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Find the Right  作者: Sans/UT
5/8

なんか、よくわかんないです。

 今日から5月に入る。入学してから1ヶ月経ち。クラスの雰囲気はまさに高校生という感じだ。

「やっと5月か」

 稜平が呟く。やっとって…結構早かったぞ、と稜平の時間の感覚に驚く。1ヶ月というきりのいい日なのに、今日は大雨である。

「夏休みまで、あと3ヶ月か。」

稜平が外を眺めながら言う。

「さすがに夏休みの事考えるのは早すぎ」

「だって高校生の夏休みだろ?イベント満載じゃねーか。」

 確かに。心の中で激しく共感する。今まで経験したことのない事を沢山する。と裕大は入学当初から決めていた。恋愛、花火その他諸々…高校生の夏といったら人生で1番青春出来る!と裕大は確信している。

「夏休みの事考えたら、モチベあがった」

「裕大もかw」

裕大はモチベが高いまま授業に臨んだ。





「やっと昼飯ー!」

 4限終了のチャイムが鳴ると同時に稜平が叫ぶ。授業終了の挨拶を済ますと、稜平はすぐに弁当を持って自分のところへ来る。裕大は毎日稜平と弁当を食べる。弁当を食べながらの会話はとても弾む。

「それでさ· · ·あーして、こーして」

稜平の会話が止まらない。基本的に裕大は聞き専門だが、稜平の話は聞いてて飽きない。

 昼食の時間の会話を楽しんでいると、

「ねぇ、裕大」

と声をかけられる。裕大は一瞬で声の主が誰かを理解した。七海だ。

「え、え?どうした?」

 動揺が声に出る。心臓の鼓動が早くなるのがわかる。この1ヶ月で七海との仲は深まったと裕大は思っている。たくさん自分から話しかけ、たくさんの話題を持って七海と一緒に話す。でも、七海から自分に話しかけてきたことはなかったのだ。

 初めての七海の行動に慌てる中、七海は言う。

「放課後開いてる?話があるんだけど」

 言葉の内容を理解するのに、数秒、七海と自分の間に静かな空気が流れる。

「うん…開いてるけど」

 裕大が恐る恐る返す。なにか七海に悪い事をしたのではないか。そんな思考が頭から離れなくなり、この1ヶ月で七海とした会話を必死になって思い出す。

「よかった、じゃあ放課後」

と言って七海は友人との昼食に戻る。七海の行動に男子、女子共にザワつき始める。

「なあ、これワンチャンあるんじゃね?」

 と、稜平が言う。もしかしたら、もしかするかも。裕大も恐ろしさの中に希望の光があるかもしれない事に気付き、テンションがあがる。周りの男子達も集まってきて、一気に話が盛り上がる。

 男子達のせいで聞こえはしないが、女子達も盛り上がっているようだ。

 裕大は期待を胸に残りの授業に励んだ。




7限のチャイムが鳴ると、一気に緊張し始める。生徒達が次々にカバンを担いで、部活に向かう。10分もしないうちに生徒はくらすからほぼいなくなった。

 しばらく椅子に座って待っていると、七海が来る。心臓の鼓動は一気に早くなって、苦しくなる。呼吸しているだけでも相当キツくなる。

「緊張しなくていいよ。」

 顔の表情で分かるのか、七海が声を掛ける。そんなこと言われたら余計に緊張するだろ。と思いながら、呼吸を整えようと必死になる。


「ねえ、裕大…君はさ」


七海が話し始める。七海の声を一字一句聞き逃さないように集中する。


「あの時の、堀川裕大なの?」


 裕大の緊張は一気に解けた。七海の言葉に理解が追いつかなかったからだ。七海の言葉を理解しようとする。だが理解できない。


「え…意味がわからないんだけど。どーゆーこと?」


「ごめん、小学校と中学校はどこ出身?」


 七海が自分の理解が追いつかないまま、さらに自分に質問する。恐る恐る裕大は小学校と中学校を答える。


「そっか、そうなんだ、ありがとう」


 裕大と七海の間はまるで時間が止まったかのように静かになる。

 しばらく沈黙が続き、耳には雨の音だけが聞こえて来る。


「七海…訳がわからないんだけど」


 裕大はまだ状況を把握しきれていなかった。


「ごめん、意味分かんないよね。でもこれだけは言わせて」


「裕大、どうもありがとう」


七海の眼から、ひと粒の涙がこぼれる。 


その言葉だけ残して七海は教室を去った。


 







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