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嘘を隠し通せ

作者: ヴァイオ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

りょう「・・・・・・・・・。」

目の前には少女が居た。

今にも泣きそうな顔をしてすがる様に僕のではあるが僕のではない手を握っている。

少女「おにい、、ちゃん。。。だいじょうぶ。。。?」

僕のことをお兄ちゃんと呼ぶ少女を僕は知っている。

でも彼女は僕のことを知らない。

でも僕は彼女の兄じゃない。

今にも泣きそうな瞳で僕を見る。

今にも消えそうな声で僕を呼ぶ。

今にも壊れそうな心で僕を兄と信じている。

そして彼女の後ろに居た両親も僕を息子と信じている。

もしここで、僕が兄ではないことを告げてしまえば、

彼女も両親も崩れ落ちてもう一生治せないほど脆く感じた。

ならば僕は……

嶺「大丈夫さ。愛歌」

彼との約束のために僕は嘘をつく


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お兄ちゃん。。。。」

まどろみの中から声がする。

この声は、知っている。

嶺「あぁ。起きてる。起きてるから俺の上に乗るのはやめてくれ。」

愛歌「うん。ご飯できたから早く食べにきてね。待ってるから。」

嶺「おう。」

彼女はベッドから飛び降り部屋を出て行った。


彼女の名前は紫藤しどう 愛歌あいか

僕の親友だった紫藤しどう りょうの妹だ。

僕と彼は親友だった。

僕と彼は双子のような外見で唯一違うところは目の色と性格だった。

僕の目は青色で、性格は臆病で人とあまり話せなかった。

彼の目は赤色で、性格は誰にでも気軽に話せる気さくな子だった。

僕は彼にはじめて会ったときビクビクしていたけど

だんだん打ち解けて一緒に探検や遊びに行くほど仲がよかった。

けれど、それはすぐに終わってしまった。


そのころ僕は父親から虐待を受けていた。

ある日僕は帰りが遅いと言われ殴られて雨の中外に放り出された。

殴られて骨が折れかかっていたのと雨によって体温がうばられて

そのまま衰弱死しそうだった。

体は動かせず、もう。。。死んでも良いかなとまで思ったときに彼は僕を見つけてしまった

彼は僕を助けるために自転車で彼の家まで運ぼうとしてくれた。

でも途中で僕と彼は事故にあった。

彼は病院に運ばれたけど死んでしまった。

僕は、体の四肢がぐちゃぐちゃになっていたらしいが生きていた

轢かれた瞬間見てた人が救急車を呼び僕は一生を得ることができた。

目が覚めたときには病院のベッドの上で全身包帯でぐるぐる巻きにされていた。

全身包帯で巻かれていたので目は見えないし体は動かせなかったけど、

声は聞くことが出来、喋れた。

そこで医者に彼が死んだと聞かされたときはあの時に見つからずに自分が死んでいればと後悔した。

動かない体を嘆き彼の姿も見れず無力な自分に助けてくれた人を救えず、ただただ泣叫ぶことしか出来なかった。

僕の体は半分は彼で出来ていた。

僕の壊れてしまった部分は彼の体を移植させたと言う。

移植させた場所は、四肢と左目だった。

そんな中彼の家族が僕を彼だと思いお見舞いに来ていた。

だけど僕の父親は一回も来なかった。

家族は僕が目を覚ますまで生きているのに死んでいるような生活状態だったらしい。

特に一番ひどかったのは彼の妹だったそうだ。

ろくに物は食べず、部屋で何処かを見て生きているかわからない状態だったという。

だけど僕は彼じゃない。

でも、僕が彼ではないと言った瞬間この家族はどうなってしまうのだろうか。

それが怖かった。僕がまた壊してしまうのではないか。

僕のせいでこの家族が僕の家族のように家族じゃなくなってしまうんじゃないかと。

それはだめだ。

朦朧とする彼は僕に死ぬ前に約束したんだ


俺の代わりに妹を守ってくれ


と、その約束のために僕は俺になると決めた






嶺「……おはよう。凌」

