06.最強転生者、上位竜と遭遇する。
激しく揺れる地面にしがみつきながら俺は手をかざして唱えた。
「〝聖具発現〟」
すぐに宙に武器が出現する。
これはドラゴン神殿を脱出する前に作っておいたものだ。
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【樫の遠弓】
〔レアリティ〕E+
〔再現度〕45%
〔攻撃力〕2750
〔必殺技/上限回数〕ブラストショット / 4回
〔アビリティ〕高速連射Lv.1
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頭の中でステータスを確認しながら俺は弓を手に取る。
そして、すぐさま矢を弓柄にセットして数秒後に備えた。
(もし伝承が本当だとしたら、今地中から上がって来ているのはおそらく……)
足場が最悪な状況にあっても俺は構えを取り続けた。
直後。
予想は現実のものとなる。
ドバァァァゴリゴリゴリゴリゴリィィィーーー!!
一頭のドラゴンが地表をぶち破りながら轟音とともに飛び出してきたのだ。
俺は思わず呆気に取られてしまう。
(まさか上位竜か?)
「ドゴォォォォ!!」
上空へと浮上したドラゴンは宙で旋回し、紫色の大きな双翼を広げて鋭い声を響かせた。
ボディは黒色の強靭な鱗で覆われている。
俺の5倍くらい体長はあるな。
瞳は赤色にギラギラと光り輝き、そこら辺の魔物を簡単にひと裂きできそうな太い爪を持っていた。
口から鋭利な牙を覗かせ、激高したように何度も雄叫びを上げている。
(伝承は本当だったんだな)
前世での経験から俺は相手が上位竜であることをすぐに見抜いた。
相当な力を持っているドラゴンだ。
しかもなぜか相手はこちらに敵意をむき出しにしてきていたから状況はかなり最悪と言えた。
「ドゴォォォォ……」
上位竜は大きな体躯を仰け反らせると、炎のブレスを吐き出すモーションに入る。
その一瞬の隙を突いて俺は素早く矢を放った。
「〈ブラストショット〉」
こういう時は先手必勝だ。
「ドゴォォォォ~~!?」
不意打ちが功を奏したのか。
鋭い矢先は上位竜の体躯にしっかりと命中した。
相手は炎のブレスを吐き出す直前に体勢を崩す。
レベル1の俺にとってあの攻撃を繰り出されることは命取りだ。
なんとか相手よりも先に主導権を握りたい。
だが。
当然のことながら、レアリティE+程度の武器で上位竜を圧倒できるはずもなく。
「ドゴォォォォーーーー!!」
相手は大きく翼を広げてすぐに体勢を立て直すと、両腕を縦横無尽に振り払いながら爪による攻撃を仕掛けてきた。
一度後方に下がって間合いを取る。
「〈ブラストショット〉」
それから必殺技を高速で連射して時間を稼ぐも、上位竜は紫色の翼でそれらの攻撃をいとも簡単に相殺した。
二度も同じ手は通用しないってことか。
(さすがにこの武器じゃ限界だな)
そんなことを思った矢先に【樫の遠弓】は音もなく崩れ去る。
素早く魔法袋の中に手をつっこむと、俺は新たに二つのアイテムを取り出した。
【シーブライト魔鉱石】と【いにしえの怪骨】だ。
(ドラゴン神殿で拾ったものの中で一番希少性の高いアイテムだ。これを組み合わせてやる)
上位竜との距離を確認しつつ、それぞれを手に持ってマナが一つに集まるように意識を集中させた。
スキルを何度も検証したことでだいぶ慣れたんだろう。
二つのアイテムは光に包まれたまますぐに一つの大槍へと姿を変えた。
俺は宙に浮かんだそれをしっかりと手に取る。
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【トライデントフォーク】
〔レアリティ〕D+
〔再現度〕5%
〔攻撃力〕3300
〔必殺技/上限回数〕アッパースラッシュ / 5回
〔アビリティ〕回避率上昇Lv.1
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頭の中で〝開示〟と唱え、武器の性能を素早く確認した。
攻撃力3300。
それにアビリティには〔回避率上昇〕が付いている。
これまで作った中で一番強い武器だな。
ただ再現度は限りなく低いから必殺技を撃てるチャンスはよくて1回だ。
(いや1回撃ち込めればそれで十分だ。こいつで仕留める)
前世でも槍はそこまで扱った経験があるわけじゃないが、特に気にすることでもない。
刀でも弓でも槍でも、武器は武器だ。
今こそ前世での経験を生かす時。
「ドゴォォォォ!!」
上空へと舞い上がったドラゴンは鋭い雄叫びを上げながら双翼を大きく広げる。
(気迫に圧倒されるな。冷静に頭部を撃ち抜くように集中しろ)
自分の背丈ほどある【トライデントフォーク】を両手で持ち、頭上へと構える。
敵よりも早く攻撃を撃ち込めば必ず勝機はあるはずだ。
上位竜は大きく口を開いて牙を覗かせると、反動をつけてもの凄い勢いで降下を仕掛けてくる。
漆黒の体躯が射程に入る瞬間を狙って…………ここだ。