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異世界転生って何ですか?

作者: 三多来定
掲載日:2026/07/19

 私、佐山ルリ子は亡くなった。

 享年95歳だった。

 死後の世界、成仏、輪廻転生。

 どれも真剣に考えたことはなかったが、今、私の目の前には3つの扉がある。


「一番左の金の扉は、極楽浄土行きです」

 案内人が扉の説明を始める。

「まあ、極楽浄土……」

「真ん中の白の扉は天国行きで、一番右の扉は異世界転生行きです」

「いせか……何ですか?」

 私は首をかしげる。

「今、人気なんですよ。若く亡くなられた方は、この扉を選ぶ方が多いですね」

「はあ……」

 私はさらに首をかしげた。

「佐山ルリ子さん。あなたは特に目立った悪行はありませんね。どれでも好きな扉を選んでください」

「あの、私の家は浄土宗だったので、極楽浄土は分かるのですよ。天国も、まあ、分かります。神様の方ですよね。『いせかい』とは何の宗教でしょう?」

「宗教ではありません。地球ではない別の世界に生まれ変わるということです」

「別の世界? どこですか?」

「多いのは、魔法が使えたり、魔物がいたり、中世西洋風の世界ですね」

「中世? それではテレビやスマホはないのですか?」

 「まほう」や「まもの」がよく分からなかった私は、分かる言葉だけを尋ねた。

「ありませんね。電気やガスや水道もない世界が多いです」

「あらまあ……」

 若い方はあんなにスマホが大好きなのに、そんなに不便そうな「いせかい」とやらを選ぶ方が多いのね。

「どの扉にしますか?」

 案内人は私に問いかける。

「そうねえ……。先に亡くなったあの人にも会いたいし、もう十分生きたからゆっくりしたいわ。電気や水道がない世界なんて、戦後の不便な時代を思い出してしまうしね……」

 私は金の扉を指差した。

「極楽浄土ですね! ご案内します!」

「よろしくお願いしますね」


 私は扉に入りながら、ふと思った。

 あの人が「極楽浄土」を選んでいなかったら会えないわね、と。

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