居場所
~要~
「おい 要。」
誰かが僕をよんでいる。
「おい 要。お前何してんだ。」
ハッときずくと僕は玄関にいた。
そしてその後ろには夏陽兄の姿。
アレッ。
僕は何故こんなところにいるんだろう。
いつもそう。
きづけば僕はいつも私服に着替え玄関にいる。
この症状は2年前からだ。
夢遊病
僕は2年前からこの病気に悩まされている。
もちろんこのことは夏陽兄たちも知らない。
知っているのは両親だけ。
それを知っててあの人たちは僕を病院に連れて行くことなく
そのまま逃げるようにして仕事の都合かなんかでこの家を出て行った。
この時僕は愛されていないと確信した。
今まで夏陽兄たちにはいろいろ心配かけたらいけないと思って黙っていた。
今にして思えば今までばれてこなかったのが
不思議なくらいだ。
「要。お前まさか夢遊病なのか。」
「まさかぁ~。そんなことあるわけないじゃん。」
僕は誤魔化しきれないとわかっていながら
あえて誤魔化した。
「夢遊病なんだろ。俺らにまで嘘つくなよ家族だろ。」
夏陽兄はその場を立ち去ろうとした僕の手を
強くつかんだ。
夏陽兄は普段滅多なことがないと怒らない。
その夏陽兄が今日はこんなに怒っている。
『家族だろ』母さん・父さんから欲しかった言葉。
言われたらきっと嬉しいと思ってた言葉のはずなのに
なんで夏陽兄に言われるとこんなにも腹が立つんだろう。
「家族…。いいよね夏陽兄たちは望んでなくても
その言葉を母さんや父さんからもらえ得てたんだから。」
「要?」
「そうだよ。僕は夢遊病だよ2年前から。」
言いたくなかった。
言えば夏陽兄たちも母さんたちみたいに僕から離れていくと
思ったから。
「2年前って要。そのこと母さんと父さんは。」
「もちろん知ってる。」
「じゃ~何か。母さんたちは要の事知ってて無理やり仕事を
引き受けて海外まで行ったってことか。」
「そうだよ。」
「俺 母さんたちに電話して
お前を病院行かせるよう言ってくる。」
しなくていい。
夏陽兄お願いだからそんなことしないで
そんなことしたら
僕はもっとあの2人から愛せてもらえなくなる。
「余計なことしないで。」
「余計なこと?何が余計なことなんだよ。」
「何もかもだよ。」
僕はキレ気味でそういった。
夏陽兄は驚いていたみたいだけどそれ以上に
言った本人である僕自身が驚いていた。
「誰のせいだと思ってんの?」
「えっ!誰のせいってそんなもんあの2人が勝手に…。」
ダメだこれ以上言ったら
「何もわかってない。夏陽兄のせいだよ。こんなこと
言うつもりなかったけどあの2人夏陽兄のことすごく気にしてた。
あのころのは海兄骨折してすごく落ち込んでて、智兄は若葉婦が
死んで引きこもっていたにも関わらずずっとあの2人は
夏陽兄の事ばっかり見てた。」
いってしまった。
言うつもりなんてみじんもなかったはずなのに。
なんでこんなにも夏陽兄を責めるような言葉ばかり
出てくるんだろう。
やっぱ僕って嫌な人間なのかな。
自分が愛されなかったのを兄のせいにするこの僕は。
もうどうだっていい。
どちみちあんな言葉を発したじてんでもうここに
僕の居場所はなくなった。
愚かだね僕は。
自分自身の手で居場所をなくしてしまったのだから。
嫌われたっていい。
僕はいつだってそうして生きてきた。
「なっ!夏陽兄?」
夏陽兄はいきなり僕を抱きしめた。
「ごめんな。ごめんな要。俺お前がそこまで
追い詰められてるなんて知らずに今まで…。本当にごめんな。」
「やめてくれる!」
「要。」
夏陽兄。
お願いだから僕に優しくするのはやめて。
僕にそんな資格なんてないから。
「夏陽兄。もういいよ。」
「えっ!」
「もういい。慰めの言葉なんて。よけい自分が惨めになるから。」
「要。お前はいつもそうだな。自分を傷つけて何もかも
自分で背負う。お前がそうしてきた理由はわかる。だけど
たまには俺たちのことも頼ってくれよ。俺たちは家族なんだからさ~。
俺はどんなに迷惑だと思われてもおせっかいと思われてもお前のこと
ほっとかね~よ。たまには我がままぐらいいえよ。」
言えない。
今まで何回もいようとした。
だけどいようと思うたびに僕を嫌な顔で見る夏陽兄たちの
顔が思い浮かんで言えなかった。
「簡単に言わないでよ。」
夏陽兄に僕の気持ちがわかるわけない。
何もしなくても母さんたちに愛されてた夏陽兄たちには。
「いいよね、夏陽兄たちは。僕はなんかしないと
褒めてももらえないし愛してももらえなかった。なのに夏陽兄たちは…。
もう僕にはかまわないで。」
「要。」
僕はそう言い残しその場をさった。
夏陽兄が言う言葉を無視して。
次の日
「おはよ。早乙女さん、海兄、智兄、それと…。」
夏陽兄と言いかけたがやめた。
「僕、学校行くから。」
「えっ!要 朝食はいいんですか?」
「今日はいいよ。じゃ~行ってきます。」
夏陽兄ごめん今の僕は夏陽兄と話す資格なんてない。
もうここに僕の居場所なんてない。
僕自身の手で亡くした。
つくづく愚かだよ僕は
~夏陽~
「おはよ。早乙女さん、海兄、智兄、それと…。」
要は俺の名前を呼ばない。
「僕、学校行くから。」
「えっ! 要 朝食はいいんですか?」
「今日はいいよ。じゃ~行ってきます。」
要。
クソ。俺にはなにもできねェ~のかよ。
要があんなにくるしんでるっていうのによ。
情けねェ~。
苦しんでいる時何もしてやれない何もできないこんなんで
何が家族だ!そんなのただの綺麗ごとだ。
「なぁ~ 夏陽。」
「なんだよ。」
「そんなにきれることことねーだろ。」
海斗お前に何がわかるんだよ。
昨日あんなこと聞かされて自分には何もできないって
思い知らされてこんな状況できれるなって言うのかよ。
「要と何かあったのか?」
「イヤっ 何にもない。」
これを言ってしまえば俺はまた要を傷つけることになる
だからいえない
いやっ いわないんだ。
「ふーん。ないならいいんだけどよ~。」
海斗は他に何か言いたそうだったが
海斗がそれを言うことはなかった
「俺もそろそろ行くは」
「あれっ!海兄さん珍しいですね。
こんな早い時間に出るなんて昨日変なものでもたべました?」
「どういう意味だ?」
「いやー。いつも遅刻ばかりしている海斗兄さんが珍しいなーって」
いいなお前たちはそうやって笑えて俺は…
「夏陽先輩。本当は何があったんですか?」
「だから何でもないってば~」
「嘘ですね。」
「なんで?」
「2人を見てるとわかります。」
夏姫ちゃん!
君しかいないのかもしれない要を
あの暗い闇の世界から救え出せるのは。
「夏姫ちゃん!お願いだ要を救ってやってくれ。」
「えっ!」
分かってる。こんなことおかしいってことは!
だけど君しかいないんだ
俺にまた本気で恋をさせてくれた君しか