R15の攻防
水晶玉で美麗観察が終わった頃のお話で、ヴィルヘルム視点です
「まったく、見えなかったからよかったものの……」
奥の部屋からアスカの呆れた声が聞こえてくる。アスカとは私の不肖の弟子よ、うっかり良い男につられて受け入れちゃったの。
「美味しいと言えば、アスカのも美味しかった」
ガシャン
思わず持っていた水晶玉を握りつぶしてしまったじゃない。えっ、どんな力だって? 聞こえないわ。
「褒めても何も出ない……とは言わず、あれくらいならいつだって」
「それは楽しみだ。じゃあとりあえず、ちょっとだけ」
「こらっ、夜まで待って!」
なんて破廉恥な会話、いつもは鈍感を装ってとんでもない小悪魔ね。これだから油断ができないのよ小娘は。
「我慢できない」
ああん、可哀そうなレンちゃん。女は恐ろしいわよ、やっぱり拳でぶつかり合って筋肉を見せ合う、そんな関係がいいわよね。
「大人なんだから、そんな切なそうな顔してもダメ――って、あっ……んもう」
何よ、今の声。こうなったら突入ね。
「離れてよ、もうダメだったら」
「……こんなにトロトロなのに?」
ナニガトロトロ?
わたしはとにかく部屋に駆けこんだわ。わたしの家で卑猥な行動は許さないわ!
「待ちなさい! これ以上は駄目よ」
「あっ、師匠。もうできますから。ほら、リュートもつまみ食いしてないで手伝って」
「僕、運ぶー!」
奥の部屋ってそういえばキッチンだったわね、それにロウもいたのね。
「人騒がせね」
「へっ? 何ですか?」
「なんでもないわ、チーズが美味しそうね」
「トロトロだよ」
犬っ子の発言が腹立つわね。
「アスカ、さっき見えなかったからよかったって言っていたわね。それって間違いよ」
「えっ? 急になんです」
純真そうな目で見つめないで、わたしが汚れているみたいじゃない。見えていれば勘違いなんてしなかったわ。
まったく、見えない方がまずい場合もあるってこと知っておくべきだと思うわ。




