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後のお祭り騒ぎ


戦いが終わり、北の城門付近は街中の冒険者達が集まってのお祭り騒ぎになっていた。


この戦いでの負傷者は、俺を含めてたったの数人。

一番の大怪我はラギルで、その次が俺。死者は当然ゼロ。

文句ナシの大勝利と言えるだろう。


だが、皆が満面の笑顔を湛える中で、コイツらだけは器用にも憤怒の笑顔を浮かべていがみ合っていた。


「まぁ今回はどう考えても《吠える狼(俺達)》の方が多く狩ってたよな?」

「いやいや、隻眼でその目の悪さは致命的ではないですか?そろそろ引退を考えては?」

「お前ら、本当に仲良しだなー」

『はぁっ!?』


一触即発の空気で睨み合っていたのはバレルとラインズ。そんな二人を皮肉ると、ヤツらは見事に息を揃えた。

その様にジョウとシャール、俺の肩に座るディーネも隠れてクスクスと笑う。


しかし、今回は彼らに助けられた。それは事実だ。

きちんと礼は言わねばならないだろう。


「でも、マジで助かったよ。ありがとな、バレル、ラインズ。二人のトコのメンバーにも、俺が礼を言ってたって伝えておいてくれよ」

「お、おう……」

「わ、分かりました……」


俺が素直に礼を言うと、それでバツが悪くなったのか二人はフイッと互いに背を向けた。

この二人は原作ではただのバカだったのだが、最近はどうも「面白いバカ」になってきた気がする。


と、そこでジョウが突然「あっ!?」と声を上げ、走り出した。

向かった先、こちらに歩いてきていたのはラギルだ。腰には包帯が巻かれている。


「あ、あの、お怪我の具合は……?」

「あん?こんなの屁でもねぇよ。ガキが余計な心配すんな」


おどおどと尋ねるジョウに、ラギルは鼻を鳴らして胸を反らす。

その動きでわずかに表情を歪ませていたが、背が低いジョウには多分見えていなかっただろう。


そんなラギルに、ジョウは深く腰を折った。


「その……ありがとうございましたっ!ラギルさんっ!ラギルさんが庇ってくれなかったら、きっとボクは……」

「あー……その、なんだ……怪我がなくて良かったな……」


どう対応したものか、といった感じでモゾモゾしていたラギルは、フッと笑うとジョウの頭にそのでかい手をポンと置いた。

なんともはや、随分と男前になったものだ。

だけど……そのポジションはだな……


「……なぁ?シャール……?」

「はい?」

「俺とジョウの方が親子っぽいよな?」

「……何を言ってるんですか……?」


ジェラシーに「ぐぬぬ……」となりながら問い掛けると、シャールはスンッとした表情になっていた。


確かに見た目はラギルの方が親父っぽいけどさっ!大事なのは心の繋がりだと思うわけですよっ!


