表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はじまりの旅  作者: 藍澤 昴
第1章「ニタとメイトーの森」
3/115

**********



 ――助けて。


 クグレックは真っ白い空間にいた。寒くもなければ暑くもない。壁もなければ空もない。ただひたすらに真っ白な空間だった。

 そんな空間に、女の子が一人しゃがんでしくしく泣いている。黒いおかっぱの髪型で、白い袴を着ていた。

 クグレックは近寄って、女の子と一緒になってしゃがんで声をかけた。

「どうしたの?」

「みんな、いなくなっちゃったの。お母さんやお父さんや友達や恋人が、みんないなくなっちゃった。」

 迷子だろうか、とクグレックは考えたが、こんな場所で迷子になったら到底見つからなさそうだ。

「お姉ちゃん、私、待ってるから。お姉ちゃんが来てくれるの、待ってるから。」

 と、女の子が言うと、女の子の体は次第に透明になって消えてしまった。

 クグレックは、女の子が存在していた場所に手をかざして動かしてみるが、そこには確実に何もなかった。

 クグレックは首を傾げながら立ち上がり、どこへ向かうともなく歩み始める。

 すると、今度は何もないところから声が聞こえ始めた。

「クグレック。」

 クグレックはびっくりして、辺りをきょろきょろ見回した。しかし、周りにはなにもない。

 それでも、いて欲しいと思った。

 その声は間違いなくクグレックの祖母の声だったからだ。

「おばあちゃん?どこにいるの?私もおばあちゃんのところに連れて行ってよ…」

 クグレックはがむしゃらに走り出した。が、ただむなしくクグレックの足音が真っ白な空間に響くだけで、クグレックが願う祖母の姿は一向に見つからなかった。

「クグレック、あなたはこちらへ来てはいけません。あなたは幸せになる権利がある。もっと世界を見て、世界の色を見て回りなさい。あなたにはその権利がある。仲間とともに楽しい時を過ごして、恋人を作り、子供を産むというただの幸せを願ってもいいの。だから、もうちょっと頑張りなさい。さっきの子も、あなたを待っている。だから、行ってあげて…」

「おばあちゃん、おばあちゃん、どこにいるの?」

 クグレックは真っ白な空間を当てもなく駆け回る。だが、どこへ行っても誰かに会うことが出来なかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