ダンジョンでの会話
だいぶ進んだ頃、まだモンスターの気配は感じなかった。
「その武器って、もしかすると、操力武器ですか?」
口を開いたのはファラヴァ。
「うん。武器屋で買ったんだ。」
「ふむふむ。武器屋でも売られているんですね。」
「ファラヴァの武器は特性を持っているのか?」
「実は私も操力武器なんです。」
ファラヴァは照れたように言った。
「じゃあ、戦闘が起きても多少は、カバーしあえるかもな。」
「そうですね。見たところ、村雨さんって強そうですもんね。」
まあ、さすがに、あんだけ特訓していたから、少しは筋肉がついていた。
だからこう思われるのもしょうがないと俺は思った。
「実は、ファラヴァの方が強かったりするかもだけどね。」
「ええぇぇぇ!そ、そんなことないですよ…」
そんなダンジョンの中とは思えない会話が続いていた。
しいてはモンスターの気配がするというのに。
「少し教えてもらいたいことがあるんだけど。」
俺は、ちょっと質問しようと思ったのでこう言った。
「いいですよ。なんでしょう?」
「操力武器の、力を使った技ってなんていう名前なんだ?」
「それは、流力技といいます。
流力は、全部で200通り以上あるといわれています。」
「へえぇ。
でも流力技って自分で見出せる技もあるんじゃないか?」
「まあ、200通りというのは、基礎技みたいなものですから、そのようなオリジナルな技もあると思います。」
「ほう。
じゃあ、今度、流力技についてもう少し教えてくれないか。」
「いいですよ…って、今度!?」
「あ、ああ、ダメか?」
「い、いえ、今度があるんだなぁと思っちゃって。」
「そういうことね。
てっきり拒絶されたのかと思った。」
「あ、あははは…」
今度って言っても、どうすりゃいいんだろう。
場所とかも決めなくちゃな。
「今度会うんだったら、俺の特訓場所来るか?
実は、独占状態だから気を使わなくてもいいと思うよ。」
「独占状態?
いったいどんな場所で、特訓してるの。」
「森の中。」
そういうと、数秒間、間が空いた。
「も、森を独占て…す、すごいね。」
ファラヴァは放心状態のような表情だった。
「はは、ある人に借りててね。」
「でも特訓の邪魔なんてしていいんですか?」
「邪魔というか、むしろ助かるよ。
足りない知識を埋められるからね」
「じゃあ、こちらからもありがたく、行かせていただきます!」
ファラヴァは、少し、ニヤニヤした表情だった。
俺は、流力技について教えてもらえるということで、とてもわくわくしていた。
それに、武器についての知識ももっと欲しい。
もしかしたら、剣の潜在能力的なものも分かるかもしれない。
そんなことを思った。
「ファラヴァはどのあたりに住んでいるんだ?」
「このダンジョンからは結構遠いですが、カルターンという、街に住んでいます。」
「学園とかってあるのか?」
「カルターンには、学園はないんですが、チーム的なものはあります。」
「チーム?」
「チームというのは、まあ、ランキングにのるために作られているものです。そのチーム内では、学園のように交流の場として、設定されています。」
「ちなみに一番強いチームとかってあるのか?」
「一番強いかはわかりませんが、黒騎士団というのが、ランキング一位です。」
もうすごかった。
リアルでこんな、名前のチームがいるのか?
すごすぎるだろ。
「す、すごいな…」
「そうですよね、あははは…」
こんな変な会話も続いたが、この世界の街の詳しい様子も聞けて良かった。
会話を続けて5分位たった頃、ファラヴァからある一言が告げられた。
「気配を感じます…」
「まじか…」
会話をしていた、空間に、空虚な雰囲気が下りる。
耳を澄ませると、足音のようなものが聞こえた。
「広い場所に行きましょう。」
ファラヴァが急に口を開いた。
おそらくこの空間だと戦いづらいからだろう。
そして、広い場所についた。
「指示はなるべく私が出しますので、交戦お願いします。」
「分かった。」
静かな声で会話した。
そして松明の明かりのふもとに、モンスターの影が見えた。
俺とファラヴァは、剣を構えた。
「行きましょう!」
声とともに、モンスタ-の方向へと走った…