27.最強転生者、新たなスキルを覚醒させて竜姫を救ってしまう。
「ヌウゥゥゥゥーーーー!」
度重なる攻撃を受けて相手はこちらに興奮気味だ。
敵は俺に目がけてヘドロを吐きつけてくる。
だが。
(そっちの攻撃パターンは把握済みだ)
すぐさま銀矢を装填して放つと俺はそれを簡単に相殺した。
そして。
真っ赤に輝く【獅子王の真弦】にぐっと力を込めて、もう一度銀矢をセットしてジャイアントメタルワームに狙いを定める。
こいつで終わりだ。
「火竜の加護を受けし聖具よ、意のままに敵を撃ち抜け――〈轟天クロス〉!」
火属性のエンチャントを受けた銀矢は、燃え盛る業火をその身に纏いながら高速で敵へと向かっていく。
その刹那。
大爆発した衝撃音とともにジャイアントメタルワームの巨体は一瞬のうちにして紅蓮の炎に包まれる。
悲鳴を上げる間もなく、山頂の主は一瞬のうちにして灰と化した。
「ふぅ。凄い威力だったな」
ジャイアントメタルワームが完全に消え去るのを見届けると、その瞬間、手にした【獅子王の真弦】は壊れてしまう。
まあいい。
これでたとえ魔法が使えなくてもどうにかなることが分かった。
『《金字塔の鍛造》のレベルが[1]上がりました。』
直後、前回同様にそんなアナウンスが頭の中で響く。
つまりこれでさらにレアリティの高い武器を作れるようになったってことだ。
依然としてどんな判定でスキルレベルが上がったのかは分からなかったが、特殊スキルを使い続けることで上がるのは間違いなさそうだ。
(そうだ。ナズナは……)
自分のことに気を取られている場合じゃないな。
俺はすぐさまナズナのもとへと駆けつけた。
「……ハァ、ハァ……。ぅっ……ハァ…………」
ナズナは《轟竜の護盾》をその場に沈めて地面に膝をつけながら辛そうに息を繰り返していた。
(ものすごい量の汗だ)
露出した肌や太ももからは大量の汗が吹き出し、頬は紅潮してしまっている。
けど、絶対に苦しいにもかかわらず、ナズナは俺が傍にやって来るのが分かると笑顔を浮かべた。
「……マスター……お見事、でした…………」
「今は俺のことはいい。肩に掴まれるか?」
「……はい……」
その場でナズナを背負うと、大樹のもとまで運んでそこに体を預けさせる。
「少し待ってろ。すぐに治してやるから」
ナズナが静かに頷くのを確認してから、俺は【毒消し草】を探しに草地へ足を踏み入れた。
こういう時こそ、前世の経験が生きてくる。
【毒消し草】は最もポピュラーなアイテムの一つだ。
こんなものはナズナの《天竜眼》に頼らずとも簡単に見つけられる。
草地を駆け足で走り回り、俺は速攻で【毒消し草】を集めてしまう。
念のために10本は採取した。
(これを組み合わせて秘草を作るぞ)
【毒消し草】をまとめて10本両手で持つと、アイテムに宿ったマナが集まるように意識を集中させていく。
結合したマナが一つの回路に流れるように強くイメージすると、【毒消し草】は眩い輝きを放ち始めた。
『アイテムの構築に成功しました。』
『固有スキル《調薬》が覚醒しました。』
そんなアナウンスが頭の中で鳴り響く。
《調薬》か。
やっぱり思った通りだったな。
【毒消し草】は上位草である【アンチトードの秘草】へとアップグレードされていた。
これだけ複数のアイテムを使って秘草を作ることができたってことは、きっと特効薬だって作れるに違いない。
俺はたしかな手応えを感じつつ、ナズナのもとへと急いだ。
◇◇◇
「おかげで助かりました、マスター。本当にありがとうございます」
【アンチトードの秘草】を口に含むと、ナズナはすぐに体調を回復させた。
どうやら大事に至る前になんとかなったようだ。
「気にするな。こんなのは当然のことだ」
「正直な話をさせていただきますと、私のためにマスターがこんな風に治療してくださるとは思っていませんでした」
「どうしてだ?」
「私はマスターの従者に過ぎません。それと今回は私の不注意が招いたことが原因でしたので」
「ナズナはいつも俺のことを護ってくれているんだ。助けるのは当たり前だろ?」
「……っ」
「それに、従者に過ぎないなんてそんな自己犠牲的な考えは今すぐ捨てろ。主従契約を結んだって言っても俺たちが大切なパートナーであることには変わりない。どちらかが欠けるなんて絶対にあり得ないんだからな。今後もナズナの身に何かあれば、俺は全力でお前を守り抜く。そのことを覚えておけ」
俺がそう断言すると、珍しくナズナは恥ずかしそうに顔を俯かせてしまう。
だが、最後には「承知しました、マスター。感謝いたします」と口にしてくれた。
その表情がどこか嬉しそうだったのは、多分見間違いじゃない。
とにかくナズナが無事でよかった。
(あとは特効薬を作って大巫女のもとへ持っていくだけだな)
それから俺たちは大木から【古代剛力樹】を手に入れると、下山して花鳥の里まで戻った。