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第一章 遭遇 ③
今、俺の家には誰もいないはずだ。それなのに声がする、と、いうことは…
急に寒気がして、振り向くと、そこには、
誰もいなかった。
「な、あ…あ、え……?」
おかしい。つい今の今まで後ろから目玉焼きがどうとかスクランブルエッグがどうとか言っていた声がしたはず…なのに。
「……誰も…いない?」
「イヤイヤ、いますから」
「………?」
確かに声はする。
(いや、声の方向は……………上?)
そろぉ~りと、視線を上げていくと、
「おっ、やっと御対面ですな」
天井に少女がくっついていた。
どういった仕組みかはよくわからないが、少女は背中を天井にくっつけいる状態で、何故か体育座りをしている。
「うわわわわわわ!?」
俺は目線を少女に固定しながら、這うように(というか、這って)キッチンから脱出した。
「…そんなに引かなくてもいいではないか……」
少女が目を潤ませる。ほどなく目から溢れた涙がキッチンの床を濡らした。