僕は凌の遺骨が入ったお守りに挨拶しお守りを首にかけ

眼帯を右目に着け鞄を持ってリビングへ向かった。

僕が右目に眼帯をつけるのは僕が彼であると言う戒めのためだ。

妹たちには「移植した目をあまり酷使しないようにするため」ということにしてある。


嶺「おはよう。とうさん。かあさん」

彼の両親が先に挨拶しないように先に挨拶をした

父「おはよう。リョウ」

母「リョウちゃん。おはよう」

彼らは僕に優しい笑みで挨拶を返してくれる。

そう・・・。この顔だ

僕は二人のこの顔を毎朝見るたびに胸が苦しくなる。

だから、僕は先に挨拶することで二人の顔をあまり見ないようにしている

この僕に向けられた笑みは、凌に向けた笑みだ僕ではない。


愛歌「お兄ちゃん。早くしないと遅刻しちゃうよ?」


嶺「おう。ごちそうさま!行ってくる!」


食器を洗い場に出し鞄を持って僕と愛歌は外へ出た。


愛歌「お兄ちゃん。どう?」


愛歌は僕の前に立ちその場で一回転した。

今日は俺は始業式で、彼女は入学式だ

たぶん彼女が言いたいのは今日から着ていくこの服が似合っているのかどうか聞いているのだろう


嶺「おう。よく似合ってる。可愛いぞ」


俺は優しく微笑み愛歌の頭を優しくなでた


愛歌「えへへ。ありがと」


愛歌は目を細め満足そうにしている


嶺「さてと、紀伊はいるかな?あ、お母さん、紀伊おきてますか?」


紀伊母「ごめんね?今日も起きてないのいつもどおりお願い~」


嶺「わかりました。おじゃまします」


愛歌「おじゃましま~す」


二階にある紀伊の部屋に入ると、だらしない格好で寝ている紀伊の姿があった。


彼女の名前は矢神やがみ 紀伊きい

凌の幼馴染であの事故のあと僕は知り合った。

彼女は性格が明るく面倒見がよく愛歌を良く見てくれている。

彼女は男子からは人気が高いが本人は知らない。

凌(僕)が近くに居るからだと友達から聞いた。


嶺「涎でてんぞ。あぁ…。」

これはこれでかわいいのだが、間抜けな姿だなぁ。


嶺「愛歌。いくぞっ」


愛歌「うんっ」


二人「おっきろー!!!」


紀伊「さむいっ!まぶしい!!」


俺が紀伊の掛け布団を引っぺがし愛歌がカーテンを前回に開けると

いつも通り紀伊は叫びながら起きた


紀伊「…この起こし方何とかなりませんか?」


嶺「どんな起こし方がしてほしいんだ?」


紀伊「や、やさしく…。」


愛歌「紀伊お姉ちゃん。優しく起こしたのに全然起きてくれなくて遅刻しかけたじゃない…。」


嶺「てことで俺たちは玄関で待ってるぞ。寝るなよ?」


紀伊「はーい…。」


俺たちは玄関で彼女を待ち、3人が揃うと一緒に外に出た。


校門の前までつくと、何やら人だかりができている。

僕は正直人ごみは嫌いだ。避けて通りたい


紀伊「なんだろう?あれ?」


しかし俺は

嶺「なんだろうな?ちょっといってみるよ。紀伊、愛歌頼んだ」

愛歌「あ、お兄ちゃん!」

紀伊に愛歌をまかせ、見に行くことにした。


嶺「ちょっとごめんよっ」

隙間をぬってこの人ごみの中の原因を見るとそこには

長いリムジンがあり、そのリムジンのドアの前にはレッドカーペットと黒いスーツを着た男達が玄関まで続いている。

リムジンのドアが開くとそこには長い金髪の女性が出てきた

嶺「あれは…。まさか…。」

僕はその女性を知っている。

何回かしか会ったことはないけど、一緒に遊んで仲良くなった女の子だ。

たしか不死原家の従姉妹で名前は不死原(ふじわら) 詩織(しおり)

小さいときに子供の遊びで約束したことがあったっけ。懐かしいなぁ、しおちゃんって呼んでたっけ

でも、顔が似ているだけかもしれない。


それに今会うとばれる可能性だってある。戻ろう。


そう思い僕は人ごみの中から出ようとした瞬間彼女と目が合った。


女性「あ…!」


嶺「…え?」


彼女は小さな声を上げると俺の方へと駆け寄ってきた。


女性「りょうくん!」


俺に抱きついてきた。


え?どういうこと…?いや、彼女は僕に気づいているはずがない。ということは、凌を僕と勘違いしてるのか?!


