姉妹百合
私、宝生 稚菜には1つ年上の姉がいる。
姉は、平均より少し背が低く、それでいて胸は大きい。そして、何よりも可愛い。妹の私が言うのもアレだが、姉は男女共に人気で、よくモテる。告白だって何回も受けてるし、ラブレターだって貰う程だ。でも、そんな姉に、彼氏が出来た話しは一度も聞いた事が無い。別に高望みをしているとは思えないが、姉は彼氏を作る気は無いみたい。でも、それは、私にとって有り難い。何故なら、私は、姉の事が好きだからだ。勿論、恋愛感情のソレだ。女が女を好きになるのは、可笑しいと思われるのは当然だろうけど、それでも私は、姉の事が好きだ。だからと言って、姉に告白する勇気なんて無い。どうせ振られるのは分かってるし、下手したら気持ち悪がられて、避けられる可能性だってあるのだ。だから、私は、自らのこの気持ちに蓋をするのだ。
私、宝生 陽菜には、1つ年下の妹がいる。
妹は、平均より高い身長で、スレンダー。そして、何よりも格好いい。姉の私が言うのもアレだが、妹は、男子よりも女子に人気だ。ただ、本人は、その事に気付いてはいない。だから、今まで妹に告白してきた子は居ても、妹は理解出来ていなくて、結局は誰とも付き合っていない。そのお陰で、私は一人悩まなくても済んでいる。私は、妹の稚菜の事が好きだからだ。それは勿論、恋愛感情としてのソレだ。だから、他の誰かに告白をされても、稚菜以外の人には、興味は無い。私はただ一人、稚菜に愛されれば、それでいい。
姉と私は、同じ中学校に通っている。学年は違っても、通学ルートは同じだから、学校へ行くのは何時も一緒。だけれど、帰りは別々。私は、部活に入っているけれど、姉は帰宅部だ。だから、今迄一緒に帰った事は、一度も無い。そんなある日、私は何時も通り部活の後、仲の良い友達とふざけ合いながら帰っていたら、偶然にも姉と遭遇した。そして姉は、私達のじゃれ合いを見て、急に泣きそうな顔をしたと思ったら、走って去ってしまった。
丁度、その時はじゃれ合いで、友達が私に、抱き着いていたのだ。私は、急に走り去って行った姉の事が気になり、友達に一言断りを入れてから、急いで姉の後を追った。
「お姉ちゃん、待って!」
「・・・・・・」
「お姉ちゃん!」
私は、姉に追い付くと、そのまま後ろから、抱き締めた。
「は、放して!」
「やだ。放したら、お姉ちゃん居なくなっちゃう」
抱き締められた姉は、涙を流して泣いていた。
「稚菜は、あの子と一緒に居れば良いのよ。私の事なんて、ほっといてくれれば良いのよ・・・」
「私は、お姉ちゃんと一緒に居たい。それじゃ、ダメ?」
「そんな事は、嘘だよ。だって、稚菜は、あの子と一緒のが良いのだよね。抱き合う位に、あの子の事が・・・」
「何、言ってるの。私は、友達より、お姉ちゃんを選んだだよ。なのに、お姉ちゃんは、私の発言を否定するんだ・・・」
私は、ずっと姉の事が好き。それなのに、姉は、私の気持ちを否定してくる。やっぱり告白しないと、伝わらないのかなぁ・・・
「私は、稚菜が好き。ずっと、ずっと好きだった。今も変わらず好き。でも、稚菜は・・・」
まだ、否定的な事を言おうとしていた姉の唇を、自身の唇で塞いだ。これで、私の気持ちが伝わってくれたらいい。
「私も、お姉ちゃんの事が、好きだよ」
「わ、稚菜・・・」
私達は抱き合ったまま、もう一度キスをした。今度は、じっくり丁寧に。告白したんだから、もう隠さなくても良いよね。お姉ちゃん、私はお姉ちゃんの事が大好きだよ。
私と、稚菜の気持ちは、同じだった。この想いは、ずっと通じないと思っていたから、片想いで居るつもりだったけど、抑える事が出来なくて、言葉として溢れ出た。でも、それが稚菜と私の気持ちが、一緒だった事を教えてくれた。私達は、今幸せです。