成り上がりリライト
「はぁ……はぁ……」
ボクは命からがらアクエルのいちばん奥までやってきた。
足も腕ももうパンパンだった。
「……ダメだ……少し休もう……」
ボクはなんて弱いんだ。そう思った。
そして、ボクは休むためにいちばん奥のかべに背中をつけて据わりこんだ。
と、確か原作ではこうなっていたはずだ。
あ、『座り』が『据わり』になってるのも原作そのままですよー。
アクエルの最奥。
そこは何もない、半径10m程のホール状空間だった。
当然ボスみたいな存在もいないし、宝箱があるわけでもない。
入り口からの距離はー……んー……多分500mくらい?
ほぼ真っ直ぐ進んで真っ直ぐ戻るだけの簡単なお仕事です。
いや、嘘、ゴメン。今のパウロにはドッキドキの大冒険でした。シャールさん、アザッした!
「こんな場所に何の用があって来たんですか?ここには何もないと、貴方も知っているでしょう?」
戦闘の一切を任せてしまったにも関わらず、これっぽっちも疲れていない様子でシャールが隣に並ぶ。
首を捻って後ろを見ると、ジョウもコクコクと頷いていた。
まーねー。レクシオン近隣の冒険者にとって、ここはただの『雑魚狩り場』というのが共通認識だ。
「ここですらまともに戦えないヤツには冒険者なんて無理無理」
そんな登竜門のような、リトマス試験紙のような場所である。
だが、ここには酷く雑な『隠された秘密』があった。
「まぁ、実際に自分の目で見た方が早いと思うよ?」
そう言って、俺は槍を杖のようにしながら壁際へと移動する。
原作に出てくる『いちばん奥』がどの辺りかは分からないが、端から端まで確認すればいいだけだ。大した労力ではない。
原作『ボク耳』によると、座り込んだ部分がボコッ!と抜け、ジョウは未踏の地底湖に落下する。
そこで、クリスタルのような物質に閉じ込められた水の精霊『ウンディーネ』と出会うのだ。
だけどねー……これがまたヒドいのなんの……
まずこのウンディーネちゃん、何故こんな場所に、何故封印されているのか、全く説明がない。
一人と一体の会話によると……
ジョウ「キミはどうしてこんな場所に?」
ウンディーネ「うーん……分かんない」
以上!終了!完!……である。
これ以後、この話はまるで禁忌であるかのように語られることはなかった。
まぁ要するに、ウンディーネの存在は手っ取り早く主人公を強くするための、所謂『舞台装置』なのだ。
あ、ちなみにこのウンディーネちゃん、最初は手の平サイズなんだけど、その内なんの脈絡もなく大きくなったり小さくなったり出来るようになって、ジョウのビッチハーレムに加わりまーす。
水の精霊らしく潮……ナゾの水分でベッドがビチャビチャになるんだとか(笑)
はっはっはっ!作者の身になんか不幸起きねーかなー(笑)
そんな俺の作者への怒りは、この直後さらに膨れ上がることになる。
「おっ?おっ?ここかな?」
槍の石突で壁際の地面を叩いて歩いていると、ゴッ!からゴゥンッ!に音が変わった場所を発見する。
少し距離を取ってその部分に狙いを定め、多少の力を込めて槍の石突を突き下ろしたその瞬間……
ドゴォッ!!!
「おわぁっ!?」
「パウロッ!?」
「パ、パウロさんっ!?」
地面は轟音を立てて俺の足元付近まで崩れ落ちていた。
これのどこが『ボコッ!』だっ!!!あんのボケェェェッ!!!
シャールとジョウの叫びを聞きながら、俺はゴロゴロと奈落の底へと転げ落ちていった。
◎
全く愛着のない槍はとっくに俺の手を離れていた。
身一つで前転二回、一度バウンドしてから後転三回。
それだけ滑落してから平らな地面を滑り、俺の体はようやく停止していた。
遅れて到着した槍が顔の横に突き立ち、思わず「うひぃっ!?」と間抜けな声が漏れる。
あー……死ぬかと思った……
「アイタタタ……ってアレ?」
声を出しながら半身を起こし、そこで俺ははたと気がついた。
あれだけ派手に岩場を転げ落ちたら、骨の一本くらい折ってても全然おかしくはない。
が、「どっこいしょ」的な感覚で「痛い」と口にしながらも、実際は体のどこにも痛み、違和感はなかったのだ。
昨曰天井に頭ぶつけた時もそうだったけど……ひょっとしてこの体、メチャメチャ頑丈なんじゃね?
