第一章 遭遇 ⑤
目が覚めたのは、ちょうど昼の12時だった。
「………………ん」
目を開けて一番最初に認識したのは、見慣れた俺の部屋の天井だった。
どうやら俺は自室のベッドに横たわっているらしい。
まばたきしていると、リビングの鳩時計が12時を知らせるべく鳴り響いているのが聞こえた。
(俺は……そうか、ヘンな奴が天井にくっついていて……それで…)
と、そこまで思い出した時、
「おはよー。と、言ってももう昼だがな」
あの少女が扉を開けて入ってきた。
「うわわわわわわわわわ!?」
「……あ、ノックもせずに入ってしまったな。これは失敬」
ペコリと頭を下げる少女。
「そこじゃねーよ!何故にまだお前が居るんだよ!つーか誰だ!」
「まあまあ、落ち着いて落ち着いて。積もる話もあるからな」
そう言うと少女は俺の部屋から電光石火のごとく退室し、十秒後、少女はホカホカと湯気をたてているカレーライスを持ってきた。(しかもノックして入ってきた。)
「とりあえずこれ、食べな。腹が減っては戦もできんと言うしな」
そう言うと少女は俺の膝の上にカレーライスをドンッと置いた。器が若干温かい。少女は床に正座して、早く食べろと目で訴えている。
(…どこの誰だかも分からない奴に食事を出されてしまった…。まさか、毒でも仕込んであるんじゃないだろうな…)
「心配なく。毒なんか入ってないぞ」
さも俺の考えていることを見透かしているように少女は笑う。
俺はじっくりと少女を眺めた。
(身長は…俺より頭一つ分くらい小さいから…150センチあるかないかぐらいか?小…いや、中学生…かな?)
「…?…冷めないうちに喰ってくれよ。冷蔵庫にあったやつだけど」
「レトルトかよっ!」
「買い置き使わせてもらったぞ」
「もらったぞ、じゃねーよ!くっそ変に家庭科スキル期待した俺がバカだったぁ!」
チクショウやけ食いだぁ、とカレーライスを食べ始める。
ガチャガチャとスプーンを動かす音が部屋に響く。
「食べながら聞いてくれ。…私が誰かという話だったな?」
唐突に少女は話し出した。
「この際だ。全部話す」
少女は立ち上がり、言い放った。
「私は春野京子、錬金術師をやっている。今日はキミの『心臓』を貰いにきた。」
…はい?