2回目の本気
~夏陽~
『夏陽君わたしと付き合って下さい。』
またいつもの告白。
毎日毎日違う女の子に告られる日々。
何つーかこういうのもう飽きちゃったんだよねェ~
「ごめん本気で付き合うのは無理。」
「遊びでもいいから。本気じゃなくてもいいから。」
「それなら。」
しょせん女なんてこんなもんでしょ。
遊びで付き合うだけでもいいていう軽い気持ち。
本気の恋なんてするもんじゃないよ。
『なつっ ひくん。何考えてたの~。』
「どうでもいいでしょ。
君は俺に感じてるだけでいいんだよ。」
『んっ。』
俺の毎日は女遊びに飢えていた。
そんな俺でも本気で恋したことがある。
「夏陽先輩また告白されていたんですか。」
「そ~だよ。何夏姫ちゃん嫉妬してんの?」
「なっ 何言ってんですか。違います。」
本当に不思議だね夏姫ちゃんは。
たいていの女の子は僕に会うと『好きです』とか
『1回でいいんです。抱いてください。』とか
軽い気持ちで告白してくる女ばっかだったのに…。
「夏姫ちゃん。俺の話ちょっと聞いてくれる?」
「なんですか。」
「夏姫ちゃんは本気で恋したことある。」
「えっ!なっ なんですかいきなり。」
「何、驚いた顔して。なんか俺おかしいこと言ったっけ。」
「イヤ、おかしいっていうか夏陽先輩がそんなこと
『本気で恋したことがある?』って聞いてくるのが意外だなって。
でもなんでそんなことを。」
そんなに俺が恋っていうとおかしいのかァ~。
「まぁ~。そんなことはどうでもいいから質問に
答えてこれでも真面目に聞いてるんだから。」
「ありますよ。本気で恋したこと。片思いで終わってしまいましたけど。」
「片思いか。俺も片思いだったいいのにな~。」
「どう言う意味ですか?」
夏姫ちゃんはまじまじと俺を見つめてくる。
「俺さ~。実はこう見えて昔は1人の女しか見えない純粋な
男の子だったわけよ。」
「え~!なっ 夏陽先輩がですか。」
「なにこのリアクション。」
「いや~。意外だな~っと思って。」
意外っか。
今の俺でもそう思ってるよ。
夏姫ちゃんなら話してもいいかなあのこと。
「ね~。夏姫ちゃん。俺の話聞いてくれる?」
「あ~。はい。」
「俺が本気で惚れた女。それはさ~。超がつくほどの
貧乏人だったわけ、親は俺達が付き合っていることに反感を
持ってたんだ。何とかして俺らを別れさせようとしたんだ。」
「そんなことって。」
当たり前だ。
俺でもあの時はひどいって思ったくらいだ。
「俺は家を捨てて彼女と一緒にいようと思った。それを
あいつに言った時、あいつなんて答えたと思う?
『金がないあんたなんてただのイケメンよ。金があるから
告白してまで付き合ったのに家捨てるなんて信じられない。
もうあんたは用済みよ』だってさ笑える話だろう。本気で
惚れた女が俺じゃなくて俺の家に興味があるなんてさ~。本当に笑える。」
「夏陽先輩。泣いてるんですか?」
なっ情けね~なァ~。よりによって女の前でなくなんて。
「ごめん。俺は、大丈夫だから。」
俺はこうして生きてきた。
いつも人の前では強がって
弱い所は誰にも見せないそうやって自分を傷つけてきたんだ。
今回もそれでいい。
俺が『大丈夫』と言えばそのままほっといてくれる。
今までもそうだった。
だから今もこれからもこのままでいいんだ。
「えっ!夏姫ちゃん?」
夏姫ちゃんは僕を抱きしめてくれていた。
「夏陽先輩。1人でかかい込まないでください。
夏陽先輩には智先輩や要君がいるじゃないですか。
夏陽先輩が悲しむとわたしだって悲しくなるんです。
だから泣かないでください。」
はじめてだった。
俺をここまで理解してくれようとしてくれた人は。
俺は生まれて2回目の本気の恋をしてしまった。
もうしないと決めていたのに。
どうして恋をしたのかわからない。
でも確かにいえることそれは相手が夏姫ちゃんだったから
俺はまた本気の恋ができたってこと。
「夏陽先輩。もう大丈夫ですか。」
「うん。大丈夫だよ。夏姫ちゃんありがとう。」
俺は笑顔で夏姫ちゃんにいった。
本当にありがとう夏姫ちゃん。
夏姫ちゃんだったら要を何とかできるかもしれない。
要はばれないようにしてるみたいだけど俺は前々からきずいてた。
要が自分が愛されていないって思い込んでて悩んでいた
ことぐらい俺達を嫉んでいたことぐらい。
~夏姫~
「うん。大丈夫だよ。夏姫ちゃんありがとう。」
そこにあったのは夏陽先輩の笑顔だった。
でもいつもの作り笑いじゃなかった。
その笑顔は見てるだけで幸せにしてくれるそんな顔だった。
「夏陽先輩って向日葵みたいな人ですよね。
なんか一緒にいるだけで明るくしてくれるので。」
「ふ~ん。じゃ~夏姫ちゃんは花にたとえると桜だね。
なんか桜みたいにきれいだからさ~。」
きっ、きれい!このわたしが!
