ようこそ、《輝く翼》へ
「ジョウくんの仲間……になる予定の人達、ですか……」
「そうなんだよー……」
拠点の二階。パウロの部屋。
そこで、俺は頭を抱えながらシャールに事情を説明していた。
この子には全てを打ち明けててホントに良かったと思うよ。
お陰で一人で頭抱えずに済みました。
シャールは椅子に、俺はベッドに腰掛けて、話を続ける。
「俺が知ってるこの世界の流れだと、あの子達は《輝く翼》から手酷く追い返されるんだ。まぁEランクだからね、当たり前と言えば当たり前なんだけど。で、その結果ジョウと出会って、パーティーを結成する事になるんだけど……」
「……そうか……『貴方』のお陰でジョウくんは《輝く翼》に残れた……だから、あの人達の加入を断ってもジョウくんの仲間になる事はない、と」
「理解早くて助かるよ」
思わずため息が漏れる。
なら、「彼らを《輝く翼》のメンバーにすればいいんじゃないか?」となるかもしれないが……そこには一つ、悩ましい問題があった。
「だったら、彼らの加入を認めてあげたらどうですか?」
「ですよねー……そう考えますよねー……だけどね……」
思った通りの反応を示すシャールに、もう一度ため息が漏れる。
そして俺は顔に手を当て、指の隙間から首を傾げる少女を見た。
彼女には伝えておかねばならないだろう……俺が何故悩んでいるのか……
俺は出来れば、あの『女の子達』とジョウを近づけたくないのだ。
その理由は、当然ながら……
「……俺の知る流れだと、ジョウとあの女の子達は……いい仲になっちゃうんだよ……その……『男女』の意味で……」
「…………………………え゛っ!?」
たっぷり時間を置いてから、シャールは変な声と共に腰を浮かせた。
あたふたしながらヘンな踊りを踊るように手を動かしている。
「ど、どど、どちらとっ!?」
「……だから……あの女の子『達』……」
「…………二人ともっ!?ななな、なんでそんなことにっ!?」
「ぐえっ!?し、知らんわっ!作者に聞いてくれっ!」
「サクシャって誰ですかっ!?」
俺が変な声を出してしまったのは、混乱したシャールに襟首を掴まれたからだ。
つか、そんな倫理観あんのになんでハーレムに加わったの?キミ?
そう、ジョウが『ハメ太郎』になっていくその始まり。
それはサラとエミリー、あの二人の女の子を皮切りにして、だった。
実際は『皮切り』っつーか『皮剥……ゴホゴホ。
しかし、『二人』でこの様子だとすると、シャールにはディーネや他の精霊ちゃん達、それからやがて集まる女の子達の事は黙っておいた方がいいだろう。その中に自分も含まれてしまう事も……
精神が崩壊しちゃうかもしれないし。
肩を押さえて椅子に座らせ、ボクシングのセコンドの如くシャールを落ち着かせる。どうどう。
荒い呼吸を整えたシャールは、と同時にスンッとした表情になっていた。
「……今回はご縁がなかった、という事にしましょうか……?」
「おおう、結構容赦ねーな、シャールさん。けどなー……あの子達との出会いでジョウが成長する、って側面もあんだよ……良くも悪くも、だけど」
俺も再びベッドに腰を下ろし、また頭を抱える。
たとえ悪い友達だとしても、当人達からすると大事な交遊関係だったりするのだ。
それを俺の都合でなかった事にするのは、はてさて如何なモンかなー、と……
欲を言えば、俺はあの少年だけを仲間にしたい。「良くも悪くも」の「良くも」部分の大半は、これからジョウの親友となるあの子が占めている。
が、あの三人は幼馴染みの設定だ。
それをこちらの都合で引き剥がすのは、流石に酷というものだろう。
加入を認めた上でこちらに都合の悪い関わりは持たせないようにする、ってのも不自然だしなー……
まー、その親友からジョウは幼馴染みを奪い取り、あまつさえ親友が寝てるそばで毎夜毎夜盛るんですけどねー。
ハーレム物で男の仲間とは珍しいテンプレ外しだが、やっぱテンプレは大事だよね、うん。
この作品は、そんな大事な事を皆に教えてくれた。
以下、ネットや感想欄に溢れた反応である。