戸惑う僕に彼女はうれしそうに抱きついたまま離れようとしない


詩織「私よ!詩織!子供のころ一緒に遊んだ!やっと会えた!」


やっぱりしおちゃんだ!本当なら会えたことを喜びたい…けど。


嶺「すまん。人違いじゃないか?俺は紫藤 凌だ…。たぶん君が言っているのは…不死原 嶺の方じゃないか?」


ごめんね。しおちゃん…。彼女には悪いけどばれると困るんだ。


紀伊「ちょっとごめんねー!凌…その子誰?!」


愛歌「あうあう。どうしたんですか?お兄ちゃん…。何してるんですか」


二人がこの人ごみの中を分けて中心に入ってきたと同時にこちらを見るや否やとてつもなく怪訝そうな目で俺を見てきた。


嶺「ははは…そんな睨むなよ。何で抱きつかれたのかわからないのに」


そういい詩織の抱きつきからゆっくり抜けた。


愛歌「えっと。あなたは?」


詩織「私は、不死原 詩織。彼に会いに来たの。そういうあなたは?」


愛歌「私は、紫藤 愛歌。この紫藤 凌の妹です。不死原って苗字…。もしかして不死原 嶺と間違われているのでは?」


あ、愛歌が不機嫌になっている。事件後僕の名前や父親の名前が出ると彼女は人殺しを見る目で不機嫌になるそりゃそうだ。事件を起こした人間とその原因を作った僕に恨みを抱かないはずがないのだから

警戒する愛歌を他所に詩織は少し考え、なるほどと顔を上げた。


詩織「彼であってるわ。昔彼と約束しててね。それを果たしに来たの」


え。もしかしてあの約束?!


愛歌「それはどんな約束ですか?」


詩織「それはね。け…もごがぁっ!」

愛歌・紀伊「け?」


彼女がすべてを言ってしまう前に口を慌ててふさいだ。

困惑する俺と首をかしげる二人に詩織はニヤリと笑った。


ポンポンと肩を叩かれたので抑えてた手を離した

詩織「ふふふ。嶺は聞かれたくないようだし後で言うわ。もうそろそろで時間じゃないの?遅刻するわよ?」


紀伊「うわっ!やばい!愛歌!凌!行くよ!」

紀伊は愛歌の手を取り走っていく、俺も急がないとと思い走ろうとしたところに襟首をつかまれて止められた誰かと思い振り向くと、詩織が不敵な笑みを浮かべて周りに聞こえない声で

詩織「あなたの全てを知ってるわ」

とささやいた。

嶺「え?!」


詩織「後でゆっくり話をしましょ?」


そういうとつかんでいた襟首を離し学園に入っていった。

それを呆然と立ち尽くしてみていた。

冷や汗が滴り落ちるほどに僕は焦っていた。

全てを知っている?僕が嶺ということを知ってるんじゃ…。

あっ!何であの時僕は彼女の口を押さえたんだ?!

彼女と僕しか知らないのに俺が知ってるはずもない。

それなのに俺は彼女の喋ることを妨害した…。

後でゆっくりってことは、その話をするんだろうか?

どうしよう…。このままじゃ家族にばれる…!

