はじめてのギルド会議
ロロレイク村での一件から約一週間後。
算出された村の被害額は、小さな村ながらなかなかの金額だった。
教えたらまたベッコリとヘコんじゃいそうなので、ジョウ達にはナイショだ。
流石のSランクパーティーだけあって、パーティーの金庫から出そうと思えば出せる金額ではあったが、そうしてしまうと給料やら諸経費やらの支払いに少々影響が出そうで……
というわけで、俺は『こう』する事に決めたのだった。
◎
「こ、これもよろしいのですか?これは名工の逸品でして……」
「はいはい、もちろんです。ドンドン運び出しちゃってください」
実用性が全くなさそうなゴテゴテした剣を手に困惑した様子を見せる商人のオジサンに、俺はニコリと笑いかける。
その周囲では、商人さんが連れてきた使用人の皆さんがせっせっと剣やら槍やら鎧、盾を運び出していた。
そんな俺達を、セバスさんは苦笑しながら、アン、ドゥーエ、トロンの三人は部屋の外から「何事か?」と眺めている。
ロロレイク村の再建費用を捻出するため、俺は俺の部屋にあった武器・防具コレクションを売っ払うことにした。
これらはどれもこれも高価な物なのに、ただのインテリアと化していたからね。
ま、有効活用というヤツだ。すんませんなぁ(笑)
お飾りの武器・防具を軒並み運び出した部屋は随分とスッキリしてしまっている。
だからこそ、部屋の角に丁寧に飾られた『ソレ』は、一際強い存在感を放っていた。
「さて……問題はこれ、だよなぁ……」
「パウロ様……これは、その……」
俺とセバスさんが言う『これ』とは、『勇者パウロ』の代名詞とも言える全身鎧。
その名も『紅蓮の鎧』だ。
火竜鉱と呼ばれる魔法耐性が異常に高い希少鉱石で作られているらしく、とんでもない価値と性能があるのだとか。
……だけどねー……赤いんですよ……
ええ、それはもう、ビックリするくらい真っ赤なんだ……
原作『ボク耳』に出てくるパウロは、いつもドヤ顔でこの赤い鎧を身に纏っていた。
「仲間達を守るため、戦場のヘイトを一身に集める勇者の鑑」
「歩くシングルブル」
「パウロー、ダーツしようぜ。的はお前な」
「パッ〇ェッロ!パッジェッ〇!」
などなど、読者さんに色々皮肉られてたなー……
まぁ、若い内ってビビッドな色が好きだったりするよねー。
オジサンにもそんな時期あったから、あまりとやかく言わないでおくよ。
だけどもう、この歳になると原色の赤とか正直キッツイです。
だから俺がこの鎧を着ることは絶対ないし、売れば相当な額になると分かっているのだが……流石にそれは本物のパウロに気の毒な気がしていた。
「ま、コレは置いときましょうか?」
「それがよろしいかと」
苦笑いでセバスさんに同意を求めると、彼も苦笑いで応える。
部屋もスッキリした事だし、村の再建に必要な金額は手に入りそうだし、この鎧くらい部屋のアクセントに置いていてもいいだろう。
そう納得して、俺は一人で頷いた。
今日はこの後、とある用事があるのだが、きっとそこで俺は皆から驚いた顔で見られるのだろう。
あの『パウロ=D=アレクサ』が紅蓮の鎧を纏わずやって来た、と。
◎
冒険者ギルドの定例会議。
大体どこの街の冒険者ギルドでも月一のペースで開かれるこの会議は、その街の冒険者ギルドに所属する全てのパーティーのリーダーが一堂に会する場だった。
とは言っても、所詮この物語の作者が想像する『会議』である。建設的な話し合いをするような場ではない。
作中ではパウロが低ランクパーティーを馬鹿にすることで『クズ勇者』っぷりをアピールする場であり、やがてはメキメキとランクを上げていくジョウにパウロが「ぐぬぬ……!」となるためだけの場。
言わば学芸会の舞台だ。
だが、今日の俺はここで建設的な話をする予定だった。
《輝く翼》だけでなく、他のパーティーやギルド自体、その他にも様々なものの有り様を変えるために。
「あ、どうもー」
「パ、パウロ?」
「ど、どうしたんですか?その格好は?」
いつもの「俺スゲー」アピールのための紅蓮の鎧を纏わず、地味な私服姿で鞄を片手に下げてギルドへやって来た俺に、二人の男は目を剥いていた。
いや、彼らだけではないか。
ギルド内にいる全ての人達が「は?」という顔で俺を見ている。
大半がしっかり武装しているからね。
下手すると紅蓮の鎧を着ている時より目立ってしまい、俺は口元をひきつらせながら彼らに答えた。
「いやー、喧嘩しに来てるわけでもなし、別にいいかなー、って」
「お、おお……それはそうなんだろうけど……」
唖然としながら答えたのは、Sランクパーティー《吠える狼》のリーダー、『バレル=ベオウルフ』35歳。
