異世界転生って何ですか?
私、佐山ルリ子は亡くなった。
享年95歳だった。
死後の世界、成仏、輪廻転生。
どれも真剣に考えたことはなかったが、今、私の目の前には3つの扉がある。
「一番左の金の扉は、極楽浄土行きです」
案内人が扉の説明を始める。
「まあ、極楽浄土……」
「真ん中の白の扉は天国行きで、一番右の扉は異世界転生行きです」
「いせか……何ですか?」
私は首をかしげる。
「今、人気なんですよ。若く亡くなられた方は、この扉を選ぶ方が多いですね」
「はあ……」
私はさらに首をかしげた。
「佐山ルリ子さん。あなたは特に目立った悪行はありませんね。どれでも好きな扉を選んでください」
「あの、私の家は浄土宗だったので、極楽浄土は分かるのですよ。天国も、まあ、分かります。神様の方ですよね。『いせかい』とは何の宗教でしょう?」
「宗教ではありません。地球ではない別の世界に生まれ変わるということです」
「別の世界? どこですか?」
「多いのは、魔法が使えたり、魔物がいたり、中世西洋風の世界ですね」
「中世? それではテレビやスマホはないのですか?」
「まほう」や「まもの」がよく分からなかった私は、分かる言葉だけを尋ねた。
「ありませんね。電気やガスや水道もない世界が多いです」
「あらまあ……」
若い方はあんなにスマホが大好きなのに、そんなに不便そうな「いせかい」とやらを選ぶ方が多いのね。
「どの扉にしますか?」
案内人は私に問いかける。
「そうねえ……。先に亡くなったあの人にも会いたいし、もう十分生きたからゆっくりしたいわ。電気や水道がない世界なんて、戦後の不便な時代を思い出してしまうしね……」
私は金の扉を指差した。
「極楽浄土ですね! ご案内します!」
「よろしくお願いしますね」
私は扉に入りながら、ふと思った。
あの人が「極楽浄土」を選んでいなかったら会えないわね、と。




