10kmなら50往復だ。

 ダラダラと走っていたら飽きてしまって、とても続かない。


 だから色々と変化をつけることにした。

 メインは片道約100mの歩数を数えて走ること。往復の折り返しのタイミングで『次は90歩で走る』と決めて、その通りに走るよう試みるのだ。

 世良の場合、ジョグであればだいたい100歩。軽く流して80歩。短距離レベルで走ると60歩前後になる。

 人の少ない早朝とはいえ、さすがに路地でスプリントは危険なため、だいたい100歩から70歩の間で設定した。慣れてくると意外に狙い通り走れてしまうので面白い。


 その他にも3往復に1回程度、脇道に入り、階段の上り下りを入れたり、小さな公園で腕立てや斜め懸垂を行う。

 こんな走り方をしていると、トータルの往復数は分からなくなりやすいので、そこは厳密に数えず時間で区切ることに決めた。


 この日の世良は、30分で切り上げた。すでに体感気温は30度を超えており、Tシャツは絞れるぐらい汗を含んでいる。自分が夏場に無理なく出来るのはこのぐらいが限界だろうと判断したのだ。


 この一連の流れは、従来の世良の日課ではない。

 彼は、いつもは夏は、素直にエアコンの効いたジムでの室内練習にシフトする。

 しかし、こんなことをやっているには理由がある。


 世良は5分ほど歩いて帰宅し、水分を摂るとTVを付けた。

 そして、ゲーム機を起動し、ことの発端になったゲームを起動する。


 しばらくして画面に『1マットエクササズ Vol 3 ボクシング』と表示され、陽気な音楽が流れた。


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