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ということで舞い戻って来たギルドカウンター。今朝私の加盟登録してくれたお姉さんに私とユウのパーティー登録をしてもらった。フードを深く被って顔をしっかり隠したユウに不信感を露わにしつつもちゃっちゃと作業を進めてくれた。
その後に掲示板を確認する。掲示板には様々な依頼や、高レベル魔物の目撃情報、交通情報等など様々な情報が掲示されている。今回の私たちに必要なのは近辺で狩れる魔物の相場の一覧だ。
「やっぱり実家辺りで出る魔物とは種類が変わるんだね。なんか聞いたことのない名前の魔物がいる」
「王都は向うに比べて暖かいからまず魔物の種類が多い。日帰りできる、ダンジョンの『浅い』ところで手頃なのはこの辺りだな」
そういってユウはいくつかの魔物名を順繰りに指し示した。
「ふ~ん。『キラーラビット』『ハウンドウルフ』…『パラライズ・パピリオ』?これってどんな」
「おいおい!初心者ならまず始めは『ステーキワーム』とかだろ。そのボウズを殺す気か?」
魔獣なの?と聞こうとしたところに、溌剌とした若い男の声が割り込んできた。
「…『キラーラビット』『ハウンドウルフ』は知ってるだろ?『パラライズ・パピリオ』っていうのは」
その声を華麗にスルーしてユウの説明が始まった。私もそれを大人しく聞く。
「っておい無視すんなにーちゃん!」
「『パラライズ・パピリオ』っていうのは?」
「ボウズも無視すんな!おい!年長者の助言には耳を傾けるもんだぞ!?」
「誰が押しつけがましい老人の戯言に付き合うか消えろ糞ジジイ近寄るな加齢臭で鼻が曲がる」
ユウは顔に釣り合ったよく通る声をしている。それに愛想の欠片も含まれていないと、まさに凍えるような声だ。そういう風にばっさりと切り捨てると大抵の人間はそこで諦めるのだが、このお兄さんはへこたれなかった。めげずに咳払いをして、仕切り直してから私たちに絡み続ける。
「いいか?いくら剣の腕に自信があったって実戦は違うんだ。死角から別の魔獣がいきなり襲い掛かって来たり、予想外の事が起こる。そんな時、訓練の時の様に体が動かなくて、そうやって命を落とす奴がゴマンといるんだ」
「ありがと、お兄さん。でも俺、田舎の実家に居た時にも魔獣狩ってたし、位階Dのにーちゃんが居るから大丈夫だよ」
「この若そうなのがD!?マジか!?」
「…さっさと行くぞ」
「じゃーね、おにいさん」
何かの手続きでギルドの職員に呼び止められている隙に、お兄さんをスルーしてリカとユウはギルドを出た。
「いやだからそういうかるーいノリが危ないんだっておい!」
後ろから追いかけてくる声もスルーした。