そう考えている中、予鈴が鳴り響いた


嶺「あ、やべっ!遅刻確定!!」

どうせ、後で話すことになるんだ。

そう思いクラスに向かって走り出した。


クラス変更していたので、クラスの場所を確認し急いで教室についたのだが

嶺「ん?まだ始まってないのか?」

紀伊「着いてから気づいたんだけど、入学式だから先生は全員そっちにいってるんだよねぇ」

嶺「そうなのか…走って損した…って紀伊も同じクラスだったのか」

紀伊「そうそう。運がいいよね!」

二人で握りこぶしを合わせて軽くぶつけた

紀伊「…あれ?なんか音がしない?」

廊下のほうから何かが走ってくる音がする

先生「ちっこくしたー!そぉい!!」

いきなり知らない女性が入ってきた。しかも、水揚げされたマグロのように滑ってきた

たぶんこの女性は先生なんだろう。教員のバッジを付けている。

先生「セーフ?!セーフだよね?!」

紀伊「え?え?!」

紀伊の肩をガッシリ掴み息切れしていた

嶺「先生。今は入学式だから体育館にいないとまずいんじゃないか?」

彼女は俺を見た瞬間驚いた顔をした

先生「え…。凌くん?!私!螺澤 巳緒!!えっと、この苗字だとわからないか。不死原 巳緒!嶺の姉だよ!」

嶺「え…。姉さん?!」

先生「なに弟みたいな呼びかたしてるの。前みたいに巳緒姉ってよばないの?」

あ、やべっ。危うくぼろが出るところだった。

嶺「あ、あぁ。久々だったからさ。驚いたよまさか巳緒姉が教師になってたとは」

僕は驚きを隠しながら冷静に話題を逸らした


彼女は螺澤(かいざわ) 巳緒(みお)螺澤という苗字は母親の旧性だ。

両親が離婚する前に暮らしてた僕の唯一の姉弟だ

父親は僕を引き取り、母親は彼女を引き取って離婚した。

その後父親は会社はリストラされ借金まみれになり精神がおかしくなり僕に虐待をしていた。

母親のほうは実家に帰ってその後の連絡などはなく、心配だったのだがそういうことはなかったらしい。

少し安心した。

しかし、昔はとてもオドオドした姉さんがこんなに活発な性格になってたのは驚きだ。

僕と凌とたまに遊んでいたのを彼女は覚えていたらしい


巳緒「そうでしょ?そうでしょ?もしかしたら弟に会えるかと思って昔の家に近いこの高校に赴任したんだけど嶺ちゃんは元気?」

そうか。姉さんは知らないんだ。それもそうか葬儀のときに姉さんは居なかったからな。

紀伊「彼は」

嶺「あ、あぁ、それよりも、入学式に出席しないといけないんじゃないか?」

巳緒「そうだった!!行ってくるね!!!」

紀伊が言うのを遮って話題を変えて姉さんを入学式に向かわせた。

紀伊「なんで言うのやめさせたの?」

むりやり遮ったのがばれたのか。不思議そうに彼女は俺に聞いてきた。

嶺「今教えたら良い雰囲気であの人が入学式を気持ちよく迎えれなくなるだろ?」

紀伊「そっか、優しいね。」

嶺「?普通のことだろ?さて入学式が終わるまで待機なんだ。暇だから入学式見に行くか」

紀伊「愛歌ちゃんと先生が心配なんだね?ふふふ、本当に妹思いなんだから」

嶺「はははっ。んじゃ行ってくるよ」

紀伊「うん。いってらっしゃい!」


---体育館---


嶺「さてと、愛歌と姉さんはどこかなぁ…。いたいた。」


体育館の外壁をばれない様に上り窓少し開け少し顔をのぞかせると生徒の列の前のほうには愛歌が、

姉さんは教師人の中に怒られている姿が見えた。

なんか姉さん怒られてるのに一度謝った後に堂々としてるぞ…。

ちょうど教師紹介前だったらしく教頭に怒られるのもそこそこにステージに移動した

次々と赴任してきた先生の紹介を見ていき、姉さんの番になった


嶺「…僕が居ないことを知ったらどう思うのかな」


幼いころにずっと守ってきた姉さんは今僕に守られる人ではなくなっている

嬉しい様で寂しいけれど、僕らは別々に離れてしまったのだからそんな感傷を起こす権利なんかない。


巳緒「ご紹介いただきました。この霜月学園に赴任した螺澤 巳緒です。みなさん生徒には楽しい学園生活をおくってほしいと思ってます。悩み事などがあれば相談に来てくれると嬉しいです」


ここまではテンプレって感じだな


巳緒「私のことを軽く知ってもらえれば相談しやすくなるとおもうのでします。私は弟が大好きです」


ん?…ん??


巳緒「私には4歳下の弟が居ます。私の弟は嶺と言います。私が小さいころは消極的でオドオドしていつも弟に守られていました。そのすがたは頼もしくって弟なのに尊敬していました。最愛の大切な弟です」


おいおいおいおい。弟ののろけ話になってるぞ…。

それに教師紹介って時間とか制限なかったっけ…?


