パウロの屋敷と老執事
お貴族様クラスが屋敷を構える郊外の住宅地。
そこに『パウロの屋敷』はあった。
原作によると、パウロの力や名声にあやかろうとした金持ち貴族様が下心丸出しでヤツに進呈したものだ。
うっかり一人で来てしまった俺はこの屋敷の場所が分からず少々困ってしまっていたのだが、そこは素直に道を尋ねることにした。
「最近遊び回って家に帰ってなかったから、家の場所忘れちゃったんすよー(笑)」と。
皆さんアホ……あまり深く考えない方々ばかりなのか、はたまた「パウロならあり得るなー」と思われたか、フツーに優しく教えてくださいました。ありがとうございます。
そうしてここまでやって来たわけなのだが……
「……どないしよ……?」
ドデカい屋敷を前に、俺は二つの理由から立ち尽くしていた。
一つ目の理由は、このデカさ故に維持費が全く想像もつかないことだ。
二階建てで、正面から見える部分だけでも窓が三十近くある……
固定資産税とかどうなってんのかなー……まさか、あの七百万は割りと納得の金額なんじゃ……
もう一つの理由は……単純にどう入ったらいいか分からないんです……
閉じた金属製の門扉から玄関まで二十メートルくらい?
柵は乗り越えられそうだけど、それ家主のやること?大声で叫ぶのもちょっとなー……
こんな細かい部分の描写はなかったため、「どうしたものか?」と門の前をウロウロしてみる。
と……俺は門柱の部分にインターホンらしき物を発見してしまっていた……
「え?ウソん?」と、しばらく逡巡してみるが、悶々と悩んでいても埒が明かない。
覚悟を決めてインターホン?のボタンを押すと、世界観にそぐわない、だが思わず心からホッとしてしまう『ピンポーン♪』音が鳴り響いた。
……まさか作者に親近感覚える日が来ようとは……
ほぼ間を置かず、渋い老人の声が返ってくる。
『はい。どちら様でしょうか?』
ここで痛恨のミス。返答のセリフをまるで考えていなかったのだ。
なので、泡を食った俺の返事は不審者のようになった。
「え、えっと、パウ……違う!えっと!お、俺だ……です……」
「はい、アウトー」とね、自分でそう思いましたよ。
しかし、やはりこの世界はユルユルだった。
インターホン?の向こうの老使用人が優秀なのかもしれんけど。
『おかえりなさいませ、パウロ様。ただいま門をお開けします』
「え?あ、う、うん……ありがとうございます……」
淀みのない返事に、力ない謝辞を返す。
もうね……ツッコむ気力もないです……
しかし、そんな俺にも、この世界は容赦なかった。
「……自動で開くんかーい……」
キィ……という小さな音を鳴らして勝手に開いた門扉に、口からは意思に反して弱々しいツッコミが漏れ出る。
これ以上考えたら負けだと、俺はフラフラと屋敷の方へ無理矢理足を動かすのだった。
◎
老執事のセバス。三姉妹のようなメイド、アン、ドゥーエ、トロン。「まいうー」とか言いそうな料理人、ヅッカ。
作中で登場した使用人はこの五人のみで、「いや、五人じゃ管理無理やろ?」「読み手の脳内補完力が試されてるんやで」などと色々言われてきたこの屋敷の使用人は……本当に五人でした。
まー、使ってない部屋は掃除とかあまり必要ないだろうしねー……
しかし今の俺としては、関わらなければならない人数が少ないのはありがたいことだ。
この辺りのツッコミはそっと胸の奥に仕舞い込んでおこう……
パウロを出迎えるセバスさん以外の四人の様子はどこか萎縮していて、それだけで『パウロ』という人物の像が見えるようだった。
そんな彼らに他人行儀気味な挨拶をしてから、セバスさんに先導してもらって自室に辿り着いた俺は……
「……アホか……」
頭を抱えてため息をついていた。
所狭しと飾られた、「鑑賞用?」と言ってしまいたくなるくらい実用性がなさそうな武器&防具コレクションのせい、というのも一部あるが、大半はこの屋敷の家計簿的な物が原因だ。
無駄に豪華な机につき、セバスさんが手際良く用意してくれた書類に目を通した俺は頭痛を感じてはいたが、同時に安堵も感じていた。
どうやら思ってたより維持費は安く済みそうだ、と。
まず、固定資産税のようなものはないらしい。これはありがたい話だ。
拠点の事務室で調べた限り所得税的なものも大した額じゃなかったんだけど、どこかでドデカく徴収してんのかね?
それとも、謎の力で国を回しているのか……
光熱費的な部分と雑費も大した金額ではなかったが、食費は結構金額が大きかった。
「この世界だとこんなものなのか?」とセバスさんに尋ねてみた所、パウロの指示によりパウロの食事には「かなり高価な食材を使用している」との回答。
はいはい、削減削減。
そして何より大きく、かつ無駄な出費は、月に一、二度開催されているパーティーの費用だった。これで月に数百万イェンがブッ飛んでいる。
貴族社会だと必要な経費なのかもしれないが、ー介の冒険者に必要なもんかね?
