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それから数日後――。
巨人は村の外れに来ていた。
どうあがいても結局自分は異端だ。どこへ行っても忌み嫌われるのだろう。それならば一人でこの森で暮らしている方がマシだ。たまに食べ物を得るために村を襲うのは仕方がないことだと言い聞かせて。
さあ行こうと息を吸い込んだその時。
「お前さんが噂の巨人だな?」
突然後ろから声がして振り返った。しかしそこには誰もいない。
「こっちだ、こっち」
声は足元からしていた。視線を下げると確かに人がいた。だが普段見慣れている村人と比べると格段と小さい。
「オマエは……?」
「私はルキツ。西の森に住む魔術師だ」
巨人ははぁ、と溜め息とも返事ともつかない声を出した。
「で、その魔術師サンがオレに何か用か?」
「お前さんを捕まえることができたら何でも言うことを聞くそうだな?」
その返事に巨人はハッと笑った。
「あぁ確かにそう言ったさ。けどよ、人より小さいオマエに何ができる!!」
瞬間、空気が変わった。魔術師は俯き、小刻みに震えている。そして何かを呟いた。
「へ?」
巨人の間抜けな声が漏れる。その声と同時に魔術師はバッと顔を上げた。
「小さいと言ったな! 私を小さいと言った者は許さん! よく見ろ! 私の足元には何がある!?」
巨人は魔術師の勢いに驚き、眉を潜める。魔術師の足元には巨人の足跡があった。
「さぁお前さんのあしあとは捕まえたぞ! 約束どおり言うことを聞いてもらおう! 小人になれ!!」
「なっ……そんなのアリか!? ちょっと待て!!」
巨人は抗議するものの、その体は光に包まれていった――。
だんだんと光が収まってきた。
魔術師は満足そうな笑みを浮かべている。
「ちゃんと言霊の力は効いていたようだな。私の魔力を使わずとも済んだ」
そう言う魔術師の視線の先には先程の巨人がいた。ただし大きさは先程までと比べ物にならない。魔術師の膝元にも及ばない、サイズで言うと10cmばかりであろうか。
「何なんだよこれは! オマエ何をした!」
小さくなった巨人が叫ぶ。
「私はお前さんとの約束を果たしただけさ。お前さんを捕まえたら何でも言うことを聞くと言っただろう?」
巨 人は怯む。確かにそう言ったが足跡なんて有りなんだろうか。
「足跡だってお前さんのものだろう? 現にこうやってお前さんの約束は守られた」
巨人は憮然とする。確かに何でも言うことを聞くといったが、口先だけのつもりだった。
「あんなの適当に言っただけなのに……」
「普通の人だったら効かなかったかもしれないな。だけど私は魔術師だ。ちゃんと言霊としての効力は発揮したというわけだ」
巨人は唖然とした。
「ま、本当に効くか分からなかったがな。その場合は私の力でどうにかしていたが」
「そうなのかよ!!」
どの道小さくなるということだったのか。巨人はぶつぶつ文句を言う。
「お前さん、うちに来い」
「はぁ!? なんで!?」
「どうせ行くところもないのだろう?小さいもの同士仲良くやろうじゃないか」
魔術師はにっこりと笑いかける。巨人は納得がいかない顔をしながらも頷いた。
「小さな巨人だな。お前さん、名は?」
「……カルガイ」
「そうか。私はルキツだ。よろしくな、カルガイ」
こうして小人と小さな巨人の生活が始まった。




