期待
急展開ワロタ
そろそろ5月の中旬に入る。高校生初の一大イベント…。そう。中間テストだ。
「課題終わる気がしねぇよ…」
稜平が憂鬱そうな顔をして言う。今日は月曜日。テストはもう既に1週間前に控えている。
「ああ、そうだな」
裕大も稜平に同意する。
この伊切高校は日本トップレベルの進学校。みんな頭が良い。とてつもなく。俺は『入手おめでとう(?)テスト』でひどい結果だったからな…。裕大は自分の番数を思い出す。
思い出しただけで寒気がした。もう過去のことは忘れよう。そう思った。
伊切高校の名物といったら課題の量だ。とても1週間でやりきれる量ではない。だから生徒たちは自分たちで予習をして、コツコツワークを進める。だがしかし、そうでない生徒はあまりの課題の量ゆえに答えを丸写しする。
多分俺もそうなるだろう。裕大は確信した。
各教科の担当の先生たちもこぞって課題を出す。多くならないわけがない。ましてやここは進学校だ。しかも日本トップレベルの。
「なんでここ入学したんだ…」
思わず本音が声となって出てきてしまう。
だが、裕大には楽しみがあった。伊切高校では課題の多さゆえにテスト前の1週間は午前でがっこうがおわるのだ。本当なら午後からは課題+自主勉強する時間なのだが、裕大、稜平、その他諸々の男子達は全く課題をする気がない。
「午後から何する?」
「とりあえず、すこすこ砲」
そんな会話が聞こえてくる。会話を聞いてると、わくわくが止まらない。
「なあ、裕大、遊ぶか?」
「ああ、家来いよ!」
よっしゃ!これで午後からはゲームやで!と思ったその時───────
「裕大ー!」
ああ…終わった…。裕大は一瞬で思った。声の主は美幸。捕まった。助けて。裕大は絶望した。
「一緒に、課題しよ?稜平もね♪」
「「はい」」
美幸に逆らえるはずもなく、返事をする。逆らったらどうなるんだろう。逆らったらワンチャンあるのではないか、そう思うが、頭の中で自分が負けるイメージが浮かび、裕大は諦めた。
✄ - - - - - - - - - - - - - -
「おじゃましまーす!」
美幸の元気な声が玄関に響き渡る。美幸は靴を綺麗に並べて、裕大の母親の方へと向かう。
礼儀はきちんとしてるんだよな…。美幸礼儀正しさに感心する。
「あら、美幸ちゃん!いらっしゃい!」
「今日は裕大と稜平と勉強するの!中間頑張るから!」
そう言って美幸は二階にある俺の部屋へと小走りに向かった。
俺と稜平はその後を重い足取りでついていった。
✄ - - - - - - - - - - - - - -
「ねぇ、ここがわかんないんだけど」
また質問か。美幸と勉強するもいつもこうだ。勉強が好きなのか嫌いなのかわからない。もっと静かに集中させてくれ。と思いながらも美幸に丁寧に教える。
「なあ、美幸、自分で考えたらどうだ?w」
いいぞ稜平!もっと言ってやれ!
こてんぱんにしてやれ!
「えー。だって、裕大の説明わかりやすいし」
うっ…。そんな直球に言われると少し照れる。
「はいはい、やるぞ!」
恥ずかしさを隠すように、美幸を急かして課題を進める。
気付くと6時をまわっていた。美幸と稜平が荷物をまとめ始める。嫌々だったが、3人でやるのはなんだかんだで楽しかった。明日もこれだと思うと辛いが、でもなんとか乗り切れるかもしれない。そう思った。
「ねえ、裕大と稜平。土日に家泊まりにこない?勉強合宿しようよ!」
唐突の発言に驚く。お泊り?まじか。美幸の家にか。裕大は小さい頃はよく美幸の家に泊まっていたが、記憶があまりなかった。ものすごくお泊りに新鮮味を感じる。
「ああ、いいけど、稜平は?」
「俺も行ける」
「なら決まりで!またね!」
そう言って美幸は部屋から出る。その後を稜平がついていく。
女子高生の家にお泊り。頭の中がそれだけで一杯になる。裕大は色んなことを期待しながら、部屋を片付け始めた。