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第5話 スライム

  迷宮転移(ダンジョンワープ)はDPを使って、ダンジョン内の好きな所にワープすることができるユニークだった。


  これがダンジョンを異世界と接続する前でも使えるらしい。

  創ったダンジョンを体験してみることができるということになる。

  実際に体験してみれば罠を設置する位置や、モンスターの強さなど、ダンジョンを創る上でかなり参考になるだろう。試してみない手はない。


  ただ、召喚しているモンスターはダンジョンマスターである俺に攻撃してくるのだろうか?

  攻撃してくるとして、俺は無事にクリアできるのだろうか?


  「試してみないと分からないか…」


  階層創造(クリエイトフロア)で、さっき迷宮の書(ダンジョンブック)から設定したスライムの最大召喚数とポップ速度を再設定する。

  一度召喚すれば設定を変更するのには、DPはかからない。


  スライム 1/1


  うん、当然召喚上限1体の召喚速度、最低設定。

  俺がスライムより弱い可能性あるからね。

 というか、弱い自信あるからね!


  「じゃあ、とりあえず見てみるか。」


  迷宮転移(ダンジョンワープ)を意識すると階層を選ぶように表示されたので、一層を選ぶ。


  視界が一瞬歪みはっきりすると、さっきまでいたマスタールームではなく、ゴツゴツした石の壁に囲まれた通路の端にいた。


  通路幅は三~四メートルくらいで地面から天井も同じくらいだ。壁自体が少し発光していて薄暗いといった感じだ。

 

通路の端に石の壁がなく、俺が落ちていた白い雲のようなモヤモヤになっている部分があった。迷宮転移(ダンジョンワープ)で階層以外の指定がでなかったことを考えると、異世界に接続後はここがダンジョンの入口になるのだろうか?


試しに白い雲のようなものに触れてみようとしたら透明の固いものに阻まれた。見えているのに触れない不思議な感じだった。

ここがダンジョンの入り口なら、おそらく異世界に接続するまではここからは進めないのだろう。


  スライムを探しつつダンジョンを歩いてみることにする。


視界のすみには、先程創った一階層のフロアマップが小さく表示されている。


  マップを見ながらゆっくり進んでいく。


石の地面は特に歩きにくさは感じられないが、長時間歩けば結構疲れるかもしれない。

水などで濡らすことができれば滑りやすく、かなり不安定な足場となるだろう。

視界に関してももう少し暗くすることができれば魔物の接近に気がつきにくくなり、不意討ちを受けやすくなりそうだ。

実際に体験してみないと分からないが、こうした情報はダンジョンを創る上で役にたつ。


周りを観察しながら今後の参考になる情報を集めつつも緊張感を保ったまま進んでいく。


  スライムが攻撃してくるのか分からないが、突然襲われる可能性もあるので、曲がり角や小部屋に入るときには特に慎重に進む。


  おそるおそる二つ程部屋を通過した通路の先についに奴を発見した。


  バスケットボールより少し大きい半球状の緑色のゼリーのような体のスライム。

  もぞもぞと地面をはっている。移動速度はかなりゆっくりだ。


スライムに向けて解析を意識してみる。


『スライム』


うん、知ってる。


  解析の結果が参考にならないので、何が起きてもいいように全神経を集中させて五メートル位の距離までゆっくり近づくと、こちらに気がついたのか向こうもこちらに向かってくる。

  移動速度はゆっくりのままで、襲ってこようとしているのか、ペットが飼い主によってくるようにこちらに来ているのか判断がつかない。


  止まって身構えていると、一メートルくらいまでよってきたところで触手のように体の一部をこちらに伸ばしてきた。

  移動速度に比べると速い!


  「うぉっ!? 」


  体をひねって避けることはできたが、身構えていなければ危なかった。

  慌てて距離をとる。


  「危なかった…普通に襲ってくるんだな。」


  移動速度は遅いままなので距離さえとっていれば攻撃をくらうことはないようだが、問題はどうやってこちらから攻撃するかだ。


  あのゼリー状の体に直接触るのは怖いので蹴りしかないが、倒せるのだろうか?


  しばらく距離をとりながら考えていたが、


  「………よしっ、迷宮転移(ダンジョンワープ)! 」



 

 

  マスタールームに戦略的撤退をした俺は、迷宮の書(ダンジョンブック)を開いた。

  奴に勝つための武器を得るためだ。

  武器のページをめくりながらどの武器がいいのかを考える。

 当然これまで武器など使ったことがない。ファンタジーの定番といえば剣だろうが、戦闘というもの自体に慣れていないのに、いきなり剣を使えるのだろうか? 振り回して自分を傷つけそうだ。

  槍なら距離もとれるが、剣以上にうまく扱える気がしない。


 


  迷宮の書(ダンジョンブック)を見ながらかなり迷ったが、杖と短剣を選ぶことにした。


  スライムと打撃は相性は悪そうだが、バット位はふったことがあるのでその代わりの杖と、剣よりは使い易い刃物ということで短剣だ。


  ケヤッキの杖 1000DP

  鉄のナイフ 800DP


  ケヤッキはおそらく地球にあったケヤキだろう。鉄のナイフはサバイバルナイフくらいの大きさの普通のナイフだった。

  かなりDPを消費したが、武器なしに奴と戦うことはできない!


  マスタールームで、杖を振り回してみる。

  見た目は軽そうに見えたが、けっこう重さはある。フルスイングしたり、片手で振ってみたりを何度か繰り返して、バットの代わり程度には使えることを確認し、再び迷宮へと向かうことにした。

 



  ナイフはカバーがついていたのでベルトの間に差し込み、杖を手にもつ。


  迷宮転移(ダンジョンワープ)で再び一層に向かい、奴を探しながら歩く。

  どうやら奴はそれほど移動しておらず、同じ通路にいた。


  ドキドキとうるさいくらいになる心臓の音を聴きながら少しずつ近づくと、奴もこちらに気がつき向かってくる。

  前回と同じような距離になったとき、やはり触手?攻撃をしてくる。

  今回は来ると分かっていたので、右に飛んでよけ、そのまま踏み込み奴の真上から両手で持った杖を全力で振り下ろした!


  グチャと奴の体の半分程まで杖はめりこんだ。

  杖を振り上げ、そのまま後方に跳び距離をとる。


  どうやら杖の一撃は効果があったようで、奴の体は少し小さくなっており、動きも心なしか遅くなった気がするがかわらずにこちらに向かった来る。


  再び繰り出された奴の一撃をかわし、真上から叩きつける。

 最初の一撃よりもさらにめりこみ、手応えを感じた。


  再び距離をとって、観察するとあきらかに最初より小さくなって、動きが遅くなっている。


  それでもこちらに向かってくる奴と三度目の攻防を行う。

  奴の攻撃を避け、振り下ろされる杖。

 

  俺は奴を潰しきり、地面まで砕かんばかりの勢いで一撃を加えた。


  この一撃で、奴はピクピクと震えながら次第に動かなくなった。



  こうして俺とスライムとの死闘の幕は閉じたのだった…。

 

 


 


 


 





 




 

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