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第15話



【視点:松本由美】



「あっ、あっ、んん!! 遼さん、遼さん!!!!」


 ――――――――――――――――これは、何?


「はあっ、はあっ、はあっ………楓、楓ぇ!!」


 ――――――――――――――――これは、夢?


「き、気持ち良いですか?」


 ――――――――――――――――こんなのは、現実じゃない。


「うん、凄く、いいよっ」


 ――――――――――――――――こんな現実は、いらない。


「遼さんっ、好き、好きです、んああっ!!」


 ――――――――――――――――だって、こんなのおかしいじゃない。


「俺も、俺も好きだよ、楓!!」


 ――――――――――――――――嘘だ、遼君が好きなのはあなたじゃない。


「ああっ、遼さん」


 ――――――――――――――――やめて、そんな風に彼を呼ばないで。


「楓、楓、楓ぇ!!!」


 ――――――――――――――――やめて、私以外の女の名前を呼ばないで。


「ああっ、うあっ、んんんっ!!!」


 ――――――――――――――――どうして?


「……っ楓、俺もうそろそろっ!!」


 ――――――――――――――――どうして、遼君と綾瀬さんが、


「はあ、んっ、はいっ……来て、下さいっ、遼さん、りょうさあん!!!!」


 ――――――――――――――――どうしてこんなことしてるの?


「あっ、くうっ!!!」


 遼君から出たものが、綾瀬楓の肢体に勢い良く降り注ぐ。


「は、ああ………沢山、出ましたね」


 自らを汚していく白濁を、彼女は恍惚とした表情で見つめる。


「楓………」


 どうして? どうして、遼君があんな女をそんな風に抱き締めるの?

 何で? 何でそこにいるのが私じゃなくてその娘なの?

 ねえ、遼君!! 何で!? どうして!?


「遼さん……キス、してください」


 私は遼君の言いつけ通り放送室で遼君を待ってて、


 遼君遅いなーって、そう思いながら待ってて、


 そしたら遼君からメールが来て、


 今からちょっと教室に来てくださいって、そうメールが来て、


 何だろうって、もしかして告白とかだったらどうしようって思って、


 一応入念に身だしなみを確かめて、


 それで――――――――――――


「んっ………」


 ――――――――――――どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!!!???????


「んんっ……はん……りょうさぁん」


 私は声を出すことも出来ず、わずかに開いた扉の隙間から、ただその光景の一部始終を見ていることしか出来なかった。


「……………っ!!」


 その時、綾瀬さんと目が合った。




『あ、そうだ先輩。中原さんからの伝言です』




 遼君とキスをしながら、ニヤリとその目をこちらに向けた。




『帰りも少し遅くなりそうだから放送室で待ってて下さい、だそうです。ちゃんと伝えましたからね?』




 まるで最初から、私がそこにいるのを知っているような目つき。


 


 ばーか




 あの女あの女あの女あの女あの女あの女あの女あの女あの女あの女あの女あの女あの女あの女あの女あああああ!!!!!!!!嵌められた嵌められた嵌められたのだ私は!!!!!!許さない、許さない許さない許さないあの女、よくも、よくもよくもよくも遼君を!!!!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺してやる!!!!!!!!!!


「あはっ…………あはは、あはははははははははは」


 可笑しすぎて思わず笑いがこみ上げてきてしまう。


 だってこんな現実は、おかしすぎる。


 間違っている、絶対に間違っている。


 遼君が、私の遼君が、あの糞猫女とあんなことして、しかも『好きだ』なんて。


 ねえ遼君、これは何かの間違いだよね?


 あの雌猫に騙されてるだけだよね?


 うん大丈夫、分かってるから。


 だってわたし遼君のことが世界一好きだから。


 世界で一番だよ?


 あの泥棒猫の百万倍は愛してるんだから。


 だから一回の間違いくらい許してあげる。


 あの泥棒猫を殺したら、すぐその間違いに気付くよね?


 それとそれと、わたしがあの猫を始末したら、すぐにわたしにも同じことしてね?


 ううん、同じなんかじゃ足りないね。


 百万倍は凄いことしようね。


 うん、好きだよ遼君。愛してる。


 だからね、すぐわたしがあの泥棒猫から助けてあげるから。


 えへへっ、待っててね遼君。


「遼君、がんばるよ、あたし」


 私は軽快な足取りで、その場を後にして放送室に向かった。




 ―――――本当、あそこには何でも揃ってて便利だなあ。



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