事件
よーし!
「ふぅ―…」
裕大は深呼吸をする。今日は土曜日。美幸の家で勉強合宿をする日だ。美幸の家へ中学校の頃から何回も来ている。しかし、今は違う。美幸は女子高生なのだ。中学校の頃とは違い、裕大の中で美幸は『仲のいい友人』から『仲のいい異性(美人)』に変わっていた。
一歩一歩玄関の扉へと近づき、再び深呼吸をする。そして勇気をだして、チャイムを押す。
『♪♬♪♬♪♬』
扉の向こうから明るい音楽がながれ、少し緊張が溶ける。しばらくして、ドタドタと扉の向こうから音がし、裕大は改めて身を引き締める。
「いらっしゃい!」
扉が開くと同時に元気で良く通る声。美幸だ。学校でも外出でもないからだろうか、美幸はゆるい格好をしている。オフの美幸も可愛いな…。と裕大は改めて痛感する。
「早く入って!ほら!」
美幸に手を引かれ、玄関へと入る。玄関ではマトリョーシカのような大小様々な招き猫が一列に並んで行儀よく裕大を迎え入れる。
家に入り、少し長い廊下を進んだ先の階段を登る。トントンと一定のリズムを刻んで登る美幸からは今日という日の喜びがひしひしと伝わってくる。
登った先にはすぐに扉があり、そこが美幸の部屋。何回も見た景色。だけどただならぬオーラを発している。
「お邪魔します」
と、一言言って、部屋に入る。
「おう!遅かったな!」
稜平だ。稜平がいることの安心感からだろうか、緊張が溶ける。
「ほら、勉強するよ!裕大はやく!」
美幸が急かす。
「あーはいはい、わかったわかった!」
緊張は完全に無くなり、いつもの3人に戻った気がした。
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気付けば12時過ぎ。午前の時間は思っている以上に勉強できた。
「私、お昼作ってくるね!」
「「サンキュ」」
稜平ど同時同じ言葉が出る。美幸はクスクスと笑って、1階にあるキッチンへ向かった。
「なあ、美幸が料理だとよw」
料理が本音を漏らす。
「確かに、すこしやばめかもなw」
中1の頃にこの3人で美幸の家へ来たことがあったが、その時にも美幸は昼ご飯を作ってくれた。そのときの味といったらもう…。ひどい味っだった。
「まあ、昼はいいとして、美幸不用心過ぎ」
「それはずっと気になってた」
美幸はゆるい格好している。少し大きめの服を着て、いかにも寝間着といった感じだった。すこし大きめの服は美幸が前かがみになったことに胸元を曝け出す。裕大は服に感謝感激だった。
女子高生の胸元が拝めることなんてそうそうない。一生目に焼き付けとこう。
そう思った。
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「出来たよー!」
と美幸が扉を開ける。美幸が作ってきたのはオムライスだった。
((おうふ))
オムライスとわかった瞬間に、稜平と裕大は警戒態勢に入る。中1の頃に美幸が作ったのもオムライスだったのだ。消えないトラウマが蘇り寒気がした。
「ほら、上手にできたよ!」
美幸が自慢気に出来たてのオムライスを机に置く。
((おや…?))
オムライスからはとても美味しそうな匂いがする。綺麗に焼けた卵は光を反射して輝き、その上にはケチャップで稜平と裕大の文字が書かれてある。
「うまそうじゃん。」
稜平がシンプルに褒める。
「でしょ!うまくいったもん!」
美幸が自慢気に威張る。
「まあでも、味は分かんないからな」
と言うと美幸はふてくされたような顔をする。
「味も美味しいもん!」
「わかったわかった」
と言って、稜平と同時に一口頬張る。
「どお!?どお!?」
「「うん、微妙」」
「エエエ…」
美幸は残念そうな顔をして、その場で崩れ落ちた。
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昼ご飯を食い終わり、少し休憩する。
「私、皿洗ってくるね」
美幸は食い終わってすぐなのに立ち上がり、皿を3つ持って一回へ降りていく。
「よく動けるな…俺無理」
稜平はほんとに苦しそうだった。見てるとこっちも苦しくなってくる。
しばらくすると
『パリーン!』
1階で大きな音がした。皿が割れた音だ。そして美幸が叫んでる間違いない。
稜平は動けなさそうだったので、裕大が向かう。稜平はありがとうと手でジェスチャーを送った。
「美幸ー?大丈夫かー?」
1階へ行くと、キッチンに割れた皿が散らばっている、そして水道の水はずっと出たままになっている。美幸はホウキとチリトリを取りに行ったのだろう。
「あーあ。もうー。」
裕大は足元に注意しながら大きな破片を集め始めた。
その時
ズキン…ズキン…。
ひどい頭痛が起こる。裕大は破片を拾うのをやめて、ソファへ向かう。
「ぐっ…」
ひどい頭痛に裕大は頭を抱えてもがき始める、そしてまた、映像がフラッシュバックする
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「おーい、〇〇いるかー?」
俺だ。誰の家だろうか、玄関で誰かを呼んでいる。俺の着ている服は中学校の頃の制服だ。中学生の記憶なのか…?
「〇〇ー?いないの?入るぞー」
裕大はその家の扉を開ける。
「なんだよ…これ」
玄関には泥が靴の足跡を残していた。それは奥まで続いている。
裕大はその足跡の方向へ歩みをすすめる。
割れた皿。水が出たままの水道。そして、真っ赤な赤い液体。
そうそれは…大量の血
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プツンと映像が途切れ、裕大は意識を失った。