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11.竜姫と主従契約を結ぶ。(上)

 竜の刻印がなされた六芒星の長盾をナズナは前に構える。


 盾の中央部分は円状の永久核で覆われていて見るからに頑丈そうだ。

 俺の背丈よりも大きいからナズナがそれを右手で持つと全身が簡単に隠れてしまう。


「この《轟竜の護盾》でマスターをしっかりとお護りいたします」


「すごいな。自分の意思で発現できるのか?」


「はい。人の姿をしている間は自由に《轟竜の護盾》を発現することができます。この盾には竜族の集合精神が宿っているんです。何か攻撃を受けると、竜姫である私を護ろうとする絶大な力が働いて完全に攻撃を防ぎます。防御性能に関してはご安心ください」


 攻撃することはできないようだが、それでもシールドとしての性能は一級だ。

 前世でもこんな盾は見たことがないぞ。


「ですから、マスター。私と主従契約を結んでいただけませんか? 私をマスターの序列一位の従者にさせてください」


「……」


 たしかにこの先も俺はレベル1のままだ。

 これから最強の無双神器を作るにあたって火力面での心配はしていないんだが、装甲面は若干気がかりだったりする。


(一撃でも食らえば即死っていう状況は今後も変わらないわけだしな)


 盾で護ってもらえるのはありがたい話ではあるが、竜王と勘違いされたままなのは考えものだ。


(けど転生者であることを口にしちゃいけない規律(ルール)がある以上、ナズナを納得させるのは至難の技だぞ)


 俺からは無限の竜力ってやつが溢れているみたいだからな。


 暫しの間、なんて返答するか考えているとナズナが話を続けてきた。


「我ら竜族の間には〝窮地に陥った時、竜王様が一族の再興を成し遂げる〟という言い伝えが存在しました。マスター。竜族の未来のために力をお貸しいただけないでしょうか? 私は多くの者にそれを託されて、この800年もの間、マスターをお待ち申し上げておりました。差し出がましいことを口にしていると重々承知してます。ですがどうかお願いしたいのです」


 どうやら相手の意思は相当に固そうだ。

 さすがにここまで言われたら、拒否することはできない。


「でも本当にいいのか? 俺は特に何かできるわけじゃないぞ」


「ご安心ください。先程もお話させていただいた通り、マスターのお傍にいるだけで私の中には強大な竜力が蓄積されていきます。ただ一つだけ問題がありまして」


「問題? 何かあるのか?」


「はい。魔王を倒さない限り私はこの地に竜種を産み落とすことができないんです。800年前、我が一族が魔王軍によって滅ぼされたのはご存じでしょうか?」


「ああ。この世界の常識だからな」


 王立学院の授業でザナルスピラの歴史については何度も学んできた。


「実はその際に竜族の象徴たる【古龍種の大稀玉】を奪われてしまったんです」


「【古龍種の大稀玉】?」


「竜族の依り代とされている宝珠のことです。その力に護られていたからこそ、我々は長らく繁栄することができました。ですが、それを魔王に奪われてしまってお父様もお母様も一族の未来が長くないことを悟ったのでしょう。竜姫である私を匿うように地中深くで眠りにつかせたのです。ですから、魔王を倒してその【古龍種の大稀玉】を奪い返さない限り、私は竜種を新たに残すことができないんです」


 たしか800年前に登場した勇者は魔王を完全に倒し切れなかったんだよな。

 魔大陸へ封じ込めるだけで精一杯だったって授業でもそう習った。


 だからこそ、今こうして魔王は復活の兆しを見せているわけだ。

 

「そういうことなら心配するな。マモンがきっと魔王を倒してくれる」


「マモン? それはどなたでしょうか?」


「マモンは勇者なんだ。あいつとは学生時代からの同級生でついさっきまで一緒のパーティーを組んでいたんだ」


「勇者……たしか魔王に対抗する人族の英雄のことでしたね。マスターはその方とお知り合いだったのですね」


「残念ながら俺はパーティーから追放されることになったけどな。だが、マモンのために魔王を倒すための無双神器を作るっていう新たな目標ができた」


「魔王を倒す神器ですか? パーティーを追放されたのになぜマスターがそんなことをなさるのでしょうか?」


 不思議そうな顔でナズナが訊ねてくる。

 たしかに普通は理解できないよな。


 俺は分かりやすくその理由を説明した。

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