1
木の葉の落ちた道をザクザク歩く。
そうして学校帰りにいつもの場所に寄り道するのが貫津類の日課となっていた。
今日は二週間振りに叔母が帰ってくる。ルイの足取りは自然と軽いものになっていた。
ルイの叔母はアンティークショップを経営している。小さいながらも店の品にこだわりを持っている彼女は日本国内だけでなく海外まで買い付けに行くそうだ。今回はイギリスに行ったらしい。
叔母の店にはルイの好みの物ばかり置いてあって、叔母が留守で店が閉まってる間もルイは掃除と託つけては店に入り浸っていた。
カランカラン。
ルイは軽やかに店の扉を開けた。
「あらルイ、いらっしゃい」
今日帰国とは言ってたけどすでに叔母は店にいた。
「咲さん早かったね!」
「二週間も閉めっぱなしだったからちょっとでも早く開けなきゃね」
そう言って咲さんは笑った。
うん、しっかり物が増えてる。私好みの物が。
この人形とかいいかも。
「小物なら一個ぐらい好きなの持ってっていいよ」
「いいの!?」
「うん。あたしの留守中掃除とかしてくれたみたいだしね」
やった! じゃあこの人形にしよっと。
「咲さん、じゃあこの瓶入りの人形貰っていくね」
「オッケー。あ、でも……」
そう言って咲さんはずいっと顔を近付けた。
「今回はイギリスの田舎の方まで行ったからいわく付きの物とかあるかも」
そう言った咲さんの顔は完全に楽しんでる顔だ。
「そんな言ったって恐くないんだからね」
私は呆れた顔で咲さんに言った。
「あっ信じてないねー!? イギリスでは色々あるんだって!あたしが泊まったホテルだって……」
しつこく食い下がる咲さんに背を向けて、はいはいじゃーねと私は店を出た。
だけどこれは本当にいわく付きの物だったんだ……。
私は自分の部屋の棚に瓶を飾った。
本当に綺麗な人形だ。金色の髮に少し褐色がかった肌。本当の人間みたい、なんてね。
コルクの蓋には何か書いてある。何語だろ?読めないけど最後の方の“1708.10.31”って日付!? そんなに古い物なんだぁ。蓋の裏の方にも何か書いてあるな……。
そうして蓋を開けたのが運のツキだった。
「ルキツ――――!!」
人形がそう叫んで飛び出してきたのだから。