「冗談、言わないで下さいよ。」
「冗談なんかじゃないよ。夏姫ちゃんはきれいだって。
夏姫ちゃん。俺が向日葵ならほかの3人は何なの?」
ほかの3人かァ~。
そうだな~。
「智先輩はユリですね。なんか品があるって感じで。」
「何それ俺達にはまるで品がないみたいな言い方じゃない。
まぁ~。それはこの際良しとしまして。っで海斗は?なんなの?」
あの人は…。
難しいな~。
だってあの人花にたとえられるような人じゃ…
あっ あの人は、あれだ。
「ハイビスカスですね。」
「ハイビスカスかぁ~。なんかわかる気がする。
意味はないんばけどハイビスカスって感じだよね。」
「そして要君は…。」
「要は?何。」
「バラです。」
そう要君はバラ。
きれいでみんなからすかれているだけど要君は
「本当の自分を人前に出してない。みんなと馴染めて
いて人気者だけど自分の気持ちを出してない。」
それはまるでバラのとげのようにみんなを拒絶するかのように
人とちゃんと関わっているように見えて本当は関わっていない
信じれるのは自分だけって思っているかのように。
「夏姫ちゃんって要の事よく見てんだね。俺も迷ってる
暇ないかな~。だってこのままだと夏姫ちゃん要に取られそうだし。」
要君に取られる?
夏陽先輩はいったい何を言って。
次の瞬間、わたしの唇に生暖かい何かがふれた。
「うん なっ、夏陽先輩。」
そっと顔をあげてみるとそこにあった夏陽先輩の顔は
なんだか悲しそうな顔だった。
「今日は、ありがとう。さっきのキスは今日のお礼だから。」
そういうと夏陽先輩はその場から去って行った。
お礼って
「あ~ あ~ またキス奪われたね。」
言葉のする方を向くとそこには要君がいた。
「かっ、要君。いつからそこにいたの?」
「夏陽兄と早乙女さんがキスしているところぐらいからだけど。」
ウソ。最悪。
キスシーンをよりによって要君に見られるなんて~。
「あっ!アレはあの~ ちがっ。」
「別に僕は何とも思ってないから言い訳なんかしなくていいよ。」
ズキン。
分かってたはずなのに。
要君がわたしになんて興味ないって分かってたはずなのに
どうしてこんなに胸がこんなに苦しんだろう。
わたしが好きなのは智先輩のはずなのに。
要君に何とも思われてないって言われただけなのに
どうしてこんなに悲しんだろう。
「じゃ~。僕はこれで。」
ダメだ。泣いちゃだめだ。
「おい。お前こんなところで何してんだよ。」
「七瀬先ぱ~い。」
わたしは思わず七瀬先輩(海斗)に抱きついてしまっていた。
「泣いてんのか?何があった俺に言ってみろ。」
アレっ!七瀬先輩ってこんな性格だったけ?
こんなにやさしい人だったけ?
「わたしずっと智先輩のことが好きなんだと思ってました。」
「はぁ~!?お前いったい何言ってんだ?」
「でもさっき要君に逢って何とも思ってないって言われた
時ショックだったんです。わたしどうしてこんなに
ショック受けてるのかわからなくて。」
「お前さ~。天然だろ。」
天然?