同意を得られず「うぎぎ……!」となっていると、不意にラギルが俺に頭を下げた。


「すんません、リーダー。足引っ張っちまって……」

「そ……あー、いや……んんっ!」


思わず「そーだ!そーだ!」などと言ってしまいそうになり、慌てて咳払いで誤魔化す。嫉妬に狂って八つ当たりなど、見苦しい事この上ない。

だから俺は『責任ある立場(リーダー)』の顔で首を横に振った。


「いや、本当に良くやってくれたよ、ラギル。今回の一番の功労者はお前だと思ってる。お前、世界を救ったかもしれないぞ?」

「ははっ!なんすか?それ?けど……ありがとうございます」


割りと冗談ではないのだが、まぁ普通に聞いたらそりゃ冗談にしか聞こえないだろう。

軽く笑ったラギルは、それから再び頭を下げる。

そんなラギルの隣で、ジョウは疲れも忘れたような笑顔を浮かべていた。


さて、これにて一件落着。

……と、綺麗に終わらせてゆっくりしたいところなのだが、どうやら騒ぎはまだ終わらないようだった。


「パウロッ!」

「パウロさんっ!?だ、大丈夫ですかっ!?」


俺の姿を見て、奇声を発しながら飛んできたのは、アイシェとドロシーだ。

その後ろには、大暴れ出来たのが嬉しいのか御満悦顔のファイエルと、ヤツとは対照的に何故か暗い表情のトッシュ、サラ、エミリーがついて来ていた。


「大丈夫っ!?早く治療しないとっ!」

「わっ!へ、平気平気。シャールに回復薬(ポーション)貰って飲んだから、傷はもうほとんど塞がってるよ」


遠慮なく飛びついてきたアイシェを受け止め、苦笑いで宥める。

ドロシーの方は躊躇したのか直前で足を止めていたが、体の一番前面に来る部位がガッツリと俺の左腕に押し付けられていた。


……ディーネちゃん、歯ぎしりはヤメようねー……シャールさんは殺気抑えてもらえると、オッサン嬉しいなー……


周囲からの好奇と嫉妬の視線もあって、冷や汗がダラダラ出てくる。

それを痛みのせいと勘違いしたか、慌てて身を離したドロシーは手にした鞄から美術品のように綺麗な小瓶を取り出していた。


「こ、これっ!最上級回復薬(エクスポーション)ですっ!使ってくださいっ!これなら体が真っ二つになってても、息さえあったら治りますからっ!」

「怖っ!?何その怖い薬っ!?ホ、ホントに平気だからっ!気持ちだけで十分だからっ!」


確か最上級回復薬(エクスポーション)って、一本ウン百万もする薬だったような……


ほぼ塞がった傷のために使うような薬じゃないと、俺は小瓶を押し付けてくるドロシーの手を慎重に押し戻す。

そこまでしてもらえる程に仲良くなるつもりではなかったのだが、とりあえず『もしもの未来』が来てもこれで一安心ではあるだろう。

……別の問題が生まれた気はするが……


ドロシー(主に胸)を睨みつけてから、アイシェは泣きそうな顔を俺に向ける。


「どうして紅蓮の鎧を着なかったのっ!?そしたらこんな怪我せずに済んだのにっ!」


そんなアイシェの言葉に、トッシュ達の体がビクリと跳ねた。ジョウの体もだ。

それで俺は彼らの暗い表情の意味を理解する。


彼らはきっと、自分達がこの鎧をプレゼントしたせいで俺が怪我をした、と思ってしまったのだろう。

だが、それは特大の勘違いだ。俺は紛れもなく、この鎧に命を救われたのだから。


アイシェの頭をクシャクシャと撫でて落ち着かせ、ジョウを、トッシュ、サラ、エミリーを見る。

そして俺は、まだ痛みの残る顔の傷を指で押さえた。


「いやいや、そりゃ違うぞ。これ見てよ。ギリギリで躱せたけど、それはこの鎧だったからだからな。紅蓮の鎧だったら体に怪我は負わなかっただろうけど、その代わり顔面に穴空けて死んでたと思うぞ」