自身もSランク冒険者で、片眼を眼帯で隠した熊のようなオッサンなのだが、二つ名は《月狼》だ。
《赤カブト》とかの方が似合いそうだけどなー。マジで二つ名俺と取り替えてくれないかなー。
「最近、不思議な噂を耳にはしていたのですが……どういった心境の変化ですか?」
「まぁ……色々あんのよ。ほら、男子三日会わざれば、って言うでしょ?」
「え?なんですか?それは?」
あ、しまった、作者の日本語レベルを見誤った。コイツが言葉を知らないだけかもしれないけど。
でも、キョトンとしてるだけで言葉の意味を追及するつもりはなさそうだから、まぁいっか。
彼の名前は『ラインズ=ギルガメス』27歳。
Sランクパーティー《明けの明星》を率いるリーダーで、こちらもSランク冒険者だ。
金色の長髪を持つイケメンなのだが、身に纏う鎧も金色で目がチカチカする。
二つ名は《金の騎士》というヤバめのモノで、俺の二つ名といい勝負だからあまり羨ましくはない。
《輝く翼》、《吠える狼》、《明けの明星》。
この三つのSランクパーティーがこのギルドのトップスリーで、パウロはいつもこの二人とつるんでいた。
態度が悪いのはパウロだけだったが。
この他にも何十とパーティーがあり、何十人ものリーダーがいるのだが、彼らはぶっちゃけ『モブ』だ。
パーティー名もリーダーの名前もほとんど分からない。
だから、頼りに出来るのは彼らだけなのだ。
「ま、立ち話もなんだから、会議室に行こうか。ほれほれ」
「あ、ああ……」
「そ、そうですね」
「はっはっはっ!」と笑いながら彼らの肩を叩き、並んで……と見せかけて彼らの後を追う。
それでは、会議室までの道案内、よろしくお願いしまーす。
◎
「ほぉぉ……っと!んんっ!」
会議室はレビュー動画で見た通り、まるでどこかの大学の講堂のような造りだった。
教壇があり、その対面に机が階段状に並んでいる形だ。
思わず漏れた感嘆のため息を飲み込み、室内を見回すと、やはりここでも奇異の視線が俺を刺してきた。
もう苦笑するしかないです。
と、その時だった。
「っと?」
「わっ!?す、すみません~」
室内に入ってすぐの所で棒立ちになってしまっていた俺の背中に、誰かがトンッと軽くぶつかってくる。
振り返ると、そこにいたのは何とも特徴的な格好をした女の子だった。
童話に出てくる魔女のようなトンガリ帽子と黒いローブ。
ほぼ黒に見えるダークグリーンの長い髪はモッサリとした二本の三つ編みに纏められ、漫画のようなグリグリ眼鏡を掛けている。
その見事なテンプレ魔女ルックに、俺は彼女が何者なのかすぐに理解することが出来ていた。
Cランクの薬師パーティー《黒い森》のリーダー、『ドロシー・ウッドネア』25歳、だ。
のんびりした喋り方で謝りつつ打った鼻の頭をスリスリさすっていた彼女は、俺の顔を確認した途端、見た目にそぐわない速度で後ずさっていた。
「パ、パウロさん!す、すみませんでした!ボーッとしてて!」
ドロシーがそんな反応を見せ、バレルとラインズが「まぁまぁ」と俺を宥めようとしているのは、パウロの行いの悪さ故だ。
アイツは自分より下のパーティーを総じて見下していて、特に支援系パーティーをとことん馬鹿にしていたから。
だけど、『俺』はそんな事で怒りませんて。
「いや、こっちこそこんな場所でボーッと突っ立っててゴメンな。怪我してない?」
「えっ!?へっ!?は!?」
「ははっ!大丈夫そうかな?本当にゴメン。さ、どうぞ」
混乱するドロシーに笑いかけて通り道を開けると、彼女は口をあんぐりと開けて俺を凝視したまま、フラフラと奥へ歩いて行った。
コケるぞー(笑)
混乱してしまったのは彼らも同じらしい。
「お、お前……マジでどうしたんだ……?」
「び、病院行きますか……?」
「何気にヒドいなー、アンタら(笑)」
最近身の回りの人達が少しずつ慣れてきてくれていたため、久し振りの感覚に俺は肩を揺らす。
彼らには事情を説明してもいいのだが……この反応なら今はいいか。
「ま、俺達も座ろうぜ」
そう判断し、席につくために俺は二人の背中を叩いた。
事の「転末」は以下のようなものだ。
「てんまつ」は「顛末」ですねー。
「顛」から「末」まで、という意味だそうで。
はい、くるぐつさん三連続正解でーす。
……ふいんき(なぜか変換できない)で読み流せやっ!
ヽ( `Д´)ノ
「ホットドッ『ク』になってるぞー」と誤字報告頂きました。
これ、確かにナチュラルミスだったんですが、「ク〇ラノベ世界が舞台ならこの方がある意味正しいなー」という事でこのままとさせていただきました。
ですが、ご指摘ありがとうございます。
m(_ _)m
今回は誤用ですよっ!
今回のはイケるっ!……と思いたい……