案の定、教頭とかが早く終わらないかとハラハラしてる…。


巳緒「ですが小学生のときに両親が離婚し、二人はそれぞれの親に引き取られちゃいましたけどね。そのあと連絡しようにもできなくて会いたくても会えない状態でした。ですがこの付近に住んでいることは知ってるのであと少しで」


あ、教頭たちがステージに上がってきた。


巳緒「あ!ちょ!まだ話してるのに!!!くそう!おぼえてろよ!!!」


3人がかりで彼女を捕縛して連行されていった

まるで何もなかったかのように校長が出てきて自分の紹介し始めた。

いつ見てもあの人の性格がすごい。


嶺「あ?」


視線を愛歌のほうに戻すと男子にナンパされてる。

愛歌は嫌がるように男子がつかむ腕を払ってはいるが男子のほうはしつこいようだ

それに周りの生徒と教師は見て見ぬ振りをしている


無言で窓を全開にして、音無く体育館の中に入り全速力で愛歌の元に行った


男子「ね?ね?遊びに行こうよ?何でそんなに嫌がるの?」


愛歌「…やめてください。」


男子「何で断るの?俺の親父金持ちなんだぜ。ちょっと居なくなっても権力で大丈夫だよ…え?」


あぁ。そういうことか。こいつの親父は有権者かだからみんな見ない振りしてたんだな


嶺「俺の妹にちょっかい出すんじゃねえよ。腕へし折るぞ。」


愛歌「お兄ちゃん…!」


俺が愛歌をつかんでいた腕を掴んで引き剥がすとこちらを睨みつけてきた

愛歌は俺を見るなり俺の背中にくっついた


男子「なんだよてめぇ。俺の親父がバックについてるんだぞしらねえぞ。いだだだだあだああ!!!」


腕に力を入れてやると軽くへし折れてしまいそうだ

男子の叫び声に周りが気づいたのか。教師たちが集まってきた


嶺「やってみろ。やった瞬間お前の大切なもの全てズタズタにした後にお前も消してやる」


男子「わ、わかりました…。ちょっかい出しません…!お、おれる!!」


教師「どうした?!何してるんだ。…紫藤!」


教師が俺を見るなり少し大きな声で叫んだ


嶺「お前らが本来ならこういうことは注意する立場だろ。何をやっている」


教師「ぐっ…。今行こうとしてただけだっ」


嶺「見て見ぬ振りをしていたやつがそういうこと言うか。あの窓から見てたがお前ら動く気なかったよな?それに一度見てたのも知ってるぞ」


教師は下唇をかみ締めなんとも言えない表情をしている


嶺「別に対処をしろといっているわけじゃないんだ。注意ぐらいしても怒られないだろうが権力なんかに屈するなら教師を辞めろ。」


校長「お、嶺じゃん。どうした?」


校長が演台からマイクを使って話しかけてきた。

僕と校長は面識があり仲が良い。

校長は俺が事故で入院してるときに隣に居た人だ。

たまたま、僕が医者に「死んだのはぼくにしてほしい」と言った事を聞かれてたらしくそこから色々と手を焼いてくれている。

ちなみに僕は21歳なのでたまに校長の家に飲みにさそわれたりする


嶺「騒がしくしてすまん。入学式に校長の紹介中に俺の妹をナンパするやつが居てな」


軽く頭を下げて謝ると校長は豪快に笑った。


校長「ははは!ナンパはしてもいいが状況と覚悟を持ってやれよ!この状況で俺にバレるのはまずかったな。それと凌の妹にちょっかい出した覚悟はすげえよ」


校長「言っとくが俺が紹介してるときにこの体育館で静かにしゃべっても俺にはちゃんと聞こえてるからな?」


校長「そうだな。俺から見て右から2番目の後列に居る髪の長い女子、そう君。確か名前は田中 加奈子だったな。親戚の赤ちゃんが生まれたってな。おめでとう。」


田中 加奈子「え…。え?あ、ありがとうございます。」


校長「後で祝いの品を送ろう。左側の一番端の男子。畑 智和。後でお勧めのゲームお勧めしてくれ最近主人公が弱すぎるし、なんか挙動不審な主人公多すぎてやる気おきねえんだ。それを踏まえてお勧めしてくれよ」

畑 智和「あ、はい…!」


校長「この学園ってさ。みんな知らないかもしれないんだが、事件や事故が起きたことがないんだが理由はわかるか?何でだと思う?これは無理だろって言う答えでもいいぞ。じゃあさっき親戚に赤ちゃんが生まれた田中ちゃん。何でだと思う?」


