05.ダンジョン脱出。
ドラゴン神殿の外に出るとすでに陽は傾きかけていた。
マモンたちの姿も見当たらない。
当たり前だ。
あれからかなりの時間が経っている。
(それにマモンが俺を待っている理由がない。俺はパーティーを追放されたんだからな)
〈瞬間転移〉の魔法は移動できる距離が限定されるが、ここシグルード王国の領土を行き来する分には問題ないだろう。
3人はすでに別の街へ移っているに違いなかった。
七曜の武器を入手したわけだから次はクレストオーブを探しに行くはずだ。
ドラゴン神殿の入口を振り返りながら、俺は一度大きく伸びをする。
「さてと。これからどうするか」
マモンの近くで手助けすることは叶わなくなった。
とはいえ、このまま何もせずにいるわけにもいかない。
(けどまさか七曜の武器があんなハズレだったなんてな)
前世で様々な武器を目にしてきた俺には分かる。
あの七曜の武器はよくてレアリティCがいいところだろう。
魔王を倒すためにはまず七曜の武器を集めるようにとこの世界の予言者に聞いて、遥々シグルード王国までやって来たわけだが、この分だと他の七曜の武器も期待できそうにない。
あの程度の武器を集めたところで魔王は絶対に倒せない。
経験したからこそ分かる答えだ。
「待てよ。それなら俺が最強の無双神器を作ってマモンに渡せばいいんじゃないか?」
幸い魔王が復活するとされる日まではまだ半年ほど時間が残されていた。
その間にアイテムを集めて最強の無双神器を作り出す。
パーティーにいられなくなっても外から貢献できることだってあるわけだ。
「目標も決めたことだし今日はこの辺りで野宿とするか」
ドラゴン神殿はだだっ広い荒野の真ん中にあるからここなら見晴らしもいい。
たとえ夜に魔物が襲いかかってきても素早く対処することができる。
この辺りも前世で培った経験だ。
「ただ食料は無さそうだな」
森の中なら動物を狩ったり、果物を手に入れたりすることができるが仕方ない。
まあ、一日くらい空腹をガマンしたところで問題はないだろう。
(どこでキャンプするか。岩場になっていて隠れるスペースがあるといいんだが)
オレンジ色の西日が差し込む荒野を歩きながらテントが張れそうな最適な場所を俺は探す。
それにしても広いぞ。
この荒野は小さな貴族が治める領地ほどの広さはあるかもしれない。
800年前はここには竜族の都があったようだ。
(たしか神殿の地中深くにドラゴンたちが眠っているっていう話だったな。本当かどうかは分からないが)
ドラゴン神殿はそういった伝承からその名前が付けられたのかもしれない。
ちなみにこの世界――ザナルスピラの竜族はすでに絶滅している。
史実によれば、大勢の魔族を引き連れて侵攻してきた魔王軍の手によって滅ぼされたらしい。
その後、彗星の如く現れた勇者によって魔王軍は魔大陸まで追いやられることになる。
以降この中央大陸では人族が繁栄し、現在まで平和が続いているということだ。
俺が前にいた世界とはこの辺りの歴史が異なっている。
「あそこなんかいいんじゃないか?」
周囲を岩場に囲まれた場所を見つける。
魔物の襲撃にもきちんと備えることができそうだ。
そう思ってその場に足を進めようとしていると。
(?)
何か地鳴りのようなものが足元から小さく聞えてくることに気付く。
まだ距離はあるが、地中で何か大きなエネルギーが躍動しているのを俺はとっさに感じ取った。
地震じゃない。
もっと何か別の……。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
「っ!」
続けて地面が激しく揺れ始める。
立っているのも難しいくらいの大きな揺れだ。
その時、俺は気付いた。
地中からもの凄いスピードで何かがせり上がって来ているということに。