第2話 ダンジョンマスターへ
「やっぱりダンジョンマスターになってるな…… 」
目の前の文字を確認しながら自分に起こったことを推測していた。
おそらく電車で事故にあった。
結果、異世界に転生もしくは、転移。
その途中で神的なものにダンジョンマスターにしてもらった。
そこまで詳しいわけでもないが、読んだことのある異世界転生もののネット小説を参考にたてた推測だ。
ただ、他に根拠がないわけでもない。
目の前に浮かんでいるものを確認して、大まかに二種類に分けられることが分かった。
「俺自身の情報」と「ダンジョンをつくるためのメニュー」のようなものだ。
「俺自身の情報」とは、いわゆるゲームなどでみるステータスのような画面だ。
―――――――― LV 1
人族 ダンジョンマスター
男 (16)
HP 100
MP 100
SP 100
STR 40
VIT 40
DEX 40
INT 60
スキル
解析LV2 料理LV3 算術LV4 交渉LV3
教育LV2 説得LV2 睡眠耐性LV2
ユニーク
処理室
階層創造
迷宮の書
迷宮転移
加護
―――――の加護
称号
異世界人
称号に異世界人とあるので、転移か転生してこの世界に来たということで人族の横のダンジョンマスターが白い空間でダンジョンマスターにしてもらったということだろう。
一番上の名前?の部分は?
「おっ! 」
名前と思われる部分を意識するとゲームの名前の入力画面のようなものが出てきた。
本名の中村義隆を入力してもよかったが、ステータスがあるので、ゲームなどでよく使うギリューと入力した
人がいるのかすら定かではないし、ダンジョンマスターがこの世界の他の人と関われるのか分からないが、異世界人の扱いが不明な以上は異世界人とバレる可能性のある名前は避けておいた方がいいだろう。
義隆からギリューを連想することは、他に異世界人がいたとしてもないと思う。
ギリューが周りからみておかしいようなら中村義隆を名のろう。
性別の横の数字が年齢だと思うが、16となっている。
鏡がないので確認できないが、手肌を見ると若くなっているようだ。
16歳というのが半端な気もするが、考えても理由は分からないので運がよかった程度に思うことにした。
ダンジョンマスターの部分に意識を向けると説明のようなものが表示された。
ダンジョンマスター
ダンジョンを創造する者。
自分のダンジョン内では不老。
食事・睡眠を必要としない。
自分のダンジョンの外では力が減少する。
不老であって不死ではないらしい。
…ダンジョンを攻略されたりしたら殺される可能性もあるということか。
食事・睡眠は「必要としない」だから、とることもできるのだろう。
睡眠はともかく、食事は食料を安定して手に入れることができるか不明なので、当面は助かるだろう。
いずれは異世界のものを食べてみたいが。
ステータスについては、比較対象がないのでよく分からない。
ゲームなどの通りならHPが生命力でMPが魔力として、SPはスタミナかな?
STR・VIT・DEX・INTが筋力・耐久・敏捷・知力として、INTが他より少し高いのは職業柄なのか、単に運動不足なのか。
スキルは、日本にいたときの影響がありそうなものばかりだ。
料理は好きだったからだとして、算術は日本の義務教育のおかげだろうか?
解析・交渉・教育・説得はSVとしての仕事で獲得したものだろう。交渉が高いのはオーナー、上司、取引先と一筋縄ではいかない相手ばかりだったおかげか?
睡眠耐性は日本の社会人のほとんどは取得してるんじゃないか? 考えると悲しくなってくるね。
…元サラリーマンだから当然だけど見事と言っていい程に戦闘には向いてなさそうだな。
スキルを試してみようと今いる部屋の壁を触って解析と念じてみると、『マスタールームの壁』とだえ表示された。
ここはマスタールームらしい。
解析というより、鑑定といった感じだがスキルのレベルが上がれば成分何かも表示されるのかもしれない。
スキルの下のユニークは、ユニークスキルか?
階層創造・迷宮の書・迷宮転移はダンジョン関係の能力として、処理室は?
ユニークについては説明が出なかったので、現状では分からない。
「ん? 処理室は解析中? 」
処理室に意識を向けると『解析中』と表示される。
落下中にでた『解析』はこのことか?
スキルの解析と何か違うんだろうか?とりあえず今の解析が、終わったら検証してみよう。
加護の部分も説明がないので分からない。
名前と思われる部分が―――となっており、効果も表示されない。あの声の主の加護なのか?
「はぁ、本当に異世界に来たみたいだな。」
一通りステータスを確認して、ごまかしていたが冷静に考えると思わずため息が出た。
あの電車の事故?でどうなったのか分からない。考えたくはないが地球では死んだという可能性もある。
一応、可能ならば帰る方法を探してみようとは思うが、なければここで生きていくしかないのだろう。
幸い俺には家族がいなかったので、迷惑をかけるとしたら仕事関係の人達か…
申し訳ないが、どうしょうもない。
……しばらく元の世界のことを考えてから、これからのことを考えることにした。
悲しませる家族がいないとはいえ、こんなに簡単に割りきれるあたり、ステータスの何かが影響しているのかもしれないが考えても分からない。
とりあえず今できることはダンジョンを造ることだ。
どうせここで生きていくのなら、『ダンジョンマスター』を楽しむとしよう。
俺は期待しながら、『ダンジョンを造るメニュー』の方へと意識を向けた。