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日間ランキング入りを目指すあなたへ~話別アクセスを見よう~

作者: 竹炭

 スタートダッシュという言葉があります。

 小説家になろうでも新作投稿の際のスタートダッシュというものが存在します。

 一日に何度も投稿を行い、ブックマークを大量に獲得して日間ランキング入りを狙う方法です。


 日間ランキングを見るとだいたい70ポイントほどで300位です。

 70ポイントという数字は結構大きく、ジャンル別ランキングなら上位に食い込める可能性があります。(ファンタジー、恋愛を除く)

 日間ランキングに載れば数時間に渡って表示され続けるので人に読まれる可能性が高くなり、読んでくれた人が作品をブックマーク登録してくれれば、更にポイントが増えて上の順位に上がり、日間一位になることも……


 ここにAさんとBさんという作者がいます。

 二人は作者仲間で日間ランキング入りを目指しています。

 二人は新作を用意しました。

 Aさんは話のストックが60話あり、Bさんは話のストックが6話しかありません。


 Aさんはネットで連続投稿が効果的だと聞いて新作を一日に10話、1時間おきに1話ずつ投稿することにしました。

 一方、Bさんは新作6話を一度に全部投稿することにしました。


 小説家になろうでは新着作品はサイトのトップに表示されるシステムになっているので宣伝効果があります。

 しかし数分で更新されて別の新着作品によって消されてしまいます。

 6話を一度に投稿したらサイトに表示される回数も一回だけでもったいないとしか言えません。

 AさんはBさんからその話を聞いてこいつは馬鹿だなぁと思いました。

 新作を投稿してからしばらくしてAさんが作品を覗くとブックマーク数は5になっており、Bさんの作品はブックマークは0でした。


 新作を投稿して数日後――

 どうもAさんは不機嫌なご様子……

 ぶつぶつと独り言を言っています。


「おかしい……どういうことだ……」

「いや、まだ慌てるときじゃない」

「ここ数日は運が悪かっただけ。話のストックはまだ40話分ある」

「一日に10話投稿して日間ランキングに載れば……」

「四日あれば余裕でランキング上位に駆け上がれる」

「そしてゆくゆくは書籍化してアニメ化。さらにはハリウッドで映画化……」


 どうやら自分の作品に相当な自信があるようで四日あれば日間ランキング上位に入れると考えているようです。

 自分の作品が原作の映画にト○・クルーズが主演するところまで想像しています。

 しかし結果はブックマークが全く増えず、ランキングの端に引っかかることもなくあっという間に四日が過ぎてストックも尽きるのでした。


「どうして?」

「PVは増えてるのに!?」


 Aさんは頭を抱えました。

 PVは増えているのにブックマーク数が増えないのが不思議なようです。

 現在のAさんの作品は60話で18万文字、ブックマーク数は10。

 しかしAさんは気づいていませんでした。

 他の日間ランキング作者の作品と自分の作品の何が違うのかを。


「そういえば同じ日に新作を投稿したBさんはどうしているだろう?」

「この前Bさんのブックマーク数を見た時は0だったけど少しは増えたのかな?」


 AさんはふとBさんを思い出して作品を覗くことにしました。

 そしてBさんの作品のブックマーク数を見て驚きました。


「ブックマーク数1000!?」


 Bさんの作品は全10話で文字数は3万文字。

 しかし、ブックマーク数はAさんの100倍の1000でした。

 AさんはBさんに質問しました。


「いったい、これは何をしたんだ?」


 BさんはAさんに答えました。


「いや、何したって言われても……アクセス解析を見て導入をちょっと変えたんだよ」


 話を聞くとBさんは自分のストックである6話を全て投稿してもブックマークが増えなかったそうです。

 それで、アクセス解析から自分の作品を分析してプロローグ部分と第一話を書き直したとのことでした。

 アクセス解析画面ならPVを確認するためにAさんも見ているのですが……


「分析って何を分析したんだ?」

「話別アクセスってあるじゃん? そこでどの話でブラウザバックされてるか分析したんだよ」

「話別アクセス?」


 Aさんは話別アクセスを知りませんでした。

 いつもAさんが見ていたのは時間帯ごとにおけるアクセス数を知る「総合」と呼ばれるもの。

 Bさんが言っていたのは話ごとのアクセス数が分かる「話別」というアクセス画面のことでした。

 Bさんはプロローグと第一話の部分に大きく手を加えたことでブックマークが爆発的に伸びたとのことでした。


 Aさんは自分の話別アクセス画面を開いて驚きました。


 二日前のAさんの作品のプロローグのアクセス数は80、1話のアクセス数は120、2話のアクセス数は20、3話は10、4話は2……


「こ、これは……」


 なんと、読者はプロローグを飛ばして1話を読んでいる可能性があるのでした。

 1話は120アクセスで単純に考えて120人が読んだと仮定すると、2話のアクセス数は20で100人が1話で脱落したのであった。3話はさらに10人脱落して……


 Aさんは知りました。

 他の日間ランキング作者の作品と自分の作品の何が違うのかを。

 日間ランキング作者の作品は何かしらの理由があって読者にウケているのであり、連続投稿すればそれだけ効果が期待出来る。

 需要と供給のバランスが成り立っていると言える。

 しかし、Aさんの場合は需要がないものをひたすら供給していたのである。

 ブックマークが増える訳がない。


 Bさんの場合は6話投稿した状態からプロローグと1話に修正を加えたのでした。

 6話ならいくらでも修正可能。

 しかし、Aさんの場合はもう60話の18万文字。

 軌道修正は……

 難しい……


 はっきり言って手遅れであった。


 Aさんは連続投稿なんてするのではなかったと後悔した。

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