セミがいない夏
あったはずの木がなくなった
苦情が役所に行ったらしい
何十年かけてのびたのに
たった一日で
公園にまた日向が増えた
夏の日差しが溢れてまばゆい
せっかくの公園なのに
ベンチの影だけで
いつのことだろう
ペンペングサを摘んだこと
ネコジャラシでくすぐった
タンポポの綿毛を飛ばした
お店にいるカブトムシ
でもそれは養殖された命
淡く立ち昇るカゲロウ
でもそれは命ではない陽炎
いつからだろう
アゲハチョウを見ていない
テントウムシもカマキリも
追いかけてみた赤いトンボも
いつなのだろう
雨の日もカエルがいない
スズメは減っただろうか
ツバメはどうだろうか
いつの間にやら
野良イヌみたいにもういない
街で見かけた人たち
ときどきネコは鳴くけれど