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桃色恋愛。

岡惚れ。

作者: 桃色ぴんく。

片思いとはちょっと違う、岡惚れ。

岡惚れの意味を調べると、こんな感じ。


【他人の恋人や親しい交際もない相手をわきから恋すること】

【自分のほうだけがひそかに恋していること】


片思いという言葉よりも、なんだかちょっと味があって罪な感じがする。





『あ、いた・・・』

買い物をしながら、私はある人を探す。いつもの行き慣れたスーパーの、鮮魚コーナー付近だ。

その人は、背が高く、とても顔が整っている。

名前なんて知らない。わかっているのはこのスーパーの店員さんで、主に鮮魚コーナーの担当だということだけだ。

顔しか見えない、制服の帽子をすっぽりかぶっているのだが、この見えている顔がなんとも言えず男前なのだ。ちょっと和の雰囲気。江戸時代とかに色男とか呼ばれそうな顔立ちだ。

 その人の姿を確認すると、買い物カートを押しながら、ちらっと見ては満足する。その人と別にどうこうなりたいわけではないのだ。買い物の時間の中の、少しの楽しみなのだ。多分、年は同じぐらい。きっと、家庭があって幸せな暮らしをしてるんだろう。目がとても優しいのだ。もちろん、私が見てることなど知らないだろうから、私と目が合ったことはないのだが。買い物客のおばさんに何か聞かれて、丁寧に説明している姿を見たことがある。その時のその人の笑顔がまた良かった。




 そうして、その人の姿を探しながら買い物をするのが私の日課になった。本当に姿を見るだけ。近づこうなんて絶対思わない。ただ、『今日もいた。男前だな~』と思うだけなのだ。

この気持ちは恋ではないと思うから、岡惚れなんて言い方をしたらまた違うのかも知れないけど、よく知らない人に対して「素敵」と思って「見つめて」しまうのは・・・やっぱり少しは気があるからなのかも知れない。

 その人には、その帽子を脱いで欲しくない。制服姿の似合う人は、職場でしか見たくない。私服を見てガッカリとかもしたくないからだ。帽子を脱いで、髪の毛が薄かったらとても残念だからだ。




 ただ、姿をちらっと見るだけで満足していたのに、先日は、結構近い距離にその人がいて、思わず胸に付けている名札を見てしまった。とうとう、その人の名前を知ってしまったのだ。

「いらっしゃいませ」

その人が私に声をかけた。周りに人がいなかったから、多分私に言ってくれたのだろう。顔に似合って、なかなか渋いいい声だった。しかし、ここで距離を縮めては岡惚れにならない。私は、軽く会釈をしてカートを押し、鮮魚コーナーを立ち去った。




 もし、普段からよく魚を食べる生活をしていたら、もしかしたらもっと距離は縮まってしまっているかも知れない。けれど、魚は高いのだ。贅沢を出来ない生活をしている現在は、チラシ広告に載っている安い魚しか買わない。

 私とその人の距離は、それでいいのだ。たまに安売りの魚を買っていくだけの客。そして、そんなお客様にはそんなに興味がない、美味しいお魚を売ることに真剣なその人。そんな関係でいいのだ。




 だから、今日も私は買い物カートを押しながら、横目でその人を探し、鮮魚コーナーには立ち止まらない。買い物はメモを見ながらなので、そんなに時間がかからない。約10分ほどの買い物の時間内に、タイミングよく、その人を見かけられたらなんとなくラッキーなのだ。




 私が思うに、【片思い】は、この先、このままの状態に満足出来ず、何らかの行動に出て、【両思い】になるか【失恋】するかのどちらかになる。

【岡惚れ】は一切行動にも出ないので、ずっと相手をひそかに思っているだけの【秘密の片思い】だと思う。

 そんなわけで、私は今、その人に岡惚れをしている。




                    ~岡惚れ。(完)~



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― 新着の感想 ―
[一言] ブログでやればよいのでは
[一言] 岡惚れ! 初めて聞いたけどいい言葉やね〜むさ苦しいおっさんには特に分かるよ(*^^*)笑
[良い点] 相手を見かけるのが密かな楽しみという点が共感できます。 [一言] できればもっと掘り下げて、もう少しストーリーを見てみたかったです。読んでいてわくわくしたので。
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