これは決して御為倒(おためごか)しの言葉ではない。ありのままの事実だ。

実際に紅蓮の鎧を着てみた事はないのだが、関節部分まで保護する重量級全身鎧(フルプレート)なのだから今より素早く動けるわけがないだろう。


もしもこの軽鎧がなく、渋々紅蓮の鎧で出ていたら、俺は本当に命を落としていたかもしれない。

紅蓮の鎧を嫌って無防備で出ていたら、今よりもっと深い傷を負っていたかもしれない。

そう思うと、今さらながらに足下から脳天へと寒気が走った。


「だから俺が今こうしていられるのは、間違いなくこの鎧のおかげだよ。本当にありがとう。いくら感謝しても足りないくらいだ」


そう言って傷だらけになった鎧を軽く拳で叩くと、それでジョウ達の顔に落ちていた影はパッと晴れた。

が、その代わりと言っては何だが、今度は俺がヘコむ番だ。


「けど……みんながくれた鎧をいきなりこんなに傷だらけにして……俺の方こそゴメンな……」

「い、いえ!そんな!少しでもパウロさんの助けになったなら、オレ達は気にしませんからっ!」


ガックリ肩を落とした俺に、トッシュは焦りながら両手を振る。その隣でサラとエミリーも大きく何度も頷いていた。


「鎧は直せばいいだけですよ。一番大事なのは、それを纏う貴方自身です」

「そうですよ。それに鎧の傷は、それだけパウロさんを守れたという証ですから。ボク達はむしろ嬉しいです」

「本当に……ダーリンが無事で良かったぁ……」

「……キミら、マジで天使なのかな……?」


シャールの、ジョウの、ディーネの、皆の温かい言葉と眼差しに、思わずホロリと涙が出てくる。

ええ子ばかりやで、ホンマ……


だが、そんなホッコリとした空気の中でも、コイツだけはブレなかったが。


「しかし、お前をそんなにする奴か……くっそ、()り合ってみたかったな……なんで俺を呼んでくれねぇんだよ?」

「あー、お前はそういうヤツだよなー。うん、知ってた」


ただ一人ブーブーと文句を垂れるファイエルに全力で白い目を向けると、皆は呆れたような苦笑を漏らしていた。

シャールだけはチベットスナギツネの目で……いや、違う!これは威嚇の意思を込めたハシビロコウの目だ!


シャールさんの圧倒的な目力に気圧され、ファイエルは「うっ……!?」と一歩退く。

その姿に俺がつい吹き出すと、それでシャール以外の皆も声を出して大笑いをはじめていた。



こうして、原作から大きく乖離したこの戦いは終結したのだった。


……だが……


「……」

「どうかしましたか?」


見えない糸に引かれるように、ふと北の方を見ると、シャールが不思議そうに尋ねてくる。

そんな彼女に、俺は笑顔で首を振った。


シャールが気づかないなら、きっと俺の勘違いだ。

そんな風には到底思う事が出来ない。


俺を見ていた『誰か』は、確実に存在している。



レクシオンの北にある森の中。アクエルの入り口。


そこに、漆黒の外套で身を包んだ男は立っていた。

向く先は鬱蒼とした森、南の方角、その先にあるレクシオンの街。


男は、自身が力を与えた魔獣が消滅した事を察知していた。

そして、それが誰の手によって為されたのかも。


「……何故そこにいる……?パウロ=D=アレクサ……」


若いが重い声が洞窟の壁を跳ねる。

直後、男は自身の発した声を消すように(かぶり)を振った。


「……いや……『誰』だ?お前は……?」


そんな問い掛けを残し、男の姿は闇に溶けた。


その仮説が正しいとすれば、対処方は簡単だ。


処方箋なんかは『方』ですが、対処の『ほう』は『法』ですねー。


はい、ゴエモンさん、正解でーす。

どこか上手く仕込めるトコないかと一時間くらい探したのに……(アホ)

挙げ句の苦し紛れで瞬殺とか……orz


はい、腹筋しましたよー。


「事後の話も必要やろ」と思ってたら、全然描いてた絵図通りに進んでくれない……orz

でもピロートークは大事、絶対。

次こそは黒ゴブ裏話やります。


今回は誤用でーす。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 戦慄の膝小僧。 [気になる点] 【40話】 >だが、皆が満面の笑顔を湛える中で、この二人だけは器用にも憤怒の笑顔を浮かべていがみ合っていた。 うーん。私もこれは初見だと直前のラギルとパ…
[気になる点] 『本来の歴史のパウロ』の状況はこの戦闘終了時点でどれだけざまぁされていたかどうか
[一言] 一応ですが、「乖」という漢字は常用外なのでよほど「望ましくない」感を出す時以外は「解離」でも大丈夫ですよ。「乖」は「北」の字が含まれる通り意味は「離れる」というより「背く(つまりマイナス要素…
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