などと考えながら体のあちこちをペタペタと触っていると、上から二人の声が聞こえてきた。
「パウロッ!返事してくださいっ!」
「パウロさんっ!だ、大丈夫ですかっ!?怪我してませんかっ!?」
「おー!大丈夫大丈夫!ちょっとドジっちゃったわー!足元気をつけて降りといでー!」
これ以上心配させないよう、元気一杯に返事する。
そして、突き立った槍を掴んで立ち上がりながら奥の方へと体の向きを変えると、そこにあったのは……
「おー、スッゲー。けど……これ、地底『湖』っつーか、池とか泉だな」
その表面積は上の広間と同じくらい。透き通ったその水自体が輝いているような地底湖。
その中心には『ボク耳』の描写通り、水晶のような塊が突き出しており、そしてその中には、妖精のような小さな女の子の姿があった。
内側から壁を叩くように両拳を打ちつけ、必死にこちらに何かを訴えている。しかし、やはり俺には何も聞こえない。
まぁでも、それもあと少しの辛抱だ。
安心させるべくニッ!と笑うと、俺は囚われの精霊に声を掛けた。
「もう大丈夫だから、ちょっと待っててなー。今、キミと契約出来るヤツが来るから。そしたらそこから出られるでしょ?」
「パウロッ!」
「パウロさんっ!よ、良かった……」
「おっ、来た来た。ここが終点ですよー」
俺の後を追って斜面を滑り降りてきた二人に、笑って手を振る。と、二人はホッしたような顔を見せた後、目の前の光景に絶句していた。
苦笑しつつ、俺はジョウの背後に回ってその背中を押す。
「ほれほれ?早く助けてやんな?お前の『神の耳』なら、あの子の声が聞こえるはずだから」
「えっ!?えっ!?えっ!?」
「な、何故貴方がそんなことを知っているんですか……?パウロ……?」
「えーっと……夢のお告げ?」
「原作読んでるからです」とは言えず、シャールの疑問に万能な台詞を返す。
けど、彼女は口を開いて呆然としてました(笑)
まぁ……気にすんなっ!!!
そうして俺は、まだオロオロするジョウの背中をバンッ!と叩いた。
「おらっ!背筋伸ばせ!自信持て!あの子を助けられるのはお前だけだぞ」
「……は……はい!やってみます!」
俺の一発で男の顔になり、ジョウは結晶体の方を向いて集中する。
若い子が成長する瞬間に立ち会えるのは、なんともオッサン冥利に尽きますなぁ。
「……あ、あの……」
「シー……」
まだ何か言いたげなシャールに、口元に人差し指を当てて見せてから静かに推移を見守っていると、やがてジョウは肩をピクリと震わせた。
「……聞こえます……!聞こえるよっ!教えて!ボクはどうしたらいいの!?」
俺にも、そしてまず間違いなくシャールにも何も聞こえていないはず。
だが、ジョウは『神の耳』で確かに精霊の声を聞き取り、対話していた。
やがて「分かったよ」と呟いた少年は、開いた右手を虚空に突き出す。そして、力強く言葉を紡いだ。
あのオドオドした気配を完全に消し去って。
「我が名はジョウ=マクスウェル!汝、水の精霊とここに盟約を結ぶ!其の名は……ウンディーネ!」
その瞬間……
「きゃあっ!?」
「うおっ!?」
薄ぼんやりと輝いていた地底湖から眩い光が溢れ、それと同時にガラスが割れるような大きな音が響き渡った。
これが『ジョウ=マクスウェル』の冒険の始まりか……
なんか……俺までワクワクしてきたな!
誤字脱字誤用があったら腹筋五十回。
この縛りを決めたアッシは、この話を完結させた時「腹筋板チョコー!」と言われるような腹筋を手にいれているだろう。
これを「なろザップ」と名付けよう。
そう思ってました。
あ、一部の某有名書籍化ネ申作家様方はやめといた方がいいですよー。
下手したら一話で腹筋パーンッ!てなると思うので。パーンッ!て。
しかし、案外腹筋出来ないんですよねー。まぁ初っぱなに百回以上やらされましたが……
何でだろう?プロ作家様でもあんなに誤字脱字誤用カマすのに……
というわけで、今話からわざと誤字脱字誤用を混ぜてみることにしました。
是非見つけてくださいねー。
これで、ガチで誤字脱字誤用カマしても「わ、わざとなんだからねっ!」というツンデレ風味の言い訳が出来る……と、とか思ってないんだからねっ!(ツンデレ風味)
正解発表は次話後書きで。
では……かかってこいやーっ!
( ノシ`∀´)ノシ オラーッ!