弱点
「オラァ!」
「うわぁっ!!」
レオによってルークが転がされる。
木剣で打ち合いをしているのだが、異能なしのルークとレオでは実力に差がありすぎる。
この日も朝からぶっ続けで稽古をしているが未だ一本も取れずにいた。
「今日で1週間、稽古をして確信したがルーク、お前に剣の才能はない。死ぬまで鍛えてもオークをソロで狩れるかどうかってところだろうな。」
自分でも才能がないとは思っていた。
それでも心のどこかでいつか強くなれる、Aランクに届くと期待していた自分がいた。
それでも前を向かないといけない、俺には『憶影』があるのだから。
「だがな、ルーク。才能がないからといって体を鍛えなくていい理由にはならねえ。ノアもイザベラも魔術師だが体術はお前より強い。」
「何時間も歩くことだってある、魔力が切れることもある。なにより異能頼りの戦い方じゃ使えなくなったら詰みだ。そんなわけでトレーニングは続けんぞ!」
さすがレオさんだ。剣の才能がないと分かった途端異能に逃げようとした。
それがわかっていたから強く言ってくれたのだろう。
稽古が始まってから1か月が経った。
マークさんの肉体改造のおかげで冒険者として最低限の体はできた。
さらにノアさんと影を使った攻撃の練習、イザベラさんと異能の感覚を鍛えたおかげで自分の力と胸を張って言えるまでには仕上がった。
「今日で1か月な訳だが、最低限の体には仕上がったと思う。」
「だがルークよ、あくまで最低限。まだノア達にも及ばない。日々鍛錬を続けるように。」
「あんた達は言い方があると思わないの?」
イザベラが冷たい視線を向ける。
レオとマークはバツの悪い顔をして黙っている。
「二人はルーク君に油断するな、と言いたかったのでしょう?」
ノアがため息をついて呆れている。
誰も間違ったことを言っていないだけにタチが悪い。
人間慣れないことはするべきではないようだ。
この1か月濃密な時間を過ごしていたこともあってあまり気に留めていなかったが俺のランクはCに上がっていた。
ふと気になって聞いてみたのだが、BランクからAランクに昇格するには王都ギルドからの承認が必要になるらしい。
なんでもAランクは半分名誉職に近いようで滅多に許可が下りないのだとか。
あと1か月パーティの連携を鍛えて迷宮に向かうらしい。
俺の新しい技で貢献出来たら嬉しい。
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