03.最強転生者、魔物を簡単に倒す。
「「「ギュォオオオオオ!」」」
【星屑の鉄刀】の性能を確認しているとさっそく通路の奥に魔物の群れが現れた。
全部で5、6体はいるな。
(もう復活したのか)
本当はもう少しアイテムを拾ってどんな武器が作れるか試してみたかったんだが、まあいい。
【星屑の鉄刀】の威力を試すにはもってこいだ。
俺は刀の柄を両手で握り締めると、刃先を魔物の集団へと向ける。
相手は有翼系の魔物――ヘルジャミラだ。
背丈は俺とちょうど同じくらい。
獰猛な怪爪と黒い大きな翼で旋回しながら攻撃を仕掛けてくる。
たしかレベル20くらいあったか?
この世界に出現する魔物は前の世界にいた魔物とほとんど変わらないから、俺は基本的に相手のステータスが頭の中に入っていた。
ルヴィがいたら魔法で敵のステータスを正確に確認することもできたんだが、いないのだから仕方ない。
(こいつの威力。確かめさせてもらうぞ)
敵は相当に興奮しているようだ。
俺の姿を確認すると一斉に飛びかかってくる。
「「「ギュォオオオオオ!」」」
的が一つに重なる瞬間を狙って……今だ。
「絶零の穢れなき氷刃よ、我が敵を斬り刻め――〈鳶氷五月雨〉」
高く振り上げた刀を力任せに振り抜くと、凍てつく氷刃の円軌道が高速にスピンしながらヘルジャミラの群れにぶち当たる。
敵は断末魔を上げながらぐちゃぐちゃに斬り刻まれ、一瞬のうちにして姿を消した。
【星屑の鉄刀】を正面に構え直すと俺はひと息つく。
前世で会得した剣の腕前は健在だな。
「安心したぞ。これでなんとか先へ進めそうだ」
問題はレベルが一切上がらないことか。
本来ならこの数のヘルジャミラを倒せば、経験値を獲得してレベルが上がるものだが、俺はレベル1固定の生産職だ。
当然、ステータスも最底辺のまま。
今後成長することもない。
強力な武器を作れるようになったのはいいが、紙装甲なのはいささか気になる。
(まあ敵の攻撃を受けなければいいだけの話だが)
そんなことを考えていると、突然予期せぬことが起こった。
シュルルルル。
「ん……なんだ?」
突如、手にした【星屑の鉄刀】が灰と化すように消失してしまったのだ。
(まさか壊れたのか?)
一度、頭の中で〝開示〟と唱えて自身のステータスを確認する。
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【エルハルト・ラングハイム】
クラス:錬金鍛冶師
Lv:1
HP:10/10
MP:1/1
攻撃力:1
防御力:1+5
魔法力:1
素早さ:1
幸運:1
【固有スキル】
《マナ分解》
《強化付与》
【特殊スキル】
《ヴァルキリーの技巧 Lv.1》
【武器】
なし
【防具】
生産職の服
旅人のコート
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俺はそのまま《ヴァルキリーの技巧》の項目に意識を集中させた。
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【特殊スキル】
《ヴァルキリーの技巧》
〔内容〕
アイテムを組み合わせて新たな武器を作り出す。
スキルレベルが上がるたびに再現度の高い武器を作ることが可能。
また必殺技の上限回数やアビリティのレベルも上がっていく。
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そういうことか。
たしか【星屑の鉄刀】の再現度は10%と表示されていた。
多分この数値が低いと武器の形を維持することができなくて壊れてしまうんだろうな。
(まだ《ヴァルキリーの技巧》のスキルレベルは1か。とすると現状だと再現度の高い武器を作るのは難しいのか?)
手元に武器が無くなってまた一からやり直しの状態だ。
とりあえず、アイテムを拾いまくってどんな武器が作れるかいろいろと試す必要がありそうだな。
俺はコートを振り払うとアイテム探しを再開させた。