貴族の仲間入りを目指していたとするとパウロには若干悪い気もするが、俺としてはこんな催し物は死んでもゴメンだ。
というわけで、これもカット。
こうして見直してみると、屋敷の維持費は月に百万イェンもいらないくらいだった。散財していた頃でもパウロの手元にはニ~三百万からの金が残っていた事になるので、どれだけパウロの給料が馬鹿げたものか分かるだろう。
ただ、人件費に関してはかなり低く設定されていた。
いや、俺はこの世界の常識をあまり知らないから、実際にこの金額が低いかどうかは分からないんだけど……それにしても三人娘の給料が月数万イェンは少ないんじゃないかと思う。食費と家賃がゼロだったとしてもね。
なのでこの辺りを少々見直して、もしもの時のための貯蓄分を考えても……
「うん、月に二百もあれば余裕かな」
全てのチェックを終えて、俺は大きく息を吐く。
と、そこで一時退室していたセバスさんがお茶を用意して戻ってきた。
「お疲れ様です、パウロ様」
「ああ、ありがとうございます」
本来の『パウロらしさ』をかなぐり捨て、軽く頭を下げると、それでもセバスさんは淀みなく俺の前にお茶のカップを置いた。
「まるで隙がない」とは、きっとこういった所作の事を言うのだろう。
撫でつけた白髪、整った白髭の、凛々しい老執事の動きは、俺みたいな一般人にもそう思わせるものだった。
最初は本気で違和感に気づかないのかと思っていたが、どうやらそうではなさそうだ。彼は、「何かおかしい」とは思いながらも己の職責を全うしているのだろう。
お茶をメイドに準備させずに自分で持ってきたのは、その表れなんじゃないかな?この『得体の知れないパウロ』から彼女らを守るために。
その警戒心に逆にホッとしつつ、俺はずっと考えていた事を彼に話すことにした。
『パウロ=D=アレクサ』として好きにやらせてもらおうと決意した時に決めた考えを。
「少し、お話ししたいことがあるんですが、構いませんか?」
「はい。何のご用でしょうか?」
話を切り出すと、セバスさんは距離を置いた状態で直立した。
意を決して俺は口を開く。
「薄々お気づきのようですが……『俺』はパウロ=D=アレクサではありません」
「っ!?」
ここまでハッキリと言われるとは想定していなかったのか、おかしいと思いつつもそんなことはあり得ないと思っていたか、セバスさんは明らかに動揺した様子を見せる。
まぁそりゃそうだろうね。こんなこと突然言われたら、俺だって「はっ?」ってなると思うよ。
だけど、どうしてこんなことになったのか分からない以上、この状況がいつ終わるのかも分からないのだ。
前触れもなく本物のパウロが戻ってきた時、俺が勝手にやった事で彼らが被害を受けるのだけは避けなければならない。
そうなると、信頼出来る一部の人間には事情を全てつまびらかにしておき、いざという時に対処出来るようにしておくのは必須だった。
これは《輝く翼》の方でもやっておかねばならない事なのだが……やっぱ今は『彼女』しかいない、か……
あんまり子供に面倒事押し付けたくはないんだけど……
本当は、真の適役が一人いる。
パウロの師匠のような存在で、《輝く翼》の最高顧問的ポジのオッサンだ。っても、俺より若いんだけど……
だが、『この現実』がある程度原作ストーリーをなぞっているのなら、彼の登場はもっと後になる。
なんでも特殊な依頼を受けてこの国を離れているんだとか。
まぁ設定上のもので、どんな依頼だったのかは一切明らかにされてなかったが。
ということで、彼が帰ってくるまでの繋ぎとして、俺はシャールにも全てを話す覚悟を決めていた。
だけど、まずはこの場からだ。
「これからする話は信じられない話かもしれませんが……ああ、少し長くなるので、そちらにどうぞ」
話を始めるより先に、俺は立ったままのセバスさんにソファへ座るよう促す。
少し躊躇っていたが、笑顔でもう一度促すと、彼は黙って従ってくれた。
さて、信じてもらえるといいんだけど。
「メンバー全員の給与見直すんでっ!ここ数年の『帳薄』お願いしゃすっ!」
帳簿の『簿』と薄いの『薄』って似てますよねー(笑)
…………だから何で分かるのよぉぉぉぉぉぉぉっ!?
しっかり読んでいただいてありがとうございますぅっ!!!(多謝)
嘴さん、お見事でごさいやす!
( 怒´∀`)
今回の誤字……誤字?……ご、誤字は、日頃の感謝を込めて超低難度にしてみました!
………………ある意味で(ボソリ)……………
さぁ!見つけてみやがれくださいっ!
ヽ( `∀´)ノ
見つけにくい(ある意味で)誤字仕込んだら余計にアラを見つけられるとゆー……
( ´・ω・`)
仕込み見つけられる前に腹筋150回だってさー……
わぉ、腹筋350回まで育ったよー……(泣)




