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Find the Right  作者: Sans/UT
2/8

記憶

気の向くままに。

 景色をぼんやりと眺めて数分。

「間もなく〜伊切駅〜」

 と、アナウンスが流れる。

 アナウンスが流れた直後に、ぼんやりとしていた意識はハッキリとし、引き締まる。

 いよいよか…!と心の中で叫ぶ。

 隣にいる美幸も緊張しつついい顔をしている。自分と同様、これからの高校生活に期待している顔だ。

 電車が減速を始め、慣性に抗い足をふんばる。

美幸が踏ん張りきれなかったので慌てて手を掴む。

 「ありがとう」

と小声でいう美幸に軽く頷く。

 『プシュー』

 と電車のドアが開いた。伊切駅の改札から出ると、目の前には伊切高校がどっしりとした佇まいで生徒を迎えていた。

 伊切高校は名門校。資金も多いのだろう。その外見は外国のお城のように美しく、高校周辺には様々な植物が植えられている。インターネットで見た写真とは比べ物にならないぐらいの迫力だ。

 玄関前では在校生が新入生を歓迎している。

 「「おはようございます!」」

 と揃った挨拶は聞く者全てを圧倒した。




 新品の内履きに履き換え、自分のクラスへ向かう。美幸とは違うクラスになり少し残念だが、あまり気にしない。

 クラスへ入ると重い空気が伝わってきた、あまり話さず、静かなこの空気。少し憂鬱な気分になりながら席へ着こうとすると

「おい、裕大!」

と元気な声。

「ああ!稜平!」

 憂鬱な気分は一気に晴れた。中学校からの親友の浦上稜平だ。中学校の頃、稜平とは常に一緒に行動していた。それぐらい仲がいい。

 「お前をここ受かってたんだな!連絡したのに返事帰ってこなかったから落ちたのかとwwwww」

 稜平のダメな所はここだ。煽り属性が高すぎる。煽り属性が高すぎて普通の顔でも煽られてるように感じる。

 「まあ、受かっていろいろと忙しかったからな…」

 中学校の受験勉強の忙しさを思い出して、ゾッとする。

 しばらく稜平と話していると、チャイムが鳴る。

『ガラリ』

聞きなれないドアの音がし、担任の先生が入ってくる。

「入学おめでとう!僕の名前は鈴木一郎です!皆さんには───────」

テンプレみたいな名前だなー、と思いながら軽く話を流す。長い話が終わり、そしてテストが始まる。クラスの皆が友人達とテストについて話している。

「入学おめでとうテストってなんぞ。」

稜平の言うとおりだ、これには納得である。

 生徒に解かせる気がまったくない超難問のテストを受け、そして下校。正直、入学おめでとうテストで一日使うのはどうかと思う。と心の中で愚痴を言いながらカバンを担ぐ。

「裕大〜!」

テストの疲れが吹き飛ぶような綺麗な声にテンションがあがる。美幸だ。

「一緒に帰ろ?」

「もちろん」

待ってましたといわんばかりに即答する。

 何も入っていないカバンを担ぎ、美幸と二人で玄関へ向かう。



 玄関へ向かう途中一人の女子が前を横切る。


───────ふと。今朝の夢を思い出す。


 手をいくら伸ばしても届かない光。その光はまるで自分を避けるように。


 その女子の容姿は懐かしい感じがした。だけど誰かは思い出せない。


 思い出せないまま、美幸と一緒に家へ帰った。



 


 

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