02.最強転生者、スキルを覚醒させて武器を作ってしまう。
この世界に俺が転生してやって来たのは今から10年前のことだ。
俺はとある準男爵家の5歳の男の子に憑依転生した。
葬儀の最中に蘇ったから、周りからは〝死に戻り〟なんて呼ばれて気味悪がられたな。
この世界に俺が転生してやって来たのはある目的があったからだ。
それはすべてあのロリ女神が仕組んだことなんだが……まあ今はそれはいい。
俺の目的は、勇者が魔王を倒す手助けをすること。
つい今しがた勇者パーティーから追放されてしまったわけだが、そこは今後別の形で手助けできるか模索すればいいだけの話だ。
とにかくこのダンジョンを脱出しないことには何も始まらない。
◇◇◇
「あったぞ。まずは一つ目だ」
ダンジョンの通路に落ちているアイテムを拾う。
最初に拾ったのは【天然のペンタグラム】というアイテムだった。
ここドラゴン神殿は素材の宝庫と言われていて、アイテムが多く手に入ることで有名だ。
(しかもここは最下層だからな。珍しいものがかなり落ちているぞ)
これまで拾ったアイテムはマモンに渡すかマナの分解に使っていたから、自分のために入手するのはこれが初めてだったりする。
ここら辺りの魔物はマモンたちが一掃したからしばらくの間は蘇らない。
それまではアイテムが拾い放題というわけだ。
「よし。二つ目も見つけたな。これでなんとかなりそうだ」
しばらく進んだところで通路の脇に落ちている【青い幼角】を拾う。
魔法袋の中から先程拾った【天然のペンタグラム】を取り出して、俺は二つのアイテムを両手に持った。
これまでなら固有スキルの《マナ分解》を使って、アイテムに宿っているマナを取り出し、それを仲間に提供していたところだが今回は違うことに使用する。
ちなみにマナっていうのは万物に宿る無形の要素と言われていて、魔法を使用する際などに必要なものだったりする。
マナはMPに変換することが可能で、魔術師や聖女はそれを消費して攻撃魔法や回復魔法を使うことができるのだ。
だからマナを取り出せる錬金術師は希少な存在なのだが、この世界では生産職はレベルが一切上がらないから無能と認知されているようだ。
(そもそも生産職がダンジョンに入ることなんて滅多にないしな)
俺は勇者パーティーのメンバーだったから特殊だったりする。
生産職は街で店を開いて戦士職や魔法職相手に商売をしているだけの場合が圧倒的に多い。
もちろん、錬金術師はマナを取り出すことしかできないわけじゃない。
前世の知識を有している俺にはそれが分かっていた。
(分解ができるんだから構築だってできるはず)
今まで俺はあえてこれを試してこなかった。
理由は単純だ。
実力を隠す必要があったからだ。
〝現地の勇者よりも目立ってはならない〟
それはこの世界へ転生する際の規律の一つだった。
だから、俺はこれまで戦闘に参加した経験は一度もない。
後方で待機してパーティーの補助役を全力で務めた。
でも今は違う。
俺は勇者パーティーを追放されたんだからな。
これまでみたいに傍で力を隠す必要はなくなったわけだ。
【天然のペンタグラム】と【青い幼角】をそれぞれの手で持つ。
(アイテムに宿ったマナが集まるように意識を強く集中させろ)
マナが繋がって一つの回路へ流れるようにイメージを固めていく。
すると。
二つのアイテムは光に包まれた状態で宙に浮かび始めた。
(あとは形を具体的に構築していけば)
全身の神経を集中させてさらに強くイメージする。
その直後、天啓が降り立つような感覚を抱いた。
『武器の構築に成功しました。』
『特殊スキル《ヴァルキリーの技巧》が超覚醒しました。』
突如そんなアナウンスが頭の中に響き渡る。
宙に浮かんだ二つのアイテムは光り輝く一つの武器へと姿を変えていた。
「思った通りだったな」
俺は宙に浮かんだ刀を手に取った。
それは以前から自分の所有物であったように自然と手に馴染む。
(《ヴァルキリーの技巧》か。なかなか使えそうなスキルだ)
おそらく、錬金術師としての隠れたスキルが覚醒したのだろう。
その点については特に驚いてなかった。
「さて。こいつの性能を確認しておくか」
手にした刀をその場に突き刺すと、頭の中で〝開示〟と唱える。
すると、脳裏にステータスが浮かび上がった。
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【星屑の鉄刀】
〔レアリティ〕D
〔再現度〕10%
〔攻撃力〕3000
〔必殺技/上限回数〕鳶氷五月雨 / 5回
〔アビリティ〕高速攻撃Lv.1
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「【星屑の鉄刀】。レアリティはDか。初回にしてはなかなかいいんじゃないか?」
攻撃力は3000。
どの程度の威力なんだろうか。
この世界の武器を手にするのは実は初めてだったりする。
(実際に使ってみないと分からないな)
次に必殺技の項目に意識を集中させる。
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【必殺技】
鳶氷五月雨
〔内容〕
敵グループに小ダメージの物理攻撃を2回ヒットさせる。
また使用後に低確率で敵を氷状態にする。
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「なるほど。面白い性能を持った武器だな」
他にも気になる項目はいくつかあったが、あとは実戦で使ってから確認するとしよう。