教師がマイクを田中さんの元に持ってきた


田中 加奈子「えっと…。事件や事故が起きる前に事前に止めているとかですか…?」


校長「おぉぉ!すげえな!正解!大体あってるよ!詳細は教えれないけどね」


そうなのだ、どうやってるかは知らないが彼は事前に対処しているのだ。これ、普通は人ができる芸当じゃないと思うんだけど

というか、周りの空気が死んでる。そりゃあんなこといわれたらこわいよ


校長「後は特にないんだろ?てことで入学式終わりっ。」

教頭「では、生徒は自分のクラスに戻って先生がくるまで待機していてください」


嶺「行くか」


愛歌「そうだね」


俺は愛歌を教室まで送り届け自分の教室に戻った


----教室-----


教室に戻り少し待つと姉さんが入ってきた。


巳緒「遅刻したの怒られちった♪」


舌を出して恥ずかしそうにしてる


巳緒「あ、そうそう!このクラスに転校生がきてるわ。さぁはいって」


扉が開くとそこには詩織がいた。


巳緒「じゃあ自己紹介お願いね」


詩織「私の名前は不死原 詩織です。わけあってこの学園に編入してきました。よろしくお願いいたします」

男子生徒から盛大な歓声が湧き上がった


巳緒「じゃあ、あなたの席は彼の隣ね?」


姉さんは俺の席の横を指差してきた


詩織「あ、ひとつだけ言うことが」


巳緒「ん?なに?」


詩織「紫藤 凌は私の婚約者なので」


え。


クラス全員「えええええ!!!」


何を言っちゃってるの!?うあああ・・・。男子が全員俺のこと睨んでる・・・。

周りの男子が全員睨んでる中に複数の女子も俺のことを睨んでいる…。

紀伊さんあなたもですか。


詩織「ということで、よろしくね?嶺」


気がつくと彼女はいつの間にか横の席に座っていた


確かに僕は幼いころに彼女と約束した。それは「大きくなったら結婚する」というもの

実際あの時父親と彼女のお父さんは婚約ということを言っていた。

僕は子供の遊びだと思っていたから結構驚いた。

というよりやっぱり彼女は僕のことをわかっているらしい。

後でそれを聞かなきゃ



嶺「あ、あぁ…。よろしく。あのさ、聞きたいことがあるんだが」


詩織「うん。わかってる。放課後屋上まで来て?」


嶺「あ、うん」


---放課後----


今日は教科の説明などの配布物だけだったので午前中におわった。


嶺「よし、じゃあ不死原。行こうか」


詩織「昔みたいに詩織ちゃんって呼んで?そっちのほうが良いでしょ?」


そっちのほうが僕が言うときと変わらないからそう言ってくれてると思うんだけど僕はいま凌だからそれは言えない


嶺「ぐっ…。じゃあ詩織…いこうか…。」


詩織「…うん!」


僕が下の名前を呼ぶと真っ赤になりながら嬉しそうにうなずいた


巳緒「紫藤くんちょっといいかしら聞きたいことがあるんだけど」


詩織「いえ。彼は私との先約があるので」


すこし不機嫌そうな顔をしてる


巳緒「すこしだけでいいから!お願い!」


生徒に頭を下げる先生の場面はすごいシュールだった


詩織「はぁ…。わかりました。じゃあ嶺。私は屋上で待ってるから」


さすがに頭を下げられると詩織も断りきれなかったのかあきらめたような表情で屋上へ向かった


巳緒「ここじゃあれだから会議室へ行きましょ?今使われてないから」


嶺「わかった」


---会議室---


巳緒「適当な場所に座って?コーヒー飲む?」


嶺「じゃあ貰うよ。ブラックで」


適当に座って周りを見ると、少し埃がたまっていた。この職員って本当に会議してるのか?


巳緒「あれ?凌くんって甘党じゃなかったっけ?苦いものとかとてもだめだったような。はいコーヒーのブラック」


やべっ。そういや凌は苦いの苦手だったっけ、薬が苦くて飲むの嫌がって最終的には両親に無理やり飲まされてたことがあったな。


嶺「も、もう苦いのには慣れたんだよ。ありがとう」


焦る表情を隠しながら、俺はゆっくりコーヒーを飲んだ。


嶺「で、どうしたんだ?」


巳緒「嶺ちゃんと私のお父さんは今どうしてる?」


やっぱり知らないのか。でも、よく考えると元親族でも葬式の案内は届いてたはずなんじゃないか?

