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――助けて。
クグレックは真っ白い空間にいた。寒くもなければ暑くもない。壁もなければ空もない。ただひたすらに真っ白な空間だった。
そんな空間に、女の子が一人しゃがんでしくしく泣いている。黒いおかっぱの髪型で、白い袴を着ていた。
クグレックは近寄って、女の子と一緒になってしゃがんで声をかけた。
「どうしたの?」
「みんな、いなくなっちゃったの。お母さんやお父さんや友達や恋人が、みんないなくなっちゃった。」
迷子だろうか、とクグレックは考えたが、こんな場所で迷子になったら到底見つからなさそうだ。
「お姉ちゃん、私、待ってるから。お姉ちゃんが来てくれるの、待ってるから。」
と、女の子が言うと、女の子の体は次第に透明になって消えてしまった。
クグレックは、女の子が存在していた場所に手をかざして動かしてみるが、そこには確実に何もなかった。
クグレックは首を傾げながら立ち上がり、どこへ向かうともなく歩み始める。
すると、今度は何もないところから声が聞こえ始めた。
「クグレック。」
クグレックはびっくりして、辺りをきょろきょろ見回した。しかし、周りにはなにもない。
それでも、いて欲しいと思った。
その声は間違いなくクグレックの祖母の声だったからだ。
「おばあちゃん?どこにいるの?私もおばあちゃんのところに連れて行ってよ…」
クグレックはがむしゃらに走り出した。が、ただむなしくクグレックの足音が真っ白な空間に響くだけで、クグレックが願う祖母の姿は一向に見つからなかった。
「クグレック、あなたはこちらへ来てはいけません。あなたは幸せになる権利がある。もっと世界を見て、世界の色を見て回りなさい。あなたにはその権利がある。仲間とともに楽しい時を過ごして、恋人を作り、子供を産むというただの幸せを願ってもいいの。だから、もうちょっと頑張りなさい。さっきの子も、あなたを待っている。だから、行ってあげて…」
「おばあちゃん、おばあちゃん、どこにいるの?」
クグレックは真っ白な空間を当てもなく駆け回る。だが、どこへ行っても誰かに会うことが出来なかった。