「ジョウ=俺(作者)。トッシュ=おまいら(読者)。という作者の圧倒的マウント」
「ハメ太郎め……吐き気を催す邪悪とは、まさにこのことだな」
「トッシュも混ぜたげてぇぇぇぇぇぇ!!!」
「トッシュ「んほぉぉぉぉ!ジョウくん!しゅごい!」」
「違う。そうじゃない」
「あたし!そういうの嫌いじゃないから!」
「僕も!」
「変態湧いてて草」
いやー、カオスでしたねー。
あまりにトッシュが可哀想過ぎて、彼を主人公にした二次創作まで出たんだとか。
ここまで読者の心を揺さぶる物語を書ける作者は、もしかしたら天才なのかもしれない。
まぁ、それはさておき……
「……どうする……?」
「どうする、って言われても……」
困り果てて尋ねると、シャールさんも困り果てたような顔をしていました。ですよね。
俺の三度目のため息は、シャールのため息と綺麗に重なったのだった。
◎
「あ!いた!ただいま!ダーリン!」
シャールと一緒に二階から下りてくると、元気な声とともにディーネが俺の顔にベチンと張りついてきた。
もうね、慣れたから動じませんよ。
「おう、おかえり。やっぱり早かったな」
「えへん。私も頑張ったんだからねー」
俺の顔から離れて、ディーネはドヤ顔で胸を張る。
ジョウとディーネは若手の連中の編成に加わって朝から出掛けていた。『ココロ茸』とかいう、魔法薬の原料になる希少なキノコを採集する依頼のためだ。
なかなかのレア物らしく、普通は簡単に見つからない物らしいが、ジョウなら余裕だっただろう。
なんせ『神の耳』で情報を集められる上、今はディーネという優秀な精霊までいるのだから。
「あっ!パウロさん。シャールさん。ただいま戻りました」
ディーネに遅れを取りながらも俺達を見つけたジョウは、無邪気な笑顔を浮かべてトコトコとこちらに歩いてくる。
そんな少年の頭を、俺も笑いながら撫でてやった。
「おかえり。俺が思ってたより、ずっと早かったな。さすがジョウ」
「本当ですよ。下手したら数日山に籠っても見つからないかもしれない物なのに。さすがジョウくんです」
「でしょでしょ?私のマスターはスゴいんだから」
「え、えへへ……」
俺達に手放しで褒められ、ジョウは真っ赤になりながら照れ笑いを浮かべる。
そんな姿に、俺とシャールの顔は自然と綻んでいた。
んー……なんだろうね?この圧倒的な『パパ・ママ・息子・ペット』感。
シャールとディーネに言ったらメッチャキレられそうだけど。
なんて事を考えつつ隣に立つシャールの顔を見ると、俺を見返す彼女は表情を引き締め、やや緊張気味に頷いた。
「少し話があるんだけど、今からちょっと時間もらえるか?二人とも」
「はい。構いませんよ」
「何かあるの?ダーリン」
「ちょっとな」とだけ答え、ディーネをジョウの頭の上に誘導してから、俺は少年の背中を押すように歩き出す。
向かう先は、慣れない場所で所在なさげにしている三人組のいる席だ。
戻ってきた俺とシャールの姿にホッとした様子を見せる三人に、まずは待たせた事を謝る。
「放置しててゴメンな。キミらの事について、シャールと話し合いしてたんだ」
「い、いえ!大丈夫です!」
立ち上がりかけたトッシュ達を「まぁまぁ」と押し止め、近くのテーブルから椅子を二脚引っ張る。
一脚に状況が分からずモジモジしているジョウを、もう一脚に神妙な面持ちのシャールを座らせ、俺はテーブルに残っていた空き椅子に腰を下ろした。
俺とシャールが話し合った末に出した結論。それは……
「さて、話し合った結果だけど……俺とシャールはキミ達の加入を一応認める事にした」
『っ!』
原作通り彼らにジョウの仲間になってもらう、だった。
決め手は未来の変化を、原作シナリオからの乖離を最少限に抑えるため、だ。
いくら原作を知っているとはいえ、あまり大きく改変し過ぎると俺にも不測の事態が起こりかねない。
せっかくのアドバンテージを自ら放棄するのは、やはりいささか無謀だろう。
その代わり、爛れた生活&性活をしないよう、指導と監視はキッチリさせてもらいますけどねっ!