母さんが隠していた…?それをする意味がわからない


嶺「…死んだよ」

ごめんね姉さん。辛いかもしれないけど僕が嶺とは言っちゃいけないんだ


巳緒「…え?なん…て?」

よかったコーヒー置いた瞬間に言ってよかった。もしもってたら落とすところだった


嶺「死んだよ。彼の父親が車で俺たちを跳ねて…。」


巳緒「嘘…。」


嶺「ほんとだよ」


巳緒「だってあんな元気な子が…。それにあのお父さんが…なんで?!」


嶺「嶺の両親が離婚した後、父親はリストラされて、借金まみれになってギャンブルでも負けた生活をしてたよ。嶺は虐待にあってた」


巳緒「虐待…?!」


嶺「そう。虐待。父親は精神的にどこかおかしくなったんだろうね。毎日のように嶺に当たってたよ」


今にも涙を流しそうな絶望した顔をしている

そりゃそうだ。ここに来たのも彼女が僕に会いたいために来たのだから

会えると信じていたものが絶対に会えないとわかってしまったのだから


本当は言いたいよ姉さん…ここに居るよ…。僕は生きてるよって…。


でも今、姉さんに僕が生きていることを教えると僕を弟として扱ってしまうだろう。

そうなると、勘の良い愛歌と紀伊のことだ。もしかしたら僕の正体に気づいてしまうだろう

まだ、みんなに知られるわけにはいかない。


巳緒「私がここまで来た理由って…。」


嶺「ね…。証拠があるんだ…。この目を…見てくれれば…わかるよ」


そう言い左目につけていた眼帯を外した


巳緒「青い目…。嶺ちゃんの眼…!!!」


姉さんは僕の顔を両手で触れ愛おしそうに僕の眼を見ていた


嶺「雨の日に嶺が外で倒れてるのを見てさ。体中ぼろぼろでおまけに長時間放置されてたのか体が冷たくて病院に運ぶことにしたんだ。嶺を自転車の後ろに乗せて信号を渡ってるときに信号無視した車に轢かれたんだよ。僕は左足と左腕、左目が無くなったけどあいつは全身の内臓が破裂してたらしい。病院に運んだときにはもう…。俺もこのままじゃ死ぬ寸前だったらしい。だから血液型も一緒の嶺のの一部を移植したんだ」


巳緒「そっか。死んじゃったんだ…。そっか…。」


嶺「!!」


この眼…!あの眼だ…。親父がしていた眼だ…。現実を見て絶望した人の眼をしている…。このままじゃ姉さんも精神がおかしくなっちゃう…!!

嫌だ…!親父みたいな壊れた人になってしまう!!どうにかして止めないと…!


嶺「俺の!!」


巳緒「!!」


つい大きく声を荒げてしまったので姉さんが驚いた


嶺「俺の身体の一部は…。嶺だ。だから…。姉さん…。俺を…僕を嶺と思ってくれないか…。」


巳緒「嶺ちゃんと?」


嶺「今の僕にはそれしかできないんだ…。お願いだ…。」


姉さんの眼は少しずつあの眼から戻っていく


巳緒「…うん。…そうだよね。この眼と左足と左腕は嶺ちゃんなんだもん…。嶺ちゃんだよね…。」


嶺「ごめんね…。今僕にはそれしか言えないんだ…。守れなくてごめん」


本当にごめん。本当のこと言えなくてごめん


巳緒「ううん。ありがとう…。嶺ちゃんと会わせてくれてありがとう。会わせて…ひぐっ…くれて…ありがとおぉっ…!」


巳緒「うあああ…!!!」


姉さんは僕を抱きしめ泣いた。


どんなに苦しいだろう。それがわかる分だけ僕も辛かった。

大切な人を失った悲しみは消せないから。解決できるのはその代用か時間しかないのだから

僕はそれを抱きしめるしかないのだ。

いつか本当のこと話すから…。それまで…。


巳緒「……うん。凌ちゃん。ごめんね…。ありがと。もう大丈夫だよ」


姉さんは静かに俺から離れると笑顔になった

もうだいじょうぶそうだ。


嶺「姉さん…。」


巳緒「うん。ありがと。少し時間長引いちゃったね。彼女、屋上で待ってるんじゃない?」


嶺「え。もうこんな時間か!姉さん行って来る!!」


巳緒「うん!いってらっしゃい!」


---屋上---


これ以上待たせるのも悪いので大急ぎで屋上へ向かうとかなり不機嫌な詩織が居た


嶺「すまん。待たせた」



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