そんなこと一度も言われたことなんかないのですが。
「1つ聞きたいんだがお前が智のこと好きってことは本当か。」
「本当です。た ぶ ん…。」
「なんだよ。そのあいまいな答え方は。」
「自分でもわからないんです。智先輩が好きなのか。」
「お前が智を思う気持ちとお袋さんたちを思っていた
気持ちは一緒じゃなにのか。」
お母様を思う気持ちと智先輩を思う気持ち?
・・・・
似てる!
でも要君を思う気持ちは全く違う。
じゃ~、わたしが好きなのはもしかして要君?
「なぁ~ 早乙女。話変わるだけどなんで
夏陽や智・要は名前で呼んでんのになんで俺だけ
七瀬先輩って名字で呼ぶんだよ。」
「えっと~ それはですね。
あの3人にはそう呼べと言われたり呼んでもいいと
言われてるので呼んでるだけで七瀬先輩先輩には、
何も言われてないから」
「じゃ~ 呼べ。」
「へっ!」
呼ぶって誰を何って呼ぶの?
「俺を七瀬じゃなくて海斗って呼べ。」
「えっ!でも。」
「お前に拒否権はねーよ。
夏陽たちには名前で呼んでんのに俺はよでねぇーって
ことはねーよな。早乙女さんよ~。」
この顔わたし知ってる。
この顔はあの日わたしが七瀬先輩に襲われかけた時の顔だ。
「今海斗って呼べよ。」
わたしの耳元でそっと囁いた。
「海斗先輩。わたしからも1つお願いです。
わたしのことも名前で夏姫って呼んでください。」
なぜだかわからないけど海斗先輩は頬を赤く染めていた。
~海斗サイド~
「海斗先輩。わたしからも1つお願いです。
わたしのことも名前で夏姫って呼んでください。」
ドキッ! まただ。
あの時要に変なことを言われてから俺は妙にあいつを意識している。
あいつの声を聴くたびに無性に嬉しくなる。
あいつの姿を見るたびに胸が脈をうつ。
あの時要にはあいつのことが好きだといったが
心のどこかで俺は好きじゃないと必死に否定していた。
あ~。
思い出しただけでムカついてきた。
そもそもなんであいつが要なんかのために泣いてんだよ。
それ事態がムカつく。
何なんだよ。
このイライラはァ~。
「それはいわゆるやきもちですよ海斗兄さん。」
「さっ 智!やめろよお前まで要みたいなことすんの。」
「僕が要みたいに?そんなこと太陽が東からがっても
ありませによ。」
こいつはまた。
俺が言いたいのは要みたいに人の心を読むなってことじゃなくて
どこからともなく現れるなっていいたいんだよ。
「海斗兄さんは本当に態度に出やすいタイプの人間ですね。」
態度に出やすい?
俺ってそんなに感情を表に出してるか。
自分じゃ~ 出してねェ~と思ってんだがなァー。
ちょっと待てよ。
態度に出やすいってことはまさか俺があいつの好きって
ことも智に取っちゃーわかるってことか?
「はい。わかってますよ。」
「もしかして俺全部言葉にしてたのか?」
「はい。それはもう。」
ウソだろー。
「海斗兄さん。この際僕も言っときます。僕も夏姫のことが好きです。
たとえ相手が海斗兄さんだとしても譲りませんから。」
急に宣戦布告してきた智。
いつもの俺なら驚いただろうな。
でも今回は要に前 言われたせいか
自分でも驚くくらい動揺してない。
「智 お前この俺に勝てると思ってんのか。」
「思ってませんよ。でも勝てないとも思ってない。
いくら女遊びが絶えない海斗兄さんでも
本気で女を落としたことはないでしょ。」
痛い所を突かれ俺は何も言い返せなかった。
「宣戦布告するのはいいけどよー。
俺だけでいいのかほかの狙ってるやついんのによー。」
「大丈夫ですよ。機会があれば夏陽兄さんにも
いっときますから。」
夏陽 っか。
あいつだけじゃ~ダメなんだよなーあいつだけじゃ~。
要にも言わねーと。
あいつの今の本命は要だからなぁー。