ただし、これはあくまで『一応』の措置だ。
『……やっ……!』
「ちょい待ち!まだ喜ぶのは早い!」
『やったーっ!!!』と、三人で喜びを爆発させたかったのだろう。
バンザイする勢いで立ち上がりかけたその出鼻を、突き出した掌で挫く。そして、まずは三人に椅子に戻るよう伝えた。
「一応、って言ったろ?ギルドでも言われたと思うんだけど、《輝く翼》の加入最低条件はCランクだ。キミらは駆け出しですらない、素人だろ?」
俺の指摘に、三人は「うっ……」と言葉を詰まらせてうつむく。
直接向けられた言葉ではないにしろ耳が痛かったのだろう。ジョウも下を向いていた。
だから、俺とシャールお姉さんからの宿題です。
「そこで、だ。紹介するよ。コイツはジョウ=マクスウェル、そして契約精霊のディーネ。コイツはキミらの先輩になるわけだけど、コイツもEランクなんだ」
俺が三人にジョウとディーネを紹介すると、ジョウは遠慮がちにペコリと頭を下げた。人懐っこいディーネは笑顔で手を振っている。
それから、一つ咳払いをしてシャールが俺の言葉を継ぐ。
「これから、ジョウくんと貴方達三人は行動を共にしてもらいます。そして……一ヶ月以内にCランクへと昇格してください。それが正式な加入の条件です」
「依頼は《輝く翼》で受諾した物の中から選んでいいよ。Cランク依頼で慣らして、Bランク依頼をチョコチョコっとクリアしたら余裕余裕」
三人に、というか、サラとエミリーに厳しい目を向けるシャールのフォローとして、俺は明るく笑う。
本来ならば一ヶ月でEランクからCランクへのジャンプアップなど考えられないそうだ。
が、大丈夫大丈夫。原作ではこの通りやってのけてたから。
『……え……えええええええっ!?』
しばし硬直した後で、四人は綺麗に驚嘆の声をハモらせていた。
ま、最初っからそれだけ息が合ってれば心配ないんじゃないかな?(笑)
革製の鎧と『素っ気ない』剣、というその姿は、見るからに『ザ・駆け出し剣士』という装いだ。
「素っ気ない」は「思いやりがない」といった意味ですね。
態度に関する言葉です。「シンプル」みたいな意味にも見えますよね。
ここは「飾り気のない剣」なんかがいいでしょう。
ゴエモンさん、正解でーす。
ヽ( ´∀`)ノ
さて、仲間が増えてきて、ここから面倒クサいの何の。
今回の現場は「オッサン、シャール、ジョウ、ディーネ、トッシュ、サラ、エミリー」で七人ですよ、七人。アラヤダ奥さん。
人数が増えれば増えるほど面倒クサさがグッとアップするんですよねー……
今書いてる部分なんて登場人物九人ですからね?地獄っすわ。
しかしまだまだ増える予定……orz
組み立てマジで考えないと……
はい、とゆーわけで、今回は誤字でーす。
多分ですが、なかなか見つからないんじゃないかなー、と(ニチャア)
さー、ガンガレッ!
ヽ( ゜∀ ゜)ノ
 




