07.最強転生者、ドラゴン系のアイテムを強化素材にして竜殺しの槍を完成させる。
「〈アッパースラッシュ〉」
【トライデントフォーク】を頭上に向けて大きく振り抜くと衝撃波が目にも留まらぬ速さで敵へと向かって飛んでいく。
タイミングとしても完璧だった。
だが。
(避けられた?)
相手は降下しながらその攻撃を寸前のところで回避すると、大きく腕を振り上げて爪による攻撃を仕掛けてくる。
「ドゴォォォォ!!」
「っ」
俺は大槍を刺又代わりにして上位竜との距離を保ちつつ、後方へと退くことに成功する。
少しヒヤッとしたぞ。
敵はそれで一度態勢を立て直すことに決めたのか。
再び上空へと高く舞い上がっていく。
(上手く回避できたのはアビリティのおかげか)
また幸運なことに1回必殺技を撃ち込んでも【トライデントフォーク】が壊れるようなことはなかった。
けど、おそらく次で最後だろう。
(あれだけ相手を引きつけたのになんで直撃しなかったんだ?)
これまでの経験から言っても貫通させられなかったのがおかしいくらいの間合いだった。
夕陽を背に受けながら旋回している上位竜の位置を確認すると、俺は頭の中で〝開示〟と唱える。
チェックするのは必殺技の項目だ。
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【必殺技】
アッパースラッシュ
〔内容〕
敵1体に中ダメージの物理攻撃を1回ヒットさせる。
使用時に会心率は上昇するが命中率は低下する。
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なるほどな。
命中率が下がっていたのか。
会心率が上昇するのはありがたいが攻撃が当たらないのなら意味はない。
(でもどうして敵は引き下がったんだ?)
ふとそんな疑問が脳裏に過る。
相手としては攻撃を仕掛ける絶好のタイミングだったはず。
そんなことを考えていると、視界にある物が映り込んだ。
(あれは……【上位竜の鱗】?)
地面に落ちたキラキラと輝く素材に目を向けると俺はすぐに事情を理解した。
(そうか。さっきの攻撃は完全に回避されたわけじゃなかったのか)
おそらく尻尾をかすったんだ。
傷を負わされたことで警戒心が生まれてドラゴンは上空へと一度舞い戻ったんだろうな。
それからも俺の閃きは止まらなかった。
(!)
一目散にその場から駆け出すと、地面に落ちた【上位竜の鱗】を俺は素早く手に取る。
こういう時こそ前世の経験がものを言う。
俺は知っていた。
竜族にはドラゴン系のアイテムが有効なんだって。
【トライデントフォーク】を放棄して【上位竜の鱗】を使い新たな武器を作ろうと考えるも一瞬思い留まる。
待て。
こいつを追加素材にして《強化付与》のスキルを使うこともできるんじゃないか?
これまでは《ヴァルキリーの技巧》の検証に夢中になっていて、すっかり固有スキルの存在を忘れてしまっていた。
《強化付与》は武器を強化しつつ、一定の確率で命中率上昇や会心率上昇などの補正が付くことが分かっている。
一度《強化付与》を試す価値はあるはずだ。
「ドゴォォォォ!!」
高く舞い上がった上位竜はその強靭な体躯をオレンジ色に染めながらぐるぐると旋回してこちらの出方を窺っていた。
相手が警戒心を持っている今こそ、まさにチャンスと言える。
これまではマモンの武器を強化するためだけに《強化付与》を使ってきた。
だが、今回は自分のためにその力を使う。
(俺ならできるはずだ。見せてみろ。超覚醒した真のスキルを)
大槍を荒野の地表に突き刺すと、【上位竜の鱗】を前にかざしたまま意識を集中させる。
アイテムに宿ったマナを【トライデントフォーク】へ付与するようにイメージを強く膨らませた。
すると、その瞬間。
期待した通りのことが起こる。
バヂッバヂッーン!
頭の中で火花が散ったかと思えば、目の前の武器は神々しいほどの輝きを放ち始めたのだ。
『武器の覚醒に成功しました。』
『特殊スキル《金字塔の鍛造》が超覚醒しました。』
次の刹那。
そんなアナウンスが脳裏に響き渡った。
(上手くいったみたいだな。これがマナの力で覚醒した新たな武器か)
生まれ変わった大槍を地面から引き抜くと、両手で持ってそれを構えてみる。
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【怒髪天の竜槍】
〔レアリティ〕C
〔再現度〕1%
〔攻撃力〕3700
〔必殺技/上限回数〕蒼天龍撃・零式 / 7回
〔アビリティ〕竜殺しLv.2、命中率上昇Lv.1
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頭の中でステータスを確認してから俺は小さく頷いた。
レアリティはC。
つまり、七曜の武器と同程度の武器が作れてしまったわけだ。
(〔命中率上昇〕があるな。これでさっきみたいに外すことはないはずだ)
しかも〔竜殺し〕のおまけ付きときている。
これは竜族に対して絶大な威力を誇るアビリティだ。
通常の2倍はダメージを与えることができる。
再現度は1%でも一撃でも必殺技を当てられたら形勢を逆転できるに違いない。
「ドゴォォォォ!」
敵はようやく次の攻撃のモーションに入ったようだ。
それは警戒していた炎のブレスによる攻撃だった。
だが。
(今さらそんなもの俺には通用しないぞ)
【怒髪天の竜槍】を右手で持って肩の位置まで上げると、宙で大きな翼を広げる上位竜に狙いを定める。
どうせ一撃で壊れるのなら手元に残しておく必要もないしな。
「竜威を轟かす閃光の投擲、烈しく爆ぜろ――〈蒼天龍撃・零式〉」
瞬時に駆け出すと、俺は【怒髪天の竜槍】を上空へと向けて全力で投げつけた。
「ドゴォォォォーー!!」
それと同じタイミングで上位竜は炎のブレスを下方へ吐き出してくる。
無駄だ。
こっちの方が寸秒早い。
夕空をすべて撃ち抜くような猛スピードで大槍が一直線にのびていく。
その軌道は炎のブレスすらもかき消し、上位竜の巨大な体躯に見事直撃した。
「ドゴォォォォ~~~!?」
大爆発した衝撃とともに敵はそのまま地面へと墜落する。
ズッゴゴーーン!
その時。
もの凄い爆音が広大な荒野の真ん